2章14話 南方警戒隊壊滅
先頭の重巡キャンベラに4本の魚雷を発射した(2本命中)鳥海は5基10門の主砲をキャンベラに向けて発射する。
日本軍は主砲に加え高角砲、25ミリ機銃も水平射撃を開始し、未だかつてないほどの近距離による夜戦が始まった。
一方、パターソンは警報を発し、照明弾を打ち上げ主砲による応戦を始めた。しかし、間もなく軽巡天龍の探照灯射撃が命中。
艦橋、第3砲塔等に命中弾を数えた。艦橋では艦長が戦死し、指揮系統が混乱した。最終的にパターソンは中破、戦線を離脱していった。
パターソンからの警報を受け取ったキャンベラは総員戦闘配置が下令されたがこの配置が完了する前に鳥海の放った4本の魚雷のうち2本が命中。
息つく間もなく20センチ砲弾を雨霰と浴びせられ、僅か3分で28発の砲弾が命中、キャンベラは航行不能となった。
後続のシカゴも警報と同時に対応を始め、少なくとも2本の魚雷を回避した。探照灯照射を行ったと同時に艦首に魚雷が1本命中。これがとんでもなく威力が馬鹿でかくて、艦首は切断されたちまち浸水が始まった。
続けて主砲弾を浴びせられ、18発が4分のうちに命中した。艦橋はボロボロというよりもズタズタに引き裂かれたと言うのに相応しいほどに破壊され、戦闘能力はとっくに無かった。シカゴはそれでも粘り、25ノット(時速45キロ)で戦線離脱した。
「キャンベラ型重巡に2本命中!!」
「全砲門開け!!」
三川は怒鳴った。
たちまち彼女の乗艦する鳥海は全ての砲門から放たれる砲弾が面白いようにキャンベラに吸い込まれては爆発する。
「きゃははははは! やったやった!! どんどん撃ちこんで!」
三川軍一。彼女はあの南雲達が危険視するほどの戦闘狂で、戦いになると最後の一兵まで戦うべきという考えを持つ。
「キャンベラ型!戦線を離脱します!!」
見張り員の言うキャンベラを見ると、確かに戦線から離脱しようとしていた。
「すごーい! 艦橋がボロボロだよ!?」
まるで狂った子供だ。彼女は少しでも戦いの事になるとこの様にいつもの三川ではなくなる。いつもは無邪気な彼女だが、戦いになると人格が変わる。
「後続艦シカゴ型! 探照灯照射しました!」
「逃げる奴は放っておけ!! そのシカゴ型をやるぞ!!」
三川の号令により、鳥海はシカゴへと狙いを変えた。魚雷は4本発射した、距離およそ3000だから命中はするであろう。主砲はほとんど仰角(主砲の角度。仰角は0度から上で、俯角は0度から下。)を取らない水平射撃を続けた。
この射撃にシカゴはやがて命中弾が増え、気づくと艦橋はズタズタに引き裂かれたような廃墟と化し、
魚雷は艦首に1本命中し艦首は引き千切られた。
日本の有酸素魚雷は空気濃度以上の純酸素を酸化剤として使用し、燃費、射程、速度、そして隠密性において世界各国の魚雷を圧倒していた。
酸化剤と燃料を混合して燃焼させ炭酸ガスを排出。このガスは水に溶けやすい為隠密性が高くなり、雷跡がまったく残らなかった。
射程は25000メートルで、後に伊19によってこの射程がとんでもない偉業を達成することとなる。
炸薬は九七式爆薬490キロ、TNT558キロに相当する破壊力を誇った。当時のアメリカ軍の魚雷Mk.14はトーペックス爆薬292キロ、TNT467キロ相当の為、この有酸素魚雷が数本命中すれば戦艦でさえも危険なほどの威力を持ち合わせている。シカゴは艦首を引き千切られたものの、機関は生きていたため25ノット(時速45キロ)で離脱を始めた。
シカゴの後続をつとめていた駆逐艦バッグレイは敵発見と同時に左に急回頭し、戦闘配置についた。魚雷を4本発射するも軽巡夕張に命中した盲弾1本を除いて全て外れ、しかも日本軍からの攻撃もなかった。完全に蚊帳の外にいた。
米駆逐艦パターソンが三川艦隊を発見してから僅か6分でキャンベラとシカゴは大破、戦闘不能に陥り、南方警戒隊を壊滅させた。日本軍は圧倒的な戦闘を続け、被害は天龍と夕張の数発の被弾以外被害は全く無かった。
「これぞ完全勝利ってものだよねー!」
三川は鳥海の艦橋で勝利に喜んでいた。
「米艦隊の重巡2隻を撃沈確実(実際は大破)、駆逐艦が小破と考えております。」
「魚雷が不発とか誤爆が多かったのが残念かな〜。信管を鋭敏に調整したのがいけなかったのかなぁ?」
「もう少し硬くするよう伝えておきます。」
「わかった! ありがとう!」
三川はそのままガダルカナルへ前進と指示しようとした時、確かにその報告は入った。
「新たな敵艦隊発見!! 重巡4! 駆逐艦多数!!」
これはリーフコール大佐率いる北方警戒隊である。
「長官、いかがなさいますか!?」
「もちろん! 邪魔するなら蹴散らしちゃえ!!」
戦いはまだ終わりそうになかった。
Fin




