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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
31/96

2章31話 思いがけない上陸

「何故こうなった……」


 大山彰16歳。

 今、漂流記が書けそうなくらい漂流中です。


         ~3時間前~


 エスピリットサントを出発してから2時間半がたった。もう少しでサンクリストーバル島が見えてくる。

 何度か後ろからSBDがついてきたが、バレット大佐の部下らしく、先ほど宙返りを3回行うとエスピリットサントへと戻っていった。


 長門含む8隻は24ノットでエスピリットサントから離れようとしていたため予定より早く進めたのだ。これは運がいい。


「帰ったら南雲に返事をしないと……」


 出発前に告白されるとは思わなかったが、自身の何がいいのかわからないし何よりアピールなんてしてもいない。


 はて、なんでだろう?


 甲板に出て長門の後甲板に移動した。

 潮風がとても気持ちよく、学校の悪友達にも味あわせてやりたいくらいだ。

 41センチ連装砲がビッグ7としての誇りと強さを知らしめるかのように砲門を空に向けて睨み、砲塔は何も通さんとずっしりしている。

 見ているだけで頼もしく思い、大和や武蔵のように不沈艦と讃えたくなる気持ちも理解できた。

 人はそれぞれだが海が好きだ。

 生命の生まれた場所であり、人々の希望や夢にも出てくる。


 父曰く、「海があるから父さんたちがいる。海と仲良くなるには、海を理解しなければならない。」だそうだ。

 こんなに気持ちの良い海を見ているとその考えがよくわかる。仲良くなるのは少し時間がかかりそうだが、時間かければ不可能ではないような気もする。

 不思議だ……こんな綺麗な色をした海の上を軍艦が通り、ある場所では砲撃戦、航空戦を繰り広げているとは到底思えない。


「ふぁああ~」


 間の抜けたあくびをして、砲塔の上で昼寝をしようとしたその時、自分でもよくわからないつまづき方をした。


「へ?」


 フェンスから体が投げ出され、そのまま頭から海に落下。見事な水柱と共に着水した。


「あ、え!? やべ!! ちょっ、誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 届かぬ思い。長門は遠ざかっていった。

 そして冒頭に戻る。


    ――――――――――――――――


「ぶえっくしゅ!!」


 さみぃ……。


「ここほんとに熱帯かよ……」


 流石に3時間も海につかってたら寒くなるのは当然だ。


「なんか変なフラグが立ちそうだ……」


 このまま死ぬのだろうか、それか米軍に捕虜にされるのか、どちらにせよ死ぬのが確率として高いのは妥当だ。

(そういえば今はマライタ島とサンクリストーバル島の間、もう少し西に泳げばガダルカナル島だ……!)

 彰は甲板に行く前に海図を見て現在位置を確認していた。油断はできないが、もしそのとおりに泳いでいけばガダルカナル島に到着できる。

 彰は自分の行動に感謝しながら泳ぐことにした。


 数時間後、アメリカのPBYカタリナ飛行艇によって救助された。どうやらガダルカナル島に向かう道中だったらしく、低空飛行を行っていたら偶然発見したとか。

(死ぬかと思ったけど、何とか助かったな。)

 彰は窓から外を見ながらそう思った。


 ガダルカナル島に到着すると、報告を受け待っていたのか第1海兵師団師団長のアレキサンダー・ヴァンデクリフト少将が立っていた。


「ようこそ溺れた将校よ。私は……」


 ヴァンデクリフトの自己紹介を遮るように彰は言い放った。


「第一海兵師団及びガダルカナル島攻略作戦指揮官のアレキサンダー・ヴァンデクリフト少将ですね?お初にお目にかかれて光栄です。」


 ヴァンデクリフトは鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になった。名乗ってもないのに何故知っているんだと。


「僕は未来から来ました。なんだって知っています。」

「ほぉ……まぁ、話は尋問室で聞こう。」


 良かった、英語習ってて。


 ガダルカナル島は非常に暑い。

 気温は常に30度を超え、それだけなら耐えられたのだが熱帯特有の湿度がそれを許さなかった。

 30度の温度に対し湿度は70パーセント以上と、異常気象のような数値だ。


 今の日本もこんな感じだが。


「それで?未来から来たと言う君は何者だ?」

「大山彰。歳は16。南部方面指揮官であり、階級は貴女と同じ少将だ。」

「そうか。それでは、彰と呼んでもいいかな?」

「もちろんだ。それじゃあ僕は……」

「アレックスと呼んでくれて構わない。」


 ガン○厶かよ。

 でも確かアメリカ名のニックネームではアレキサンダーはアレックスとなる。別に不自然なことではないのだ。


「それじゃあ彰。君はなぜ漂流していたんだい?」

「船から落ちた。」


 尋問室にくすりと笑いが生まれた。


 だってしょうがないじゃん!! 自分でもよくわからないコケ方したんだもん!! 笑わないでよお腹に手を当てながら!!


「落ちた……のか……ぶっ、くく……」


 どんだけ受けてんだよ。

 突っ込みたくてしょうがない。


「いや、すまないな。それで、未来から来たと言うのはほんとか?」

「26日の川口支隊の総攻撃は撃退しましたか?」

「何故それを? 第一、陸軍の報告などで知る可能性は十分高いと思うんだが。」

「来月は第二師団だよ。」

「……!」


 彰の発言にヴァンデクリフトは眉をよせる。


「この作戦は僕が立案したものだ。」


 ヴァンデクリフトは反論した。


「待て、それはどういう事なんだ。」

「陸軍は精鋭と呼ばれる実力を持った部隊を二度に渡って撃退した。うちの陸軍は面子を潰されるのが極端に嫌いで、すぐに増援を送ることを決定したよ。」

「たかが1個師団で何ができるんだ?」


 彰は余裕ぶっているヴァンデクリフトを打ち崩す発言する。


「本当に貴女がたは撃退できるだろうか? 日本の潜水艦が積極的に輸送船に対して攻撃を行う、いわゆる通商破壊作戦を実施している。指示したのは僕だ。」


 ヴァンデクリフトの表情が揺らぐ。


「その輸送船には喉から手が出るほど欲しがっている弾薬などの物資が搭載されているはずだ。それを何度もやられたら物資は尽きるはずだよ?」


 ヴァンデクリフトは何から何まで呆気にとられている。本来の日本軍なら通商破壊作戦を行わない事はわかっていたが、まさかこの男に指示とは思わなかった。


「わかった。取りあえずは信じよう。」

「それなら嬉しいな。」

「君の目的は何だ。」

「この戦いの早期終了だ。」

「じゃあ何故増援を送るのだ?」

「当たり前だ。ここは日本軍が汗水流してあんたらの土木機器と違ってツルハシともモッコで作ったんだ。そこを奪い取られたら取り返すだけだ。何より、仲間が大勢死んでるのに今更後には引けないんだよ。」


 更に、このガダルカナル島問題は海軍の問題だ。そこに陸軍の協力を得ている。メンツにも関わるため、流石の彰でも了承せざるを得なかった。


「そうか。悪いが、今日はここまでだ。また明日話をしよう。」


 今日は硬いコンクリの床で寝ることになりそうだ。


Fin

最後まで読んでいただきありがとうございます。松ちゃんです。


10日に投稿すると書いてありましたが、13日と打ったつもりでした。つまり10日は誤字です。ごめんなさい。


今度から週に一度投稿することにしました。毎週日曜日夜10時に投稿します。


というわけで次回は20日日曜日夜10時です。お楽しみに!

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