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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第84話再起する狂気

窓が木の板で塞がれている店。

そこで、俺達は酒を飲み交わしていた。

俺は大きく一口飲み、続いてニコが俺に合わせて大きな器に入った酒を飲む。


「そういえば、玄道とか……ガリカルだっけか。アイツらはどうした」


「ん?玄道は見逃したよ。ルシアンに勝てたのはほぼアイツのおかげだからさ」


「ガリカルは……さあ?カイの件で忙しかったから、静から知らない間に対処したんじゃねぇの?」


「てか、俺が持ってた剣何処行った。まさか消えたとかじゃねぇだろうな」


「あー、あの剣は静が持ってる。宴が終わったら返してくれんだろ」


ニコは大きく一口、器に入った酒を飲む。


「おいおい、そんな飲んだらぶっ倒れっぞ」


「カイ、 俺結構酒強いんだぜ?」


俺は酒を一口飲み、話題を変えた。


「ハンから聞いた話なんだが、名無しの帝を陥れる事が出来る証拠を掴んだらしいな」


「ああ、名無しの帝とカイを拐ったヤツらの取引の履歴がある。でも、それだけじゃ戦うのは無理だ」


「この話は明日話そうと思ってたんだが……ここから数十キロにある王国に向かう」


「その王国はカイ、お前を信仰している王国だ」


「信仰?」


「アルダさんからも聞いた事があるだろ?今までに帝率いる権力者達に表には出せない出来事、五帝が世界を支配しているのに理不尽を感じている者」


「みんながカイを信仰してるんだ」


それを聞いた俺は疑問に思う。


「俺は人殺しなのにな」


「そんな事言うなよ、カイは立派なヤツだぞ?」


「そうだといいんだけどな……」


俺は目の前に座っているアルダと静と一緒に飲んでいるハンを見つめる。

ハンは今、俺を危険視してる。

確かに理由は分かる。


貪食者。

魔法帝殺し。

おまけに治癒スキルなしで手を治しちまった。


今でも感じてるこの違和感。


俺は、確実に変わっている。


「カイ、急に黙ってどうした?酔った?」


「いや、考え事してただけだ」


その違和感を消し去るように俺は酒を一気に飲み干し、お代わりを頼んだ。


「なあニコ」


ニコは誰が出すのかわからないが、高そうな酒をグラスに注ぎ、上品に飲む。


「なんだ?」


「名無しの帝は、法で倒せるかもしれないんだよな」


「まあ……そうだな」


「もし無理だったら?」


すると黙って聞いていたハンが割り込んで言う。


「お前、それ本気に言ってんのか?」


「もしもの話だ」


「………確かに、考えた事もねぇな」


少しの間を空けて、俺が口を開く前にニコは俺の目を見つめた。


「俺は殺す」


「もう誰も失いたくない」


「カイ……それって―――」


「最終手段だ」


口ではああ言ったが、本心では違う。

復讐の邪魔をする者は誰でも構わず殺す。

俺は否定しつつも、そう感じていた。


酒を一気に飲み干す。

それでも、酔いはやって来ない。



----



「切り口の縫合、完了しました」


清潔な手術室は、一気に緊張から和らいだ雰囲気に包まれた。


「43時間か、予定よりも早い」


ゼルヴァインは窓越しから様子を見る。


「彼の肉体が強いからでしょうね。彼の意識が覚めましたら連絡しましょうか?」


「そうしてくれ」


ゼルヴァインが背を向けた、その時——

手術台の上の男の指が、わずかに動いた。

誰も気付かないほどの、小さな動き。


だが確かに——


瞼が、ゆっくりと開いた。

男はぼやけた視界の中で、自分の手を見つめる。


「これは……いい」


その口元が、歪む。


「カイ……」


しばらくして夜。

日は完全に落ち、ゼルヴァインは関係者からの連絡を得て、再び病棟へと訪れていた。


「状態は?」


ゼルヴァインが病室に向かう間、着いてくる医師に聞く。


「数ヶ月の間、下半身は脊椎と神経のダメージによって麻痺していましたが、今回の手術を得て完治しました」


「もうリハビリを始めていて、戦闘出来るようになるまで間もない状態です」


「魔道具の後遺症は?」


「問題は一つもありません」


ゼルヴァインは地下へと降りていき、薄暗い廊下を歩き、秘密裏に作られた病室へと入る。


「目が覚めたか」


病室のベッドに腰掛けている男は、手に持っている金貨で手遊びをしていた。


「気分はどうだ」


「物凄くいい、それでお前は何しに来た」


「貴様に計画の内容を伝えていない。今日はそれを伝えに来た」


ゼルヴァインは男に近づき、後ろにいる医師にジェスチャーをして病室から追い出した。


「カイは魔法帝殺害の容疑があり、本人も認めている。だからこそ、彼の暗殺を君に頼みたい」


「喜んで」


そういう男に不気味な雰囲気を感じつつ、ゼルヴァインは続けた。


「彼は現在、イーネェヴィア大陸のスコデアラにいる。彼らの一味は私の犯罪履歴を保有しており、可能であればカイを含めたその仲間も殺して証拠を隠滅してほしい」


「わかった」


「最後に一つ。この計画は口外するな」


しばらくゼルヴァインは資料を見ながら立ち尽くし、男のコイン遊びの音だけが響いた。

そして、ゼルヴァインが最後の資料を見た瞬間、ページを捲る音が止む。


「精神的な問題……」


幼少期の生い立ち。

極めて危険な欲求。

そして、感情移入の欠如。


「この件について、計画は安全に遂行してもらいたい」


「君は肉体のリハビリ等を行いながら、カウンセリングを行ってもらう」


「計画に支障はきたさない程度にする。そこは安心したまえ」


ゼルヴァインは資料を閉じ、後ろを振り向いて病室の扉に手を掛けた瞬間―――


ドアノブが手に触れる前に、弾き飛ばされたコインがドアノブにめり込んでいた。


「何のつもりだ」


「それはこっちのセリフだ」


男は手すりを掴みながら立ち上がり、やがてゆっくりと歩きながらゼルヴァインの目の前に現れる。


「俺はカイを殺したいから付き合ってるだけだ」


「勘違いすんなよ。もし、これがしょうもない罠や、嘘……それか裏切る予定なら――」


「カイが死ぬよりも先にお前を殺す」


「重々承知している」


ゼルヴァインはドアノブにめり込んだ変形したコインを男に渡し、病室から出て行った。


男は自分のベッドへと戻り、ゆっくり腰を下ろしてから寝転がる。

隣に置いてある動物の雑誌を見ながら、男は眠りに着いた。


そうして夜が明け、男はリハビリとして専用の魔道具に乗り、100メートルを目安にジョギングをしていた。


男は耳に旋律環という道具を付け、音楽を楽しみながら汗を垂らす。

太陽の光、そして脚の動き。


男は、久しぶりの高揚感を覚えていた。


「わー!凄いですねー!」


すると様子を見に来た看護師が、男の横に現れる。

白く長い髪に、瞳はまるで青く宝石。

男は旋律環を外し、笑顔を作って横を向いた。


「私、新人のクララです。あなたの担当になりました」


元気よく言うクララに、男は思わず機械を止める。


「あのー、すみません。お名前が確認取れてなくて……お伺いしても?」


「ああ、もちろん」


男はタオルを手に取り、汗を拭きながら優しく言った。


「"ベンジャミン"」


「ベンジャミンさんですね!よろしくお願いいたします!」


「よろしく、クララ」


その表情は、一見すれば優しい男性に見える。

だが、底知れない裏を、クララは密かに感じていた。

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