3章43話 奪還戦~揚陸阻止、第2夜戦~
第7戦隊の任務失敗の報告を受け、南雲は2航戦の角田中将に連絡し空爆隊を発進させた。
米軍の反撃はあまりなく、損害は少ないため敵の機動部隊が出てきても撃破できる用意があった。
空爆隊は零戦20、艦爆40、艦攻16の計76機が出発した。
艦攻隊は魚雷を搭載した。爆弾でも十分という話があったが念には念を入れてという決断から搭載された。艦爆隊の爆撃でも撃沈できなかったら魚雷でとどめを刺す。
空爆隊はターナー少将の輸送船団に向けて銀翼をきらめかせた。
一方の輸送船団の揚陸作業はあまりはかどっていなかった。日本軍の砲撃が船団停泊地点まで届いており、1発が弾薬を搭載した1隻に直撃し大火災を引き起こしているのだ。
ジャップの重砲はこんなに長射程の重砲を持ってやがるのか!
ヴァンデクリフトもターナーも同じ事を考えたようだ。
日本軍が持ち込んだのは九六式10センチカノン砲である。
1万8200メートルの射程を誇り、最大貫通能力は175ミリ。輸送船を撃破するには十分な威力だ。
榴弾砲とカノン砲の違いがわからない人がいるが、カノン砲は発射威力が高く、低く遠くへ砲弾を飛ばす兵器だ。そのため、要塞法や沿岸砲に使われる事がある。
榴弾砲は陣地攻略砲として使用されるのが多く、空高く打ち上げて自由落下のスピードも加えて真上から敵陣地へと砲弾を叩き付ける兵器である。
真上からの砲撃は防ぎようがなく、陣地攻略にはもってこいなのだ。
もちろん、正確な照準が求められるが。
このカノン砲によって揚陸作業が遅れ、飛行場も奇跡的に残存していた航空機がやられる事もあった。
カノン砲によって空爆隊は遠くから目標を見つけることに成功する。
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「敵船団を発見!!」
艦爆隊隊長の高橋少佐は心を踊らせた。
敵は輸送船を強行突入させて物資の揚陸作業を行っている途中なのだ。そのうち1隻は黒煙を吹いている。
「各機散開、分隊ごとに目標を定め攻撃せよ!」
高橋少佐は素早く支持をすると部下の3機をつれて黒煙を吹いている輸送船に狙いを定めた。
急降下爆撃は5000~8000メートルの間から降下する。今回は6000メートルだ。
エアブレーキを展開してスピードが上がり過ぎないようにし、エンジン出力を切る。機体はぐんぐん輸送船に迫り、照準器の中いっぱいになりそうだ。
爆弾は1000メートルあたりから投下するのがセオリーだが、高橋少佐は600メートルで投下した。
投下と同時に上昇を行う。このときすさまじいGがかかり、時には9Gかかる。大体の新兵はこの時点で気絶する。しかし、高橋少佐の分隊は歴戦のエースパイロットで、目の前が暗くはなるが気絶する程ではなかった。
海面すれすれを抜け、急いで後ろを振り向く。爆発と一緒に荷物が吹っ飛ぶのが見えた。
「命中だ!」
僚機も爆弾を命中させる。素晴らしい腕前だ。
周りを見渡すと、艦攻隊がとどめを刺したのか3隻がすでに沈み始めている。大戦果だ。
『我れ輸送船撃破せる。3隻撃沈確実、2隻大破せしめる。』
高橋少佐は母艦に無電を打つと引き上げていった。
輸送船がやられた!
ヴァンデクリフトのもとに輸送船撃沈の報告が入ったのは空爆隊が引き上げる直前だった。
せっかくターナーが大量の物資を持って来てくれたのに、全て台無しにされた。
それでも、重機関銃の弾薬は必要なだけ先に揚陸させた。不幸中の幸いである。
ターナーは2隻の大破した輸送船は駆逐艦によって処分させ、残る1隻とよろよろと退避する重巡と合流し撤退していった。
ヴァンデクリフトは何がなんでも守りぬく気持ちでいたが、救助の手配も考えていた。
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夜が来た。
左翼部隊は戦車を前に、重砲の援護射撃を30分ほど行わせた。右翼部隊も2段目の陣地を飛び出し、匍匐で最後の3段目の機関銃陣地へと迫った。
「突撃せよ!!」
川口少将は叫んだ。
兵士達は大声を上げながら突っ込み、戦車は機関銃、戦車砲で援護を行う。
米兵はひたすらに重機関樹を撃ちまくった。今夜の弾幕は昨日に増して分厚くなっている。恐らく昼間の砲撃戦は輸送船の護衛艦隊と我が海軍が激突したのだろう。
という事は敵は弾薬を補給している。
おかげで部下はバタバタと倒れていき、進むのが困難になっている。
「手榴弾投擲!!」
部下数人が先程突破した陣地から拾った手榴弾を陣地に向けて投げ入れる。
短い爆発がすると鉄兜等が転がってくる。
「突撃せよ!!」
抜刀。
銃剣をさした小銃を持つ兵士が果敢に陣地に飛び込む。
1夜目のように激しい白兵戦が始まり、斬り斬られの動きが各所で起こる。川口少将も2人斬りつけた。真っ赤な鮮血が顔にかかり、もはや日本人の風貌が見えなくなっていた。
白兵戦は30分に及んだ。後退していった兵士も混じっており、総勢2500人を超えていたのだろう。それでも6000人近くに膨れた前進部隊を止めるには至らなかった。
この2日間の戦いで日本兵は1900人近くが戦死または負傷し、工兵隊も戦闘に参加している。細かく数えたら4500人近くしかいないだろう。
米兵は更に後方へ下がり、日本軍はヒョウ、シシ陣地を突破した。残るはクマ陣地とルンガ川だけだ。
ムカデ高地では依然激しい戦いが繰り広げられた。
那須少将は米兵の死体から拾ったトンプソン短機関銃を持ち先頭に立っている。
「この短機関銃は実に使いやすいな。」
拾った時にはそう感想を漏らしていた。
ボルトアクションライフルである三八式歩兵銃とは違い、ガスオートマチックのトンプソンはひとつのマガジンに45口径弾(およそ11.42ミリ)が20発入り、右側面のボルトを引けば薬室に弾丸が送り込まれる。実に簡単な操作だ。
弾切れになったら左側面のマガジン近くのボタンを押せば勝手に取れる。そこに新たにマガジンを取り付けてボルトを引けばリロード完了だ。
陸軍では小銃を捨ててはいけないという教育があり、実際それが原因でいじめが起こり自殺者も出てる。
しかし、戦場では多く撃てる短機関銃の方がいい。戦場では現実的になる方がいいのだ。
部下も実際何人か拾って使っている。愛用して本国に持って帰るんだと言っている兵士もいるようだ。
「手榴弾はいくつありますか?」
彰が尋ねる。
「部下にも確認させた。あと1陣地は叩ける量はあるぞ。」
那須少将は自信満々に答えた。
次は最も防御が暑い頂上陣地だ。ここを抜ければ飛行場まで坂を下るだけだ。
「突撃!!」
彰達は匍匐から立ち上がり、勢い良く突っ込んでいった。
Fin




