4章50話 散歩
今日は散歩に行くことになった。
近くに土手があり、川が向かい側に流れている。
「雪深いねぇ~。」
忠一は彰の横を並んではしゃぎながら歩く。時刻は夜だ。
「滑って転ぶなよ?」
「平気平気! こうみえて運動神経は良いんだよ?」
自信満々に言ったが滑りそうになった。
アホの子かお前は。
「言わんこっちゃない。気をつけろよ?」
「えへへ……ごめんごめん。」
凄く充実している。
戦争が当たり前の世界に飛ばされて、まさか恋人が出来るなんて思いもしなかったからな。ビックリもするし、不思議と充実もする。
「彰~、何難しい顔してるのー?」
覗きこんでくる。
不意に、唇が触れそうになった。素早く顔を背ける。
「べべ、別に! 少しぼーっとしてただけだよ。」
「そうなの?」
うんうん、と頷くと納得してくれたのか、また横に並んで歩き出す。
「私ね、彰に出会えてよかったと思ってる。」
「唐突だな。何かあったのか?」
ほんとに唐突だ。普段こんな話はしない。
「赤城の甲板で会った時は凄くビックリしたけど、あの後助けてくれたり、ほんとに嬉しかったんだよ?」
目の前に回りこむと意地悪く微笑む。その可愛さに、不覚にもドキッとした。
「多聞丸がいなくなったのは残念に思う。でも、戦場では仕方のない事だと今は決めつけてる自分がいる。」
「……」
「すごく悲しくて、私も死のうと考えてる時に彰はそばに来てくれた。その時は分からなかったけど、今思えば、凄く温かかった。」
ただ淡々と聞く事しか出来ない。
あの時は、目の前の彼女が死んでいった妹に見えて、気持ちが抑えられなかっただけだ。
「今私が生きているのは、彰のおかげなんだよ。私は彰とずっといたい。その為にも、私は絶対に生き残る。だから、彰も生き残ってね。」
「一……」
「なんか一ってやだな~」
「え。」
今まで一って呼んできたのに!?
「忠が良い!」
「なおって読み方するっけ?」
実際、常用漢字表記以外ではなおとも読む。
「するよー。ねぇねぇ、呼んで?」
「な、忠……」
「~~~~~~~~!!」
嬉しさで耐えられなくなったのか、忠一は彰の胸に飛びつく。危うく転びそうになった。
「危ないなぁまったく。」
「良いじゃん! 好きなんだもん!」
不意に目線が固まる。少しすると、忠一は唇を近づけて来た。
それに答えるように、彰は唇を重ねる。
唇を交互に重ね、時には甘噛みをして、時には唇を悪戯するように引っ張る。
彰は不意をついて舌を忠一の口の中に滑りこませる。
「~~!?」
いきなりの事で驚いたのか、声にならない驚きの声を出したが、その目はすぐに閉じられる。
舌を念入りにからませて、わざとらしくと音をたてる。忠もそれに慣れたのか反撃に移った。
舌の絡みを激しくさせ、更に大きな音をさせる。彰も負けじと舌を動かした
その行為を数分続ける。
「……っはぁ!」
息が苦しかったのか唇を離した。
「ちょっとやり過ぎたかな?」
「ううん。平気、腰が抜けるかと思ったよ……」
顔を胸になすりつけてきた。彰はその頭を優しく撫でる。
「俺は死なないよ。」
あやすように話しかける。
「この世界に来た時は嫌だったし、あそこまで冷静に動けた自分が恐ろしく感じた。でも、今は忠がいるから死にたくない。俺は何がなんでも生き残るよ。」
忠一が顔を上げる。その目は期待であふれていた。正面からそっと抱きしめると、忠一も抱き返してきた。
「約束だよ……。」
「あぁ、絶対に死なない。」
絶対に死なない。俺には、忠がいる。
生きて、この戦争を終えるんだ。
――――――――――――――――
米本土ではある司令部で1人の将官がコーヒーを飲んでいた。
「マンハッタン計画を知っていて、こっちの戦略を知っている……」
米海軍のトップである彼女は、マンハッタン計画を知っている兵士を知っていた。
「大山彰……久し振りだね。」
彼女は合衆国海軍司令長官兼海軍作戦部長に君臨している。
名は、アーネスト・J・キング大将。海軍制服軍人のトップだ。
そして……
「会いたいな……お兄ちゃん。」
前世は、大山友梨佳。
彰の、死んだはずの妹だ。
Fin
最後まで読んで頂き有難うございます!松ちゃんです!
今回は初めて伏線というもの(と言うには露骨すぎる)を貼ってみました。自分自身伏線というのはまだまだ勉強せねばならない段階なのでもしこうした方がいいとかあったらご指摘おねがいします!
これからも精進していきますので、よろしくお願いします!ではまた来週お会いしましょう!




