3章44話 奪還戦~凶弾~
デンバーク大佐は後方から陸軍1個大隊が増援に来ることは知っていた。しかし、そんなものいらない。欲しいのは1個師団だ。
「もっと撃て!! 突破されるぞ!!」
ムカデ高地は激戦地となっている。
次から次へと降り注ぐ12.7ミリ機銃弾が頭をかすめ、後ろにいる部下にあたり坂を転がり落ちる。手榴弾も投げ込まれ、彰は危うく先程死にかけたのだ。
「機銃弾をもっと持って来い!! 陸軍は何チンタラしてんだ!」
デンバーク大佐は怒鳴り散らした。
既に一部の箇所にはジャップがなだれ込んでる。突破は時間の問題だ。
『高地陣地より、戦車を要請する。繰り返す、戦車を要請する!』
無電を打っているが音沙汰ない。本部から見捨てられたのだろうか?そんな不安まで出てきてしまう。
日本兵は恐れを知らず、鬼神のごとく突っ込んでは恐ろしい刃で斬り殺していく。
皆が斬り殺されまいとがむしゃらに銃弾をばら撒いている。今すぐにでも逃げ出したい気分だ。
「うぉぉぉおぉ!!」
大佐もまた、白兵戦の真ん中へと巻き込まれていった。
ムカデ高地をじりじりと進む日本兵はついに陣地に突入することに成功した。激しい白兵戦が繰り広げられ、ナイフと銃剣の戦いに切り替わった。
彰も斬られまいと必死にトンプソンを撃ちまくった。頂上の最終ラインなだけあってその防御は分厚く、簡単には抜けられそうになかった。
「手榴弾行くぞぉ!」
彰は叫んでから手榴弾を投げた。たちまち数人が爆発に巻き込まれその場に倒れるか吹き飛ばされる。
「俺に続けぇ!!」
彰は先陣を切って前に出た。後ろから部下150名以上が続く。
トンプソンを敵兵にぶち撒けるように撃つ。余裕があれば手榴弾を投げつけた。爆発で怯んだすきにマガジンを換える。
「斬り込みはするな! 戦いはここで終わりじゃないんだぞ!!」
彰は斬り込みをかけようとする部下を止める。ここで死んでは後の飛行場奪還戦で戦力が無くなるおそれがあるからだ。
「弾が無くなったら死体から拾え!」
彰は部下にちょくちょく声を飛ばす。やがて一部の塹壕から頂上をこえ坂を下る兵士が現れ始めた。とうとう突破したのだ!
「もうすぐで突破できるぞ!! もうひと踏ん張りだ!!」
その時だった。
彰の背後から銃声がなった。銃弾は彰の背中に命中すると貫通し、無感情にどこかへ消え去った。彰は銃撃によって倒れ、そのまま意識を失った。
―――――――――――――――
川口少将の左翼部隊はクマ陣地と増援として駆けつけた米陸軍124連隊と海兵隊の残存部隊と戦闘を続けていた。
人数が増えたのと、弾薬の補給を受けた物量の前に圧倒されつつあった。
「戦車隊前にでろ! 戦車砲で陣地の攻撃を!」
川口少将は戦車隊を前に出し砲撃で黙らせることにした。
戦車隊は素早く前に出て戦車砲を発砲。数カ所が爆発に包まれ、多くの重機関銃は沈黙した。
「突っ込め!」
兵士は雄叫びをあげ、陣地に向かって走り始めた。2日目の夜だというのに日本兵に疲れという文字は無いかのように思えるほど動きは俊敏で統率がとれており、白兵戦では多くの敵兵を斬りつけた。
数分もしないうちに陣地を抜ける兵士が現れ後ろから挟み込むように攻撃を加えた。
「突破した者はそのまま前進せよ!! 川沿いに沿って待機! 他の者は遅れを取る……!!」
川口少将の指示は途中で途切れる。
どこからか飛んできた銃弾は左胸に命中、心臓はかすめたが川口少将はその場に倒れると意識を失った。
ムカデ高地で倒れた彰は脇腹を撃たれた。幸いにも貫通しており、弾丸が体内に残った状態よりは出血はひどくなかった。
「大山君! 君は撃たれたんだ、少し休みたまえ!」
那須少将の気遣いは嬉しかった。しかし、1大隊を任された指揮官としてはここで立ち止まるわけにはいかなかった。
「傷はそんなに深くありません。このまま指揮を続けます。」
「しか……!!」
那須少将の頭に穴が空いた。鮮血が飛び散り、糸が切れた人形のように倒れた。
「少将!! 少将ーー!!!」
彰は那須少将を抱えると起こそうと叫ぶが、目が開くはずもなかった。
Fin




