4章55話 対海軍クーデター
明けましておめでとうございます。新年という事で3話同時更新します。
1月8日。
大本営に陸軍の移動用トラックが数台駆け込んできた。荷台からは小銃を持った兵士が続々と降り、大本営へと流れ込んだ。
「!? 何だ貴様らは!!」
海軍部の将校が怒鳴るが、返事として帰ってきたのは銃弾だった。
「素早く司令室を確保しろ! 山本長官は会議室にいるはずだ!!」
その部隊の指揮官と思しき若き将校は手早く、そして的確なので指示を出した。
部隊は邪魔をしようとする兵士を次々と撃っては黙らした。綺麗な廊下は赤く染まり、壁には血しぶきが飛び散った。
1階を制圧した兵士達は、2階へと迫った。
会議室では五十六、高須、角田、近藤、三川の5人が今後の作戦を話し合っていた。運良く、忠一は彰と一緒にいて無事だった。
会議中、乾いた音が数回鳴り響いた。
「なんの音でしょうか?」
「何かが破裂したのかな?」
山本が席を立ち、確認に行こうとした時だった。
会議室のドアが勢いよく開かれ、肩を鮮血で濡らした兵士が駆け込んできたのだ。
「長官!! 陸軍の奴らが襲撃してきました!!」
「なんだと!?」
近藤の叫び、三川は即座に隣の部屋の棚からある物を持って来た。
「三川君、それは……!!」
五十六は普段三川を君をつけて呼ぶ。仲が悪いわけではないが、本人曰く、
「女の子のかけらもない私をちゃんだなんて、似合わないよ。」
というようだ。それから五十六は三川の事を君をつけて呼んでいる。
「彰君が持って来てくれた、私達専用の短機関銃だよ。むざむざ捕まる海軍ではない。」
戦闘狂・三川。
彼女はまだ幼い頃に狙撃手ですら顔負けの射撃センスを持ち合わせ、海軍陸戦隊に所属していた頃があった。
彼女はよほど練習したのか、手慣れた手つきでマガジンを装着しボルトを引いた。
「長官も早くしないと、下品な陸さんに捕まっちゃうよ??」
彼女はにたりと笑ってみせる。彼女は戦いを恐れず、むしろ楽しんでいるようだった。
「そうだな、準備しなければ。」
五十六は銃を受け取ると、高須らと共に抵抗の準備にとりかかった。
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彰は自宅で音楽を聞いていた。
イヤホンは無いため、そのまま音を出して音楽を聞いている。
聞いているのは、アメリカ海兵隊の退役軍人が有志で制作したという、The warrior song hard corpsという曲だ。
日本語訳ではとても自信に満ち溢れた歌詞で、聞いているだけで落ち込んでいても頑張ろうという気持ちになれる。
海兵隊らしい、強い感じがする。
……歌詞英語なんだけど聞かれてないよね?
「彰~、ご飯作ってぇ~。」
隣の部屋では枕を抱いてゴロゴロと転がる忠一がいる。
さっき朝ごはん食べたじゃん!!
「あんまり食べ過ぎると太るぞ?」
「むー。女の子に太るとか言っちゃいけないんだよ!!」
そういって忠一は枕を投げる。
その枕はあざやかなカーブを描き、彰の後頭部にヒットした。
……野球選手かお前は。
「枕投げたから作るのやめた~。」
「ああん、わかったから許して!!」
あざとい声出しやがって。
はぁと溜息をつくと彰は台所に立った。
「なにか作ってくれるの??」
「軽いつまみをな。」
台所に立つと、彰は棚からマヨネーズを取り出した。
マヨネーズは作るのは至って簡単で、まともな調味料のないこの時代で、彰は簡単なマヨネーズを作ることにしたのだ。
卵と酢、油さえあれば簡単に作れる。うろ覚えのレシピだったが、2日かけて作り上げた。
1日目のは色は問題なかったが、味が恐ろしく、その恐ろしさについて原稿用紙何枚でも書ける自信がついたほど不味かった。
2日目はゆっくりと作業をしたおかげか、美味しいマヨネーズが完成した。
少し大きめの皿を選び、包丁でキュウリ、ダイコン、ニンジンを細長く切っていく。
切り終えたスティック状の野菜たちを皿に綺麗に並べ、隅っこにマヨネーズをトッピングした。皆ご存知野菜スティックだ。
彰は皿を忠一の前に置いた。
「何? これ。」
指さしているのはマヨネーズだ。
「マヨネーズだよ。卵と酢と油で作ったんだ。美味いぞ?」
「へぇ~。」
忠一は半信半疑でキュウリをつまむと、マヨネーズに少しつけて口へと運んだ。
「何これ、美味しい!!」
どうやらお口にあったようだ。
「このマヨネーズって、未来の調味料なの?」
「少なくとも、この時代には無いな。」
忠一は目を輝かせながら、次々とマヨネーズをつけたスティックを口へ運ぶ。
彰も、携帯をいじりながらダイコンを食べた。
程よい硬さが弾力を産み、噛み千切るとカリッと心地よい音が鳴る。独特の旨味が口に広がり、出てくる辛味をマヨネーズの甘いような味が抑えた。
「さて、次の作戦はどうしようか……」
彰はパナマ運河が破壊出来たことを想定した作戦と、失敗した場合の作戦を練っていた。
成功した場合、米艦隊は特に空母は簡単に太平洋には来れないので、その間にソロモン諸島など南太平洋の主要拠点を確実にとり、オーストラリアを牽制する。
その後、アメリカのサンディエゴ海軍基地を襲撃する。
サンディエゴは西海岸の大きな軍港で、一時的に使用不能に陥れればハワイ攻略がやりやすくなる。
彰はハワイ攻略を計画していた。航空基地を叩き、上陸させて占領する。無論、簡単な事ではないが成功すればアメリカへの大きな牽制なる。
「どうしようか……」
彰は携帯を見ながら悩んだ。
彰は何かに気付いたように動きを止めると、携帯を机に置き、ある物をとるために棚に手をかけた。
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南雲邸の玄関前では、3人の人影があった。
2人は拳銃、真ん中に立つメガネをかけた少女は軍刀を持っていた。
「ここにあのクソガキとそれを匿う非国民がいるのか。」
少女はゆっくりと刀を鞘から抜いた。
半透明に輝く刃は、これまで数十人と敵の身を斬り刻んできた。
「本隊はそろそろ司令室を占拠する頃です。我々も突入しましょう。辻参謀。」
「そうだな。」
辻とその部下は、勢い良く扉を開いた。
しかし、彼女らを出迎えたのは、トンプソン短機関銃の銃口だった。
Fin




