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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第80話日の出

「な、なんだオメェ!!」


監獄から少し離れた森の中。

黒装束を着た集団が乗っている馬車を襲い、男の背後に回って短剣を首に突き刺した。


「一体何処から……」


荷台に乗っていたもう一人の男は槌を持って立ち上がり、槌を振り下ろす。

振り下ろされる寸前、その腕を斬り飛ばす。

血が噴き出し、男が息を吸い込む——その喉を切り裂いた。


そして運転している男の首に短剣を当てる。


「今すぐ止めろ!」


「お、俺は力帝の……!」


短剣を喉の血管に当て、引き抜いた。

男が倒れ始めるとすぐに馬の手綱を掴み、馬車をゆっくり止めた。


警備隊が来る前にここから逃げなくては……


片方に繋がれている縄を外し、手綱を短く調整する。


「お前は逃げろ」


片方の馬の尻を叩いて逃がし、残った馬に跨がった。

手綱で馬を叩き、森の中を馬で駆け抜ける。

すると視界の右端に魔道具の灯りが見えた。


「離せ!!クソ!!」


近い……外すな、この道なら来ないはずだ。


警備隊は――山道に目もくれず、別の道へと流れていった。


時間がない……ここで止まれば終わる。


やがて俺は来た道を戻り、力帝やその他囚人が倒れている現場を通過して、更に奥へと進んで行った。


森は寒く、走る度に肌が突き刺されるような感覚が走る。

指と足の感覚は無くなるが、それでも真っ直ぐ山道をただ走り続けた。


そうして森を抜けた瞬間、目の前には真っ赤に染まる太陽が昇っていた。


「……なんだよ、ここ」


日の光りで照らされたその大地は、真っ白な雪で覆われていて、地平線の果てまで何も建物はなかった。


何もない。

——だから、奪うしかない。



----



凍てつく大地。

植物すら生えない大地では、魔物はおらず、かつていたであろう痕跡しかない。


そして猛吹雪だけが吹き荒れる天にまで届きそうな巨大な山に、黒く聳え立つ大きな城があった。


「ゼルヴァイン様、ご報告があります」


数多の貴族や著名人を招き入れてきた大広間で、上から見下ろす男に使い魔は膝を着きながら言う。


「なんだ、言ってみろ」


「昨夜、ここ、イーネェヴィア大陸の監獄で大勢を巻き込んだ脱獄が行われました」


「そこで元帝や他の悪党の大多数を再び収監したのですが……」


ゼルヴァインは使い魔を睨み付ける。

——ただそれだけで、空気が軋んだ。

使い魔は全身が焼かれているような感覚に陥った。


「はあっ……!はあっ……!」


使い魔は息が出来ず、手足がおかしなほど震える。


「つまり――」


「何が言いたい」


「ぜ、ゼルヴァイン様が御時間を掛けて……投獄させたカイだけが―――」


「見つかりません」


しばらくの沈黙の後。


ゼルヴァインは口を開いた。


「必ず見つけ出せ」


「逃げたと思うな」


「あれは——まだ、私の中にある」



----



猛吹雪が吹き荒れる中、倒れた馬を引きずりながら木の小屋へと入った。


……寒い、なんてもんじゃねぇ。


小屋の中にあった適当な服と警備隊の装備を装着する。


俺は短剣を生成し、死んで間もない馬の腹を切り開き、まだ温もりの残る臓物に手を突っ込む。

ぬるりとした感触が腕に絡みつく。


「まさかこんな気持ちの悪い知識が役立つなんてな……」


小部屋の中でも呼吸をすれば、肺が切り裂かれるような激痛が走る。


―――それでも、止まっている場合じゃない。


棚に置いてあるジャガイモを手に取り齧る。

硬くてマズく、本当に食えたもんじゃない。

だが何もないよりマシ……そう思いながらジャガイモを齧り続け、やがて眠気が襲ってきた。


……少しだけだ……


考えていると勝手に瞼が落ちていき、眠りについた。


「ったくよー、アイツマジで何処にいるんだよ」


木の小屋の外から女の声がした。

その雪を踏み締める足音は、徐々にこちらに向かって来ている。


「一旦、ソリで監獄辺りを探そう。すぐ見つかるはずだ」


「ほんとかー?もしかして猛吹雪でアイツ埋もれてんじゃねぇーの?」


……この声、どこかで——


「そう簡単に死ぬかよ」


もう一人は男か?それに足音が重い。

――食料、持ってるかもしれねぇな。


眠気で重たい体を起こし、小屋の扉から姿が見えないように隠れる。

次第に足音は近づき、ガチャッと扉を開ける音がした。


「うわっ、馬が死んで……」


男の声が小屋に響く。


その瞬間――


俺は短剣を生成して男の首に腕を回して捕らえ、更に喉元に刃を当てた。


そして、声を上げようとした瞬間―――


「ハン?なんでお前らここにいる」


「ちょ、アルダ!助けろ!」


「ま、待って……!」


アルダは拘束されているハンを見て焦る様子もなく——ただ、笑っていた。


「お前らなにしてんだよ?」


「カイ……?早く拘束解けよ……!」


「……ああ、悪いな」


ハンの拘束を解き、ハンは首を抑えて痛がるフリをする。


「お前らには聞きたい事が山程ある」


「だろうな。こっから数キロ離れた所に町があるから、そこでゆっくり話そう」


俺は死んだ馬を外まで運び、アルダとハンはソリを掴んで外まで引き摺った。


「俺が運転する。アルダとカイは後ろに乗っとけ」


ハンはソリに乗り、手から糸を出す。

繊細に糸を操り始め、糸が蠢く。

次の瞬間、それは手綱と——馬の形を作っていた。


「ハッ!」


ハンは馬を叩き、俺とアルダを連れて走り出した。


地獄のようだった猛吹雪は止んでおり、以前と比べれば温かく感じる程に雪は止んでいた。


会話はなく、ただただ美しい景色が流れていると、アルダが俺の肩を優しく叩いた。


「なんだ」


「カイ、なにか聞きたいことない?」


「そうだな……監獄を脱獄してこうしている俺は、今どんな立場なんだ」


「そうだね……」


アルダは顎に手を当ててしばらく考えた。


「ここ、イーネェヴィア大陸じゃ、カイを知ってる人は私達と――」


「"名無しの帝"。そう呼ばれてる人だけかな」


名無しの帝?

最後の帝が、ここにいるのか?


「だから捕まることも―――」


「名無しの帝について教えてくれ」


俺は無意識に身を乗り出していた。


「え、いや、情報はソイツの名前だけしか知らないから……なんも教えられない」


俺は体勢を戻し、後ろを向いて景色を見始めた。


「なあカイ?アルダにとっては久しぶりの再会なんだからさ。少しは会話してやれよ」


「……そう、だな」


アルダを見ると明らかに不機嫌で、仕方なく俺は話を聞く態度を取った。


「なあ、カイ。お前が一番気になること、言ってあげようか」


「どんな内容なんだ?」


その時、アルダから聞こえた言葉は、俺に衝撃を与えた。


「ニコや静、玄道さんだっけ?」


「私達、カイを助けるためにここまで来たんだよ」

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