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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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3章46話 奪還戦~飛行場制圧戦~

 最悪だ。

 ヴァンデクリフトは残存部隊に指示を出しながら思った。兵力は40パーセントが失われ、今や6000人がいるかいないかの程度だ。

 重砲は残り8門しかなく、弾薬も各門100発程度しかない。本気で撃ち合えば30分で無くなってしまう。重機の消耗も激しい。

 味方はよく戦った。ヴァンデクリフトはエスピリットサントに連絡をし、救助船の手配を頼んだ。これ以上戦えば全滅する。指揮官として、それは絶対に避けねばならなかった。

 ハルゼーはすぐに向かわせると言ってきた。少なくとも到着は今夜だろう。敵は飛行場に流れこむだけだ。


「とにかく防御を固めろ! 今夜まで持ちこたえるんだ!!」


 ヴァンデクリフトは最善を尽くす。多く帰れる者がいるように。コックや通信兵も総動員された。最低限必要な人員だけを残し、銃を取らせる。

数人にルンガ岬までの退路を確保するように命令した。今夜までに開拓しなければ、撤退の際混乱が生じるからだ。

 スチュアート軽戦車は敵戦車に全滅された。もはや頼れるのは重砲しかない。

 ヴァンデクリフトは真ん中の中型機専用飛行場から北上し小型機専用飛行場へと後退した。ルートからして敵の主力は中型機、高地側は大型機に差し掛かるからだ。


 彰達右翼部隊は一番南の大型機専用飛行場に迫った。


「総員突撃用意。」


 静かに、そして確かに命令を伝える。

 全員に緊張が走り、銃剣をつけるのに手間取る兵士もいる。

 とうとう、飛行場まで進出したのだ。ここでしくじるわけにはいかない。

 午前10時。

 彰は叫んだ。


「突入!!」


    ――――――――――――――――


 左翼部隊はいよいよルンガ川に差し掛かった。

 岡村大佐は戦車を前に出し、先に渡河させた。すると、対岸から銃砲が火を吹いた。155ミリ弾により九七式中戦車はたやすく破壊されることはなく、逆に貫通して歩兵に被害が出た。

 弾薬庫に命中し、ふっ飛ばされる戦車もいた。たちまち9両中4両が擱座する。


「歩兵砲! あの重砲を黙らせろ!!」


 歩兵砲と呼ばれたのは、連隊砲としても親しまれている四一式75ミリ山砲だ。

 これは旧式のクルップ砲であり、発射した際砲身は後ろに動く。これをもとに戻すの装置が駐退複座機といい、砲身が後ろに動くとグリセリン荷性ソーダと呼ばれる液体が受け止め、バネによって元に戻される。

 これは故障が大変少なく、戦場では使い勝手が非常に良い。

 

 反対にシュナイダー砲というのがあるが、これは発射の際砲身内に残る火薬ガスの圧力を利用した砲口制退機で砲身をもとに戻す。

 ガスが後ろに下がろうとする砲身のエネルギーを減少させ、砲架にかかる圧力を減らすため砲を軽くすることが出来るのだ。


 シュナイダー砲はその火薬ガスによって砲身がスマートになるメリットがある。

 素材の内腔に火薬ガスの圧力より更に大きな水圧を加え、内腔及び近くの金属層に永久延伸を引き起こし、その延伸量は外側に行くにつれて小さくなる。これにより砲身は無限の圧力に締め付けられる。砲の耐久力が上がる事になる。

 2層、3層とタガをはめて厚くしていた砲身はこれによって1層にまとまり、作りやすく軽くなるのだ。

 軽くなるのは嬉しいことだが故障が多々あり、故障が少なくしかも使い勝手が大変良い四一式山砲は新しく開発された九四式山砲を使おうと思う砲兵は少なかった。

 もちろんデメリットはあり、射線が安定せず、命中率が若干下がるのと、砲身が重い事だ。

 史実でも砲身の重さによりガダルカナル島のみならずインパール作戦などでも砲兵に死者が出ている。今回のこの戦いでも数人が重さにより死亡している。

 あまり運びたくない代物だ。


 信頼に長ける歩兵砲が射撃を猛然と始める。こちらには弾薬がたっぷりあるのだ。これまで米軍にやられたように、対岸一面を耕すように撃ち込む。

 米兵は身をかがめ、吹き飛ばされまいと必死に耐えるが後ろの重砲の爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる兵員が多発する。


「大佐! 右翼部隊は飛行場に突入を始めたようです!!」

「おぉ!那須少将はついにやったか!」


 岡村大佐が喜んだが、通信兵はあまり浮かばない様子だった。


「那須少将は頭部に銃弾を受け戦死しました。現在指揮は負傷した大山少将が引き継いでいます。」

「なんと……那須少将が…………。」


 岡村大佐は少しの間黙祷を捧げた。


「彰が戦っているんだな。だとしたら私も負けてはいられない。」


 岡村大佐は刀を引き抜くと部下に叱咤した。


「右翼部隊は遂に飛行場に突入を果たしたぞ!! 我々も遅れを取るな!!」


 男勝りな性格か、彼女の声には覇気がある。兵士達はその遅れを取り戻さんと、山砲の援護を受けながら渡河を始める。岡村大佐も泳ぎ始めた。

 対岸からは砲撃の合間をぬって重機関銃が渡らせまいとしきりに弾丸をぶち撒けた。その火力は昨夜とは比べ物にならないほど弱く、さほど脅威ではなかった。


「対岸に辿り着いた者は手榴弾を投げ入れよ!」


 数人が手榴弾を放り投げる。短い爆発がすると米兵の鉄兜が転がり落ちてきた。その中には重機の残骸もあった。


「私に続け!! 敵塹壕内に突入せよ!」


 斬り込みに戦いは発展した。

 銃声がだんだんと少なくなり、あちこちから悲鳴と怒号が聞こえてきた。

 30分もすると、逃げ出していく兵士がちらほらと出てきた。


「飛行場は目の前だぞ! ここを突……!!」


 岡村大佐の喉にナイフが刺さった。

 その米兵は岡村大佐の長い髪を掴むと後ろに引っ張り、顔が上を向いた状態になった時無防備となった喉に深く突き刺したのだ。


「大佐ーー!!!!」


 兵士1人がその米兵に掴みかかり顔面を殴り飛ばす。米兵は倒れ、その瞬間に銃剣を胸深く刺す。

 ズブリと嫌な感覚が腕に伝わり、米兵はそのまま絶命した。


「大佐! しっかりしてください!!!」


 岡村大佐は必死に声を出そうとするが逆に鮮血が溢れ出るだけだった。


「大佐! 喋らないでください!! 喉から出血します!」


 それでも岡村大佐は喋ることをやめず、その兵士の襟を掴むと小さく、しかしはっきりとした声で伝えた。


「飛行場……に、突入…………せよ……。」


 岡村大佐は力を失い、屍と化した。


   ―――――――――――――――――


 彰達右翼部隊は大型機専用飛行場に突入していた。だだっ広い飛行場のど真ん中で銃撃戦が始まり、巨大な飛行場を彰と守ると言ってくれた12人と共に駆け足で横断していた。

 目的は管制塔と思しき建物だ。おそらく司令部だろう。


「いいか、3つ数えたら突入する。俺がドアを蹴破るから、お前達はトンプソンを構えながら急いで入れ。」

「は!」


 彰はトンプソンの残弾を確かめた。今入ってるマガジンと予備が2つある。なんとかもつだろう。


「行くぞ。3、2、1、行け!!」


 彰が扉を蹴破った。

 4人が一気に流れ込み、中で銃撃音がする。

短い銃撃戦はすぐに終わり、1人が腕に被弾するなど負傷した。

 彰は4人連れて2階へ、他は1階のクリアリングを行う。階段を上がる途中で1階でまた銃撃戦が始まった。


「敵だ!!」


 不意に聞こえたかと思うとM1ガーランドの弾丸がてすりに跳弾する。頭を下げながらトンプソンをがむしゃらに撃ち、近くの机を蹴飛ばし倒して盾にした。

 そこから顔をのぞかせて激しい室内戦へと発展する。あちこちで弾丸が跳弾して、その内1発が彰の右太ももに命中したが当たるだけで食い込みはしなかった。それでも十分痛い。


「手榴弾投げるぞ!!」


 彰は手榴弾を2つ投げた。

 1つは机の影に隠れていた米兵を窓ガラスごと吹き飛ばし、もう1つは目の前のボードが置かれてる大きな机の上で爆発した。

 すかさずトンプソンを乱射、2人が倒れた。

 司令室と思われる部屋はクリアした。


「他に部屋がないか調べて! 出会い頭に注意!!」


 散策を始める。1人が発砲、倒したようだ。


「ぐお!!」


 1人が叫んだ。

 その方を見るとコックと思える兵士がその兵士の腹に包丁を刺していた。彰は迷わずトンプソンをダブルタップで射撃し、米兵を倒した。その時には日本兵は息を引き取っていた。


「2階異常なし!!」

「1階も異常なしです!!」


 彰は命じる。


「司令部屋上に旗をたてよ! この司令塔は橋頭堡として確保したぞ!!」


 滑走路を走り回る日本兵は確かに見た。司令塔と思われる建物の屋上に旭日旗がはためく姿を。


「うおーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 右翼部隊は、大型機専用飛行場を占拠した。


Fin

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