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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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4章61話 御前会議 前

 御前会議当日。

 皇居には海軍代表山本五十六、奪還作戦実行者大山彰、情報収集担当者南雲忠一の3人。


 対する陸軍は東条英機総理大臣、クーデター責任者牟田口廉也、実行責任者第1師団師団長中沢三夫。牟田口廉也に関しては陸軍一評判の悪い将校で、態度が気に入らなければたとえ士官相手でも殴り飛ばすというまさに頭脳筋や……!


 ごほん。つい素が。


 言わずもがな今回の議題は陸軍のクーデターの事だ。


「我々海軍は先日の陸軍の暴挙に抗議します。」


 五十六がびっしりと言いつける。


「ふん。矮小になっているへたれた海軍に喝を入れてやったんだ。むしろ感謝されてもいいだろう。」


 牟田口は女性指揮官というものを心底嫌っている。現代で言うセクハラやパワハラを平気で行っているとか。

 時代というものなのだろう。女性は黙って男の言う事を聞けばいいという風潮がある。牟田口はそういう考えだ。


「我々海軍は2月に行われる極秘作戦を必ず成功させるために行動を控えているだけだ。海軍のやる事に口を挟まないでもらいたい。」


 忠一の抗議に答えたのは意外にも中沢だった。


「口を挟むなと? そもそも、あなた方海軍がガダルカナル島の泥沼の戦いに我々陸軍を巻き込んだのでは? そんな海軍に口を挟むなと言われても、都合が良すぎませんか?」


 正論だ。決して屁理屈ではない。


「しかしその点では陸軍も同意の上で出兵したのではないのですか?」


 彰の記憶上、陸軍は海軍から要請が来たもののこれは陸軍の戦いでもあるとむしろ自分から腰を上げたようなものである。

 それを陸軍の連中は海軍が……といちゃもんをつけている。


 ……トンプソンぶっ放した方が早い気がするな。


 陸軍は海軍の開こうとする口を待たずにまるで速射砲のように話を進める。


「これだから、女が指揮官を務めるからこうやって内部分裂が起こるんだ。」


 牟田口が中沢の言う事に便乗するように口を開く。


「そもそも女性指揮官の存在を許しているだけありがたいと思え。ほとんどの男が兵士として戦っいるこの世の中で、指揮官が不足している事態を解消するための苦肉の策なのだから。」

「政権を降りろ? なんて無茶な要求をするんだね君は。そんな物無理に決まっているだろう。馬鹿馬鹿しい。」


 東條がメガネをクイッと上げる。


「この際、陸軍の予算増強を話し合いませんか? どうせ海軍は働かないんですし、何より時間の無駄です。米軍なんか何とかなる、問題はソ連です。攻めてこないとは限りません。」


 中沢が提案する。


「それは良い。対ソ戦に備えて、兵備の強化をしたかったところだ。主力の重砲が古いので、九六式榴弾砲に全て取り替えたいのだが可能だろうか?」

「可能です。輸送船なら動かない海軍側に沢山ありますから、それを使って中国まで運ばせましょう。」


 牟田口の一言で、彰の頭の中で何かが切れる音がした。


「いい加減にしろ!! ふざけた事ばかり抜かしやがって、馬鹿にするのも大概にしろ!」


 ずっと黙っていた海軍側の突然の怒声に陸軍側は驚き固まる。それは忠一と五十六も同じだった。


「言っておくが、貴様ら無能集団には輸送船なんぞ1隻たりとも貸さん。お前らは黙ってクーデターの謝罪と我々の要求を黙って飲め!!」


 陸軍の3人が唖然とする中、ある事を突き付けた。


「陸奥まで爆沈させやがって、兵力の増強なんぞ

俺が許さねぇ!!」

「彰、それは……!!」


 五十六が焦る。何故ならまだ陸奥の爆沈が陸軍の仕業だという決定的な証拠を掴んでいないのだ。


「我々陸軍がやっただと!? 何を根拠にそんな戯言を言う! 証拠はあるのか!?」

「ある。」


毅然と答える。


「まず1つ目。今回のクーデターには俺と南雲しか海軍側は把握していない影の首謀者がいる。辻政信だ。」


 陸軍側の表情が固まるのを彰は見逃さなかった。


「悪いけど、あんたらにはついて行けないと自ら判断して、俺の指揮下に入りたいと考える部隊が出た。その人達は俺と一緒にガダルカナルを戦った兵士達だ。その人達にお願いして、辻の尋問をしたら全て吐いてくれたよ。」


 彰は牟田口を見る。


「あんた、辻を庇う為に自ら責任を負うと進み出たんだってな。今更責任転嫁は許さないよ。」


 口調を変える。

 本来の牟田口ならここで反論するだろうに、ただひたすら動揺していないとでも言うように視線を泳がして冷や汗が出ていることを隠そうとする。

 彰は今度は中沢を見る。


「あんた。陸軍の工兵隊から爆薬を調達したんだって? 担当した者が用途は教えてくれなかったと教えてくれたよ。」


 中沢も何も言わずにただ黙って俯き始める。


「東條さん、首相やめろ。くだらない政策するより、より現実的な海軍が政権握った方が国民は幸せだよ。陸軍は海軍の主力艦を潰したと公表すれば、すぐに支持率は下がるよ。」


 陸軍の責任者的立場の東條は声になっていない声を出し、自らの末路を悟ったかのように顔色を変える。

 彰は陸軍に反抗の術無しと判断すると、書類を持ち上げる。


「では改めて、我々海軍は次の件を要求します。

1、東條内閣の解散

2、大山彰海軍少将指揮下の特殊師団2個の新設

3、追加事項の承認

4、事件関係者の更迭

以上、この4件を認めてもらいます。」


 陸軍側の3人はノックアウト状態だ。

 だが、意外な人物が口を挟んだ。


「朕に、何か出来る事はあるか?」


「……………………え。」


fin

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