4章57話 決行
この国はおかしい、陸軍が仕切っている。
それを、飾りとして統帥権を持っているのが、天皇だ。陸軍が何を考えているのか、全くわからないのが現状だ。
南雲はクーデター発生を天皇に報告するため、皇居へと赴いた。
「陛下。陸軍がクーデターを起こしました。」
天皇陛下は静かに頷いた。
「朕に、何をしろと……?」
「陛下の直々のご命令で、クーデターを納めさせてください。」
天皇陛下の直々の命令。これは、天皇が絶対というやり方の陸軍は必ず従わなくてはならない事だ。
「何故、朕が動かねばならないのだ?」
「お言葉ですが、陸軍は陛下の名を乱用し好き勝手に振る舞っております。それねらば陛下の命令ならばすぐに事態を収集出来ると判断しました。」
「それならば、心配無いぞ?」
南雲は首を傾げる。
「彼は動いている。」
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彰はクーデター発生から2日がたっていることに焦りを感じ始めた。
志願してくれた8人(ガダルカナルの時の志願者の内の生存者)はCQBの習得を順調にしているが、問題はあった。
ひとつは通信関連。
太平洋戦争時代に小型の無線機なんて無く、大型のしかない。
特殊部隊が使うようなやつが欲しいところだ。
もうひとつは武器のアタッチメントだ。
今回の奪還作戦は深夜闇に乗じて潜入する。その際、発砲することも考えるとやはりサプレッサーが欲しい。
しかし、無い物は仕方ない。無い物ねだりしても時間はすぎるだけだ。今は侵入訓練と隠密行動、そして敵の排除の訓練をするだけだ。
2日たったのか。
正直、海軍と陸軍のいざこざには彰を巻き込みたくない。
……ほんとにそうなのだろうか?
いつか助けに来てくれることを、期待している私がいる。私は、何を望むのだろうか。彰には、忠一がいるのに。諦めはついてるのに。
どうして、こんなにも胸が苦しいのだろうか……。
「長官?」
声をかけてくれたのは三川君だ。
「顔が赤いけど、体調は大丈夫?」
「大丈夫だ。心配かけたね。」
「長官、彼らはどうしますか?」
四郎の言うとおりだ。
あの後抵抗はしたが、現場にいる者との力量は違う。すぐに制圧されてしまった。
会議室には首謀者と思われる男3人がいて、私と三川君と四郎はその男と向かい合うように座っている。
彼ら曰く、
「海軍にはきたるインパール作戦の手伝いをしてもらうため、我々の指揮下に入ってもらう。」
というものだ。
実際のところは海軍の面子を潰したいのだろう。陸軍は簡単に言えば暇してるのだ。
ここ最近目立った戦闘も戦果もない。ガダルカナルは仕方なく戦ったという認識が強く、陸軍が主体となった戦いはしてないとの考えだ。
そこで、海軍を参加させておきながら大した仕事はさせず、もし失敗したら海軍が仕事をしなかったのが悪いと言うつもりだろう。
くだらなすぎる。
きっと彰なら言うだろう。
彰の考え方はとても素晴らしいものだ。今の日本にはない、いかにも未来の日本が発展しているような考え方だ。
未来の日本を知りたい。興味がある。
「長官。お耳に入れておきたい事が。」
小さな声で寄ってきたのは四郎だった。
「横浜に停泊中の大鳳が陸軍に占拠され、管理下に置かれたらしいです。」
「!?」
衝撃的だった。
まさか陸軍はそんな事を……。
「でも、それが伝えたい事ではありません。」
「どういう事?」
「大鳳を占拠したのは陸軍第16連隊。彼らは、彰とガダルカナルで一緒に戦ったと聞きます。それと、補給で訪れた人物の中に16連隊の兵士が紛れ込み、大山少将動けり、と言ってきました。」
「彰が……!?」
やはり、彰は動いている。
ふと、胸の奥が熱くなる。ドキドキしてしょうがないのだ。
「私達はおとなしく助けを待ちましょう。」
「そうだね。」
五十六は、早まる胸の鼓動を更に早まらせながら答えた。
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準備は整った。今夜は新月で、あたりは真っ暗だ。集合場所の草原にはちゃんと彰含め9人が揃っている。
彼らは訓練を文句言わずにこなしてくれた。歳は下の自分が軍隊歴の長い彼らに指示を出すのは凄く冷や汗が出たが、何も言わなかった。
「そういえば、大山少将はどこで訓練を?」
素朴な疑問だった。
「ミッドウェー作戦が終わったあと、休暇があった時に陸戦部隊の教官にしごいてもらいました。1月くらいしか時間はありませんでしたが、もともと体力には自信があったので。」
彰はサバイバルゲームが好きだ。
故に、趣味がだんだん本格化していき、本物と同じ重さにエアガンを改造、荷物も現役兵が持つのと同じ重量にしてフィールドを駆けまわっていた。
それ故、学校では長距離に関しては誰にも劣らなかった。
一度、大会に出たらと陸上部顧問に誘われたのを拒否したが。
「1月でガダルカナルを……」
素直に感心するしかない。それが、彼らの今の心境だろう。
「やっぱり必要かな……特殊部隊が。」
彰の頭の中には、ひとつの案が浮かび上がった。
「時間です。行きましょう。」
「えぇ。必ず、長官を助けましょう。」
彰達は、軍服にペンキで塗った黒服に身を包み、トンプソンを持って大本営裏の草原を進み始めた。
Fin
明けましておめでとうございます。松ちゃんです。
今回は3話を更新させて頂きました。先週の日曜日はリアルで事情があったので投稿できませんでした。すみません。
今年もどうか長い付き合いになると思いますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
ではまた来週!




