4章51話 冬の海岸
更新日を一日ずれて予約してしまいました。申し訳ありません。
今日は海に行くことになった。海と言ってもすぐ近くにある横浜の海岸だ。
「来るには季節が早すぎたな。」
柵にもたれかかりながら言う。寒さに慣れているとはいえ、海から吹いてくる風は恐ろしく冷たく、コートが欲しくなるほどだった。
「冬の海も良いもんだよぉ?」
はかったなこいつ。
彼女は悪戯な笑みを浮かべて、逃げるように走りだす。それを追いかけた。
「捕まえられるなら捕まえてみろー!」
足速いな。
陸上部に入っていた経験があり、それなりに自信はあったが追いつけなかった。
「ち、ちょっとたんま……はぁ。」
すぐにバテた。ガダルカナルで体力はついた気がしたんだがなぁ……。
「彰おっそーい。」
「仕方ないだろ。体力ついたと思ってたけどそうでもなかったんだから。」
速すぎるだろほんと。陸上部だったら県大会なんて余裕で出れそうだ。
「ねぇ彰。あれ……」
「ん?」
忠一が指差す方を向いた。
そこには横須賀で進水したばかりの空母大鳳の姿があった。
「大鳳か……大きいな。」
「もしかして、装甲空母の?」
「うん。」
大鳳を見つめながら彰は思案に入る。
今年の夏に就役する2番艦の白鳳と一緒に1航戦を構成。赤城と加賀は2航戦に改編。蒼龍、瑞鳳で3航戦、もうすぐ修理と改造が終わる元第2戦隊の戦艦で4航戦、翔鶴、瑞鶴で5航戦と考えてる。
1944年……来年には建造が始まった雲龍型6隻で3個航空戦隊を構成できる。今は雲龍がすでに進水していて、戦線に出るのはまだ先だ。2番艦の天城は今年4月に進水、葛城は10月を予定している。
現代のニミッツ型を模範とした大型空母も1945年には進水できそうだ。物資が足りないため、前後するかもしれない。
これだけの空母がもし残されていたらそれなりにアメリカとは戦える。それまでになんとかしなければならない。
マンハッタン計画なんて、許せるわけがない……。
大鳳はパナマ運河破壊作戦に参加するため、北海道に向かう予定だ。
「大鳳はやってくれるかな……」
忠一もパナマ運河破壊作戦を知っている。しかし、新造されたばかりで、しかも部隊も歴戦の赤城、加賀、飛龍、翔鶴、瑞鶴からの部隊を精鋭のみ抽出した混成部隊を載せているため、失敗の可能性も否定できなかった。
もっとも、パイロットは戦意が高いが。
「大鳳ならやってくれる。新型の対空火器を搭載しているし、防御力も高い。やってくれるさ。」
大鳳には新しく製造された八二式25ミリ機銃を搭載している。
これは従来の25発入りマガジン式給弾から700発入りベルトマガジン弾倉を採用し、それにあわせて改造したものだ。
弾幕は厚くなるし、なにより発射速度も早いため(700/m)、命中率も上がる。
弾種は通常弾と炸裂弾、曳光弾の3種を用いり、3発ずつ交互に繋がっているのを使用する。
しかし、700発入りのベルトマガジンを収納した箱を取り付けるため、非常に重いのが難点だ。
大鳳は今後の厳しくなる戦いの中盤を支えていく主力艦となるだろう。2番艦の白鳳と共に、日本海軍を支えていって欲しい。
彰は後ろを振り返る。
旅行で来た時に見慣れた巨大なビルはなく、同じく観覧車もない。
あるのは木造の小さな一軒家や昔からある横浜税関所。それ以外は現代文明のかけらもない。それでもここでこうして生きている。紛れもない事実であり、何よりの喜びだった。
「ほんとに来たんだな……」
実感はしているが、気持ちは追いつきたくない自分がいる。
でも今は忠がいる。そう思うだけで、頑張っていける気がした。
「彰?」
少し心配させたようだ。
不安そうに顔を覗いてきた。
「何でもないさ。帰ろうか。」
「うん!!」
2人は手を繋いで家へと歩き始めた。
――――――――――――――――
家についた2人はこたつに入り、ラジオをつけた。時間はまだ夕方で、晩ご飯にはまだ早い時間帯だった。
ミカンの皮をむき、忠一の口の中にの投げてやる。
「爆弾命中!」
彰は面白そうに投げる。
「そんな甘い爆弾、食べてやる!!」
更に口を大きく開けミカンを待ち構える。
ミカンを一切れ投げたが、力が強かったのか喉につっかえて咳き込んでしまった。
「ごめん! 大丈夫か?」
「けほけほっ……もう、強すぎだよ~。」
「ごめんごめん。」
若干涙目になりつつもミカンを食べる。
そんな時突然、玄関が叩かれる。
「俺が出るよ。」
こたつから出て玄関へと赴く。ドアを開けると、そこには草鹿龍之介が立っていた。
「すまない。長官には明日でもいいと言われたんだが、どうしても伝えなくてはならない事があって。」
「あれ、龍ちゃんじゃん!」
忠一が奥から出てくる。
確か、2人は親しい間柄だった気がする。
「すいません南雲長官。大山少将に伝えたい事がありまして。」
「いいよいいよ! ささ、入って入って。」
「失礼します。」
草鹿を家に入れ、こたつに入ると早速話に移る。
「実は、長官が大山少将からお借りしている携帯が鳴り出しまして。」
「は? そんな馬鹿な。」
「しかし鳴ったので、一応お持ちしました。」
そう言って草鹿は彰へとスマホを手渡す。
「久し振りに触ったな。どれどれ……」
電源を入れてスライドロックを解除する。
前世で大好きだった軍艦の擬人化アニメの推しキャラクターが壁紙を彩り、様々なアプリが画面を埋める。
といってもゲーム類は全てダメだろう。
しかし、アルバムは使える。色々な資料をスクリーンショットしては保存していたため、アルバムと音楽アプリは使えた。
そして使えないアプリの中に、会話アプリだけ何故か通知が来ていた。
「そんな馬鹿な……だって、この世界でスマホがある訳が……」
それ以前に電波はどうした。
恐る恐るそのアプリを開く。通知は、彰が思い出のためにと大切にとっておいたある人物の会話欄についていた。
「そんな……!」
目が限界まで見開く。こんな事があっていいのだろうか……。
「彰……?」
「大山少将?」
2人が声をかける。
「ゆ……りか……。」
宛名はアーネスト・キング。
その下に死んだはずの妹、友梨佳と書かれていた。
Fin
最後まで有難うございます、松ちゃんです。
横浜は良いですよね。近場で気軽に海を見られるので僕は好きです。
横浜と言えば、冬休みにヲタ芸遠征で訪れる予定です。赤レンガ倉庫の近くでやろうと思ってますwww
迷惑にならないかな……。
それではまた来週もよろしくお願いします!




