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俺と彼女らの戦闘記  作者: 松ちゃん
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2章26話 殿艦、インディアナ

 エスピリットサント島。

 ニューヘブリディーズ諸島の属島であり、ガダルカナル島南東800キロの地点にある。火山活動により形成され、最高標高は1879メートルのタブウェマサナ島である。

 現在この島はアメリカ軍南太平洋戦線の最前線基地であり、滑走路や病院、外軍の集結基地となるため応急修理が可能なように乾ドックも配備されている。兵力は10万人にのぼり、2個師団が警備隊として配備されている他、航空機は有に300を超えている。まさに最前線の要塞だ。

 

 サウスダコタとインディアナは重大な損害を出しつつもここに向かっている。ここで応急処置を施し、その後ポートダーウィンに向かう。

 リー中将は絶望の底へと潜るように俯いていた。新鋭の戦艦が魚雷で戦線離脱。その同型であるワシントンは沈められサウスダコタは満身創痍、そしてインディアナは大破してあちこちに弾痕が生々しく残されている。


「はぁ………」


 ため息しか出ないよ……

 私の初陣がこんなに悲惨だなんて、神様はなんて残酷なの…?


「インディアナの消火が完了したとの事です。」


 不意に部下から報告があった。


「ご苦労様と伝えてもらえる?」


 いつもは男勝りな口調のリー中将もこの時ばかりは弱々しい女の子の口調へと変わっていた。無理もない。

 いくら指揮官とはいえ女性。メンタル面で言えばよくぞ戦場に来れたと言うべきだ。それほど女性指揮官は厳しいものである。

 それもいまや崩れつつあった。


「お風呂に入りたい……」

 

 つぶやいたその時だった。


「水上レーダーに感複数!!」


 この報告はリーの精神状態にとどめを刺すようなものだった。


    ―――――――――――――――


「あらあら、手負いの戦艦ですね?」

「はい。資料にあるサウスダコタ級戦艦と形状が類似してます。恐らく資料通りと考えてもよろしいかと。」


 高須は手負いのリー中将の部隊を発見した。こちらも扶桑が2発被弾しているが大きな損害とはならなかった。もちろん山城は健在である。


「ここで叩けば後々苦労しませんね。戦いましょうか。」


 高須は冷静ながらも、その目は獲物を狩る眼へと変貌した。

 扶桑と山城は24ノット(約43キロ)に増速しリー中将の残存部隊と急速接近を始めた。



「そんな……!!」


 リー中将は運命と神を呪った。

 ジャップはワシントンに飽きたらずサウスダコタまで叩こうというのか!!


「これ以上損害は出せない!速度はどこまで出せる!?」

「現状22ノット(約40キロ)です!!」

「戦うしかないの……」


 もはや逃げは潰された。残るは投降か交戦だ。しかしここで投稿すれば手負いなれど戦艦は鹵獲されるだろう。

 それだけは避けなければならなかった。



「斉射始めてください!!」


 扶桑と山城は自慢の火力を思う存分叩きつけようと合計24門の35.6センチ砲弾を解き放った。


「だんちゃーく……今!」


 掛け声と共に確かに水柱が上がった。その中に見えたのは爆炎であった。


「命中しました!」


 艦橋は歓喜に満ちた。それでも高須はその中ただ冷静に敵を見つめた、何せ距離は1万5000メートル。敵が撃ってこないのが不思議な距離だ。油断はできない。


「次弾装填を急がせてください。」


 断固として油断はならぬ。その決意の眼は揺るがなかった。


米戦艦では見張りが扶桑らの砲撃をしっかりとらえていた。

 

「敵の砲撃です!」


 その数秒後、インディアナの周辺に巨大な水柱が立ち上がった。

 インディアナに2発が命中し、火災が発生してしまった。インディアナの火災は鎮火できそうになく、これが目印となってしまった。

 敵の戦艦は2隻。少なくとも火力はこちらと同等だろう。最悪向こうに完膚なきまでに叩かれるかもしれない。

 皮肉な事に、リー中将はサウスダコタに座乗している。こんなことを考えるのはあり得ないが、もしインディアナが囮を受けたらリー中将は助かる……。

リー中将は考えなかったが、彼女を姉のように慕っている彼女は囮を考えた。


「これはこのインディアナが狙われますな。」


 インディアナ艦長、アリス大佐が呟いた。彼女はインディアナポリス海軍兵学校時代にリー中将と出会い、よく行動を共にしたという。その姿はまるで姉妹だとよく言われたほどだ。


「姉様を助けられるなら、このアリス。ウィリス・リー中将の為にこの身を捧げよう。」

「艦長、皆覚悟は決めております。あとは、艦長の赴くままに…。」


 リー中将の為に。それは、アリス自身のわがままであり、願いでもあった。その思いは、サウスダコタ乗員全員に伝わっていた。


「脱出が迅速に行えるように準備して頂戴。よろしくね。」

「了解しました。」


 アリスは微笑むと声をあげた。


「全員に通達!!本艦インディアナは敵戦艦に突撃する!!」


    ―――――――――――――――


「インディアナは何をする気だ……!!」


 突如として面舵をとり右に回答し始めたインディアナの行動を不審に感じた。すると、インディアナから発光信号が輝いた。


『我敵艦隊に突撃、囮を受ける。貴艦は速やかに退避されたし。』


 サウスダコタに逃げろと言ってきたのだ。


「そんな!アリス、何を考えているの!?」


 リーは叫んだ。長年一緒にいたのだ。そんな相手が、自ら死ににいくような行動をしている。


「頼む、やめてくれぇ!!!」


 その声は届かず、サウスダコタは出せる限りの速度でその場からの離脱を急いだ。


「いやああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあああああ!!!!」


 その声は虚しく、ただ遠ざかるだけだった。

 インディアナは沈没と引き換えに扶桑に砲弾17発、山城に12発を叩き込んだ。扶桑と山城はのろのろとラエへと向かった

 アリスの遺体は確認できていない。


Fin

最後まで読んでいただきありがとうございます。松ちゃんです。


この話は20日に掲載する予定でしたが、それを忘れてしまいました。

ほんとうにすみません。


実はリアルの方は投稿日なりと忙しかったので、忘れてしまった次第であります。

忙しくない日に載せるようにするなど対策していきますので、どうかお許しを……。


次回は24日の夜8時に必ずのせます。お楽しみに。


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