4章52話 対立
妹が生きている。
正しくは転生していると言ったところか。
病気で死んだ友梨佳は最後に、
「お兄ちゃんと遊びたかった。」
と、泣きながら死んでいった。
友梨佳は生まれつき身体が弱く、俺自身も見舞いには行ったが遊ぶほど身体は強くなかった。
学校での笑い話や、持って来たゲーム機で遊ぶ程度だった。
「友梨佳……」
携帯に、確かに友梨佳からメッセージが届いた。
『友梨佳なのか?』
返信した。
「忠。しばらく、1人にしてくれないか?」
「わかった。隣の部屋使っていいよ。」
彰は部屋を借り、座布団に座り携帯と向き合った。
『大山彰。間違い無い?』
他人行儀な文章だった。
『俺は大山彰だ。間違い無い。』
『……久し振りだね、お兄ちゃん。』
友梨佳だった。
文章を見るだけでわかる。
『ほんとにそうだな。友梨佳がここにいるなんて思いもしなかった。』
『私も、この世界に来た時はびっくりした。沢山の女性に囲まれてたんだもん。』
話によると、友梨佳はアーネスト・キングという、米海軍太平洋艦隊兼海軍作戦部長という、トップの人物として転生したらしい。
自分は生きたまま連れて来られたのに。
『私ね、皆が言ってることがすんなり頭に入ってくるの。日本語しゃべろうとしても英語が出てくるし。しかもね! 英語が理解できるんだよ!!』
友梨佳は楽しそうに文章を送ってくる。
俺自身も、かつての友梨佳と会話するように楽しさを覚えた。
また会いたい。友梨佳の姿は変わってしまったが、心は友梨佳だ。魂は変わっていない。
『お兄ちゃんとすぐに会いたいけど、日本とアメリカは戦争してるんだね。それがすごく残念……。』
『俺もだ。すぐに会いに行きたいが、俺は南部方面作戦司令長官になってるんだ。階級は少将だよ。友梨佳よりも下だ。』
『お兄ちゃん司令長官だったの!? すごいね!』
友梨佳は祝ってくれているようだ。その証拠に、お祝いを意味するスタンプが押される。
思わず笑みがこぼれた。
『ガダルカナル島での戦闘に参加してな。凄く辛かったけど、今は無事に過ごしてるよ。』
『戦ったの!?』
まずい。心配させてしまったかな。
『怪我はしなかったぞ。後ろにいたからな。』
『なら良かった。もう遊べないのかと思ったよ~。』
ふと、ここで違和感を覚える。
遊べないとは、一体どういうことなのだろうか。
『なぁ友梨佳。遊べないって一体……』
『私ね、お兄ちゃんと戦う事を楽しみにしているの! お兄ちゃんは大切な人が死ぬのは嫌でしょ? それを想像すると凄くドキドキするの!!』
……言葉が出てこなかった。一体どういうことなんだ?
『どういう事だ。詳しく説明してくれ。』
帰って来たのは5分後だった。悩んだのか、その文章は長かった。
『お兄ちゃんと殺し合いするのが好きになっちゃったの。私には駒となってくれる兵士さんが沢山いるし、何より上官の命令は絶対だからね。
今ね、沢山の人を殺せる爆弾を作ってるんだよ。原子爆弾。マンハッタン計画って言ってね、日本のどこに落とそうかな~ってドキドキしながら考えてるの!! 凄くいい気持ちだよ?
空母や戦艦も沢山作れるし、日本を焼け野原にするのが今の目標なの! でも、大好きなお兄ちゃんを殺しちゃうのは勿体無いかな……』
ふざけてやがる。
友梨佳の心境に何が起こったのか知らないが、人を殺す事を快楽と思っている。
『友梨佳。何を考えているのかわからないが、人を殺す事である戦争と遊びは格段に違うぞ。そんな事はやめるんだ。』
返事はすぐに帰ってきた。
『だって、私はまともに動けなかった。だけど、自由に動ける体を手にしたんだもん。好きなときに好きなように出かけられて、お風呂には入れて、最近はまってるニミッツちゃんとのゴルフは凄く楽しいんだよ。
それでいて、戦争が始まった。自分の思い通りに部隊を動かせるのって、お兄ちゃんとやった戦国シュミレーションゲームと同じなんだよ!』
凄く絶望的な説明だった。
友梨佳は、この醜い戦争をゲームと同じに考えているの。
許されるわけがない!!
『戦争をゲームと同じにするんじゃない!! そんな事をして何になる! 原爆だって、どんな物なのかわかっているのか!?』
『わかってるよ。携帯で調べたもん。1発で20万人もの人が死ぬなんて、必殺技みたいだよね!!』
こんなの、優しかった友梨佳ではない。俺の知っている友梨佳は、壊れてしまっていたんだ……。
『ふざけるな。そんな事をするなら、俺は何がなんでも止めるぞ。』
『そんな事日本軍にできるの? 弱っちいし、何より資材も燃料も無いじゃん。そんな小さな国が、大国アメリカに何が出来るの?』
言っていることはまさに正論だった。
それでも、俺個人だけでも友梨佳を止めないといけない。
『絶対に、止めてやる。』
『私は以前の弱い友梨佳じゃない。大国の軍隊のトップに立った強い友梨佳なんだよ。それを忘れないでね。』
それ以来、メッセージは届かなかった。
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すべての事情を忠一と草鹿に話した。
2人共怒りに方を震わせ、言葉を失っていた。
「……私は今の話を長官に伝えて来ます。私だけでは、考えるにしてはあまりにも規模が大きすぎます。」
草鹿は帽子をかぶり、一礼してから家を出て行った。
「彰……どうするの?」
「もちろん、そんな事許さない。最悪、刺し違えてでも止めてやる。」
彰は怒りを覚えていた。
いくら妹とはいえ、そんなふざけた考え方は許される事ではない。
「馬鹿!!」
怒鳴られた。
「忠……?」
「死なないって約束したじゃん!! 刺し違えてでもなんて、言わないでよ!」
顔を見ると彼女は涙を流していた。俺は、それくらいの覚悟という事を誤解させてしまったのかもしれない。
「ごめん。本気でそう思ったわけじゃないんだ。それくらいの覚悟が必要というだけで、俺は忠とずっといるよ。」
彰は泣いている忠一を抱き締めた。
友梨佳は変わってしまった。その事実を受け入れるのは容易ではないが、マンハッタン計画をなんとしても阻止するしかない。
アメリカでは携帯をポケットに入れて、ため息をつく存在があった。
「お兄ちゃん、怒ってたなぁ。早く絶望に変わる顔が見たいな♪」
そう独り言を呟く。
その表情は狂気そのものだった。
Fin
最後まで有難うございます、松ちゃんです。
最近目が悪くなってきてしまいました。昔は2.0あったのですが、数日前眼科に行ったらなんと両目で0.5に下がってしまいました……。
ゲームのしすぎでしょうか。確かに毎日1時間はゲームをやっていますが、まさかそのツケがくるとは……とほほ。
少し控えなければなりませんね。
また来週お会いしましょう!




