3章45話 奪還戦~陣地突破!~
指揮官がやられた。
左翼部隊は川口少将。右翼部隊は那須少将。奇跡的に川口少将は気を失っているだけで、岡村大佐がなんとか立て直した。
しかし、那須少将は頭部を撃ちぬかれており、完全に即死だった。
「大山少将! 敵部隊が押し寄せてきています!!」
接近しているのは陸軍第124連隊の1個大隊およそ1500名だった。
「全軍俺の指揮下に入れ! ……がはっ!!」
彰は血を吐いた。出血がひどくないとはいえ出血している事に変わりはない。
「少将! ここは休んでください!」
「そうです! 海軍さんに死なれたら面子が立ちません!!」
それでも不思議に妥協しようとは思わなかった。むしろ怒りが立ち込めた。
「馬鹿野郎!!」
怒鳴った。
なんでだろう?
自分から望んでこの戦場に立って、負傷したんだから後方に下がってもいいと思う。
「お前らそれでも軍人か!!」
考えても答えが出てこない。何故俺はまだ戦おうとしているんだろうか。
「陸軍の面子だとか、海軍の面子だとか、そんなもの関係ないぞ!!」
那須少将が倒れた今、誰かが指揮を取らねばすべての作戦が台無しになる。でもそれは、俺じゃなくてもいいはずだと、何処かのもう1人の自分が叫んでいる。
確かにその通りだよな。
でも、逃げちゃダメだと思った。
「俺はお前ら16連隊の指揮官だ!! 他の部隊の指揮官は残っても、一番上の指揮官がいなければ軍は機能しない!!」
確かに1個大隊を任された。しかし所詮は1個大隊、主力の歩兵第4連隊の指揮官ではないし、何より全体の指揮官でもない。
「俺がこの戦闘に参加してる時点で貴様らと同じ陸軍だ! まだ16歳のガキにこんなこと言われて恥ずかしくないのか!!」
あぁ、そうだ。何処かで別の自分が戦えと言っている。
何の為に?
「こんなところでくたばって作戦が失敗したら、それこそ面子潰しだ!!!陸海の垣根を超えろ! 精神論では勝てぬ! 自分の最善の行動を尽くすんだ!!」
兵士達は真剣に彰の声を聞き逃さず聞いている。
「俺に続け!! 飛行場は目の前である!!!」
彰は立ち上がった。
脇腹を撃ちぬかれているのに不思議と痛みはなく、逆に闘争心が出てきた。
何がなんでも生き残ると。
「迫撃砲部隊は敵部隊前面に砲撃せよ! その間に手の開いた兵士は敵の重機を坂の下に向けるぞ! 今度は奴らに弾丸を浴びせてやれ!!」
自分とは思えない命令だった。でも、この場での最善の策はそれしか無かった。
歩兵はM2を彰の指示で取り外し、124連隊のいる方へ向けて銃口を下に向けて固定した。
ベルト式の弾薬を薬室カバーにはさみ、カバーを閉めてコッキングハンドルをいっぱいに引いた。迫撃砲部隊はしきりに足止めしようと撃ちまくってるが、弾薬が尽きかけていたので完全に止めることは出来なかった。それでもいい時間稼ぎにはなった。
「撃てぇぇぇ!!!!!」
残っていた計7門のM2重機関銃から12.7ミリ弾が放たれ、米兵に向けてばらまかれた。横から阻止しようと海兵隊の生存者はしきりに接近を試みるが日本兵によって阻まれた。敵味方が入り乱れる中で敵の重機を奪い敵に浴びせる。奇想天外な戦術だ。
現代の戦闘でもこのような戦いをするのは滅多にない。まだ完全に撃破したわけではないのだ。敵陣地の中でのその行動は、米兵の度肝を抜いた。
「撤退!! 後方に下がれ!!」
デンバーク大佐は全滅の危機感を感じ、陸軍も混ぜて撤退を開始した。
白兵戦の途中だった米兵は蹴り飛ばしてでも逃げようとするが殆どが斬られたか、機銃弾にやられた。数分後完全に陣地を突破し、先をゆっくりと下って行った。
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クマ陣地の手前で苦戦していた岡村大佐の左翼部隊は戦車な援護あって徐々に圧倒しつつあった。
陸軍部隊も日本兵の人間とは思えない攻撃により恐怖心が闘争心よりも勝り、逃走する者が増えたからだ。弾薬も無くなりつつある米軍にとって、自分たちの倍以上いる日本兵を止め続けるのは難しくなった。指揮官のアシュフォード大佐は既に戦死している。
「この陣地で最後だ! 踏ん張れ!!」
もう少しで散っていった仲間の目標であった飛行場に突入できる。
その思いだけが彼らを突き動かし、がむしゃらに陣地に突っ込んでいった。ついに1個小隊が陣地にながれこんだ。それに続いて各所で白兵戦が始まった。
重要機関銃の火点は制圧され、まさに阿鼻叫喚とも言えるほどの戦いになっている。あっちでは刀で斬られ、あっちではバヨネットにより心臓を一突きにされたりと、地獄のような光景であった。
戦車も味方のいないところから陣地に侵入し、逃げる米兵に向けて機銃掃射を行った。まさに蹂躙ともいえる様子だ。
「あと少しだ! 陣地を制圧できるぞ!!」
すべての日本兵が全力を注ぐ。米兵も突破されまいと必死に抗ったが、とうとう押された。
「一部隊が突破したぞ! 彼らに続け!!」
とうとう1個大隊規模の兵員が陣地を突破した。逃げる米兵に向けて短機関銃や小銃を撃っている兵が何人もいる。
米兵は全滅を恐れ、散り散りに逃げていった。ルンガ川をはさみ、残すは飛行場のみだった。
ムカデ高地では那須少将を坂から下ろし、平坦な場所に寝かせた。
多くの将兵が泣き、一部の兵士は次の戦いに向けて死体から手榴弾や弾丸を集めた。中にはレーション(戦闘用糧食)をかじっている者もいる。
「ルーズベルト給与はもうすぐだ! 頑張ってくれ!!」
彰は血を流しながらも皆に笑顔を見せた。緊張感しかない戦場で見る上官の笑顔はほとんどの兵士に安心感を与えた。
「上官」
数人の兵士が寄ってきた。
「我々分隊12名が上官にお伴いたします。そのお命、我々の命に変えてお守りします。」
自分を守ると言ってくれる兵士が出てきた。とても嬉しかったが、丁寧に断った。
「気持ちはありがたいが、皆さんには飛行場占拠のために働いてほしい。納得がいかないなら、僕と一緒に司令室突入の際ついてきてほしい。」
「わかりました!」
橋頭堡を築くには司令室の占拠が必要不可欠だった。それには少なくとも20人は欲しかった。12人いるが何とかなるだろう。左翼部隊は小休止をとると、再び飛行場に向けて歩き始めた。
時刻は、夜明けになろうとしていた。
Fin




