4章~鋼鉄の協奏曲編~48話 奪還ガダルカナル
3日後。
ガダルカナル島は未だに忙しく動いていた。
破壊された司令塔の修繕と鹵獲した兵器の検査。滑走路修理など、修繕作業であちこちが忙しかった。
嬉しいのは、ルーズベルト給与と呼ばれた米軍の食料が大量に残っていたことだ。この食料のおかげで皆が英気を養い、衰弱していた者は元気を取り戻した。
前日、那須少将と善戦した岡村大佐の簡略的ながらも葬式が行われ、遺体は司令塔の地下室に納められている。どちらも汚れが多く、那須少将は第2師団本部隊員が、岡村大佐は彰含む数人の部下が身体を拭いた。
滑走路の修繕は思ったよりもはかどり、あと2日くらいで完全に終わりそうだ。それも、残された米軍の土木重機の活躍の賜物だ。
米軍はブルドーザーやコンクリートなどを大量に残し、日本軍によって有効に活用されている。トラックも同じだ。
飛行場から飛行場へと物資を運ぶのに非常に助かっている。燃料が少ないのが少し傷だが、大した問題ではない。
彰は未来では当たり前の光景になっているため、慣れてはいたがこれまで人員輸送が当たり前だったため存在のありがたみを実感しているところだった。
「少将!」
部下が声をかけてきた。名は確か元田軍曹だ。
「この後、みんなで宴会をするんです。少将もどうですか?」
つまり、みんなで酒を飲んでワイワイやろうと言うのだ。
「悪いけど、お酒は飲めないんだ。」
「あれぇ、もしかして、お酒弱いんですか?」
ニヤニヤしながら言われた。これにはむっときた。
「別に、弱いわけでないぞ。」
「またまたぁ、無理しなくてもいいですよ!」
「何、なら、勝負しようじゃないか。」
「望むところです!」
この後、酔って盛大に吐いたことは秘密にして欲しかった。
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ルンガ岬に連合艦隊の輸送船団と護衛艦隊が到着したのは1週間たった9月26日の事だった。
第2師団には撤退命令が出され、当初の1万4000人のうち、戦死者は合計で6000人にも上った。実に、師団のおよそ40パーセントが死亡した計算になる。アメリカ軍の戦力喪失の基準が30パーセントのため、アメリカ軍側からしたらよく戦ったといえよう。(日本軍は50パーセント)
彰はギリギリまで作業に参加していたので、汚れがついたまま護衛艦隊旗艦の重巡利根に乗り込んだ。
「彰!!」
作戦会議室に入るなり、南雲が抱きついて来た。
「彰……! 良かった、生きてて……!!」
胸の中で泣いている。
忠一に再会出来て、無事に生還できた実感を味わう。地獄のような戦いの中一部隊を指揮し、生き延びたのは、彰にとって大きな経験となった。
「君の戦いぶりは聞いたよ。」
なんと、五十六まで来たていたのだ。
「六! 来て平気なのか?」
「そんな……! 六だなんて……!」
いや、そう呼んでくれと頼んだのはあんただろ。
何故か身体をくねくねさせている五十六に心の中でツッコミを入れる。
「ガダルカナル島を奪還したとはいえ、長門をここまで引っ張ってくるにはまだ制海権は不十分だからね。重巡部隊できたんだ。」
「そかそか。」
「ところで、傷は平気なのかい?」
聞かれたのは撃たれた脇腹だった。
「あぁ、穴は塞いでもらったし、もう少し安静にしたら完治するよ。」
「じゃあなんで作業してたの?」
「うっ……」
南雲に的確にツッコミを入れられた。にわかに冷や汗が出てきた。
「それは、そのぉ……」
「ふふふっ♪」
忠一め、嬉しそうに笑いやがって。
彰は苦笑する。ともあれ、無事に帰ってきたのだ。それが、とても嬉しく感じられた。
部隊を勝手に動かし、多大なる混乱を引き起こした辻政伸は大本営陸軍部の決定により参謀職からの離籍を決定。事実上の解雇だ。
大本営を去る時、ニヤリとしていたらしい。
装甲空母大鳳と2番艦白鳳は工期が予定よりだいぶ早まり、今年の12月には進水するというのだ。
しかし、訓練や最終艤装の取り付けなどがあるため、戦線に加わる、いわゆる就役は2月頃になるようだ。
これらがもし戦線に加わったら、大きな戦力になるであろう。
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「とうとう、ガダルカナルは取り返されたか。」
その声の主はサングラスをして、パイプを加えていた。
「私はガダルカナルもそうだが、一刻も早くフィリピンへと戻りたいな。」
その人物は教科書にも載っており、知らない人は決していないであろう有名な人物だ。
「日本人は強いが、フィリピンの結束力はもっと強いぞ。」
ダグラス・マッカーサー。フィリピン軍元帥であり、アメリカ太平洋陸軍総司令官である。
この日、ニューカレドニア島のヌーメアで、マッカーサー、ターナー、ヴァンデクリフト、ハルゼー、スプルーアンスが話をしていた。
「日本兵の攻撃は抑え切れず、奪還させてしまった。今回は私の責任だ……」
ヴァンデクリフトは責任を感じてはいたが、戦意は衰えていなかった。
「ジャップのしつこさは十分にわかっているさ。特に、あの彰とやらは関心深い将兵だった。」
「マンハッタン計画を知っているという例の奴か。」
マッカーサーが尋ねる。
「もし未来から来たという事が本当ならば、その人物は危険ですね。」
冷静に分析するのはスプルーアンス。史実でも、冷静な判断が特徴的だった。
「アレックスのせいではない。私が護衛をしっかりしていなかったからだ。」
ターナーまでもが謝罪を述べる。
「2人とも落ち着け。日本軍は戦術を変え、我々の輸送船が食われたことにある。今回は負けとしか言いようがない。」
ハルゼーは2人をなだめた。ハルゼーにしては珍しいなと、マッカーサーが言う。
「ところでレイ、エセックスはどうだ?」
スプルーアンスは答えた。
「エセックスは既に進水しました。サンディエゴやノーフォークなど、各造船所から続々と同型艦が出てきます。今年中にはあと6隻は進水します。」
エセックス級はアメリカが得意とする大量生産にむいた大型空母で、全長265メートル(短艦。長艦は270メートル。)、幅45メートル、最大排水量4万3060トン、搭載機数は100機を誇る有名な艦隊型空母だ。
史実では合計24隻が造船されている。
「来年には互角以上に戦えるでしょう。」
「やっとジャップ共に一泡吹かせるのか。」
ハルゼーは楽しみだと心待ちにしている。
「それで? 反抗作戦はどこから始めるのだ?」
マッカーサーが問う。
「計画ではウェーク、マーシャル、ギルバートと南太平洋の西側を固めた後にガダルカナル島の奪還を目指そうとしている。」
「またガダルカナルで戦うのか?」
マッカーサーが異を唱えた。
「奴らは少なくとも2個師団はあそこに投入するぞ。これまでの戦いと変わって大規模なものになり、更に死者が増える。」
「何か案でも?」
ターナーの問いかけに、マッカーサーはニヤリとしながら答えた。
「奴らの重要拠点、トラック諸島だ。」
Fin




