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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第77話一度きりの賭け

「死ねぇ!!ルシアンッ!!!」


胸が斬られていても、意識は何故かハッキリとしている。


これが底力ってヤツか?だったらいいけどよ!


ニコは全勢力を注ぎ込み、ルシアンは内功で防御に出るしかなかった。

紙が鋼鉄を切れないように、札も内功を扱うルシアンに傷を付けれない。


だが――


札の1枚が、ルシアンの手の小指を切り落とした。


「ッ!!!」


ルシアンの表情が僅かに歪む。


――初めてだ!

コイツが、“効いた”と分かる反応を見せたのは。


「そのまま全身切り刻んだらァ!!」


これ以上チマチマ削っていく訳にはいかねぇ!

なんとかして、あの刻印にダメージを入れないと!!


その時、ニコの胸の切り傷から血がドバッと流れ始めた。


この傷じゃ、殴れもしねぇっての!!


どうする?


考えろ……


考えろ!!!


ニコは札数枚を操り、自分の切り傷に張って無理矢理傷口を閉じた。


「……!!」


興奮が切れそうな位の激痛が走るが問題ない。

もう一度、弱点の刻印を当てるしかない。

ニコは空中を飛び、短剣を握り締める。

防御を取るしかないルシアンに向かって短剣を突き立てようとするが、ニコはルシアンと対面したことによって恐怖で動けなくなってしまった。


なんで……こんな時に限って……!!


ルシアンと目が合う。

心臓が止まったように感じ、冷や汗が流れ、短剣を握り締める手が震える。


動け……!!!


「やっぱり未熟者みたいだな」


「テメェ…!!」


ニコは覚悟を決め、荒れ狂う札の中を進み、ルシアンへ近づく。


!!


そこで気が付く。

ルシアンは自分の腕で頭を守るように見せかけ、刻印がある胸を守っていた。


周りの札は徐々に破れていき、もっても後30分程度。

だが、それは仮定に過ぎず、いつルシアンがすべての札を破る技を放つかわからない。


「恐ろしいか?僕が」


「だからいつまで経っても足手纏いなんだよ!お前は!!」


ルシアンは胸の前で風の力を放ち、札は次々と吹き飛んでいく。


ニコは手と足が震え、頭が真っ白になり、その場で何も出来なくなってしまった。


「ニコォ!!」


その掛け声と共に、下から刀が投げ飛ばされた。

刀はルシアンの腕に深く食い込み、血がドバドバと吹き出し始めた。


「静ァ!!!」


ルシアンは口を大きく明け、怒号を撒き散らす。


「ニコ!早く弱点に当てろ!」


それを聞いた真っ白の頭に、静のその言葉だけが入った。

ニコは刀を握り締め、思いっきり引いた。


「クソがァ!!」


ルシアンは内功を解き、全身を切り刻まれながら最高火力を出せる火の力をただぶつけようと溜め始めた。


今しかない!


ニコは慣れない刀を胸に向けて振り下ろす。


「猿が!かかったな!!」


ルシアンは火と見せかけ、カウンターとしてニコの顔に向けて拳を放った。


――が、ルシアンの手首は切り落とされた。


「なッ――!」


目の前には血に濡れた複数枚の札が交差しており、次第に千切れて落ちていく。


僕は…あんなのに切り落とされたのか……?


そして刀は、刻印が刻まれたルシアンの胸を貫いた。


「がはっ!!」


胸から刀を引き抜くと、何度も何度も刀を振るって切り傷を与える。


「―――!!!」


声にならない激痛が走り、ニコはルシアンと共に地面に落下した。


手応えがあった。

間違いなく――届いた。


砂埃が舞い上がり、静は怪我した脚を引きずりながらニコに近づく。


「ッ!!」


そこにあったのは、ミイラのようになっている魔法帝に跨がるニコがいた。


そして。


ニコの腹は、抉られ、内蔵が見えていた。


「ニコ――」


静は何者かに殴り飛ばされ、木に衝突した。

揺れる視界の中、歩いてくるルシアンを見つめる。


「雑種にしてはよくやってくれたよ。良い経験だった」


治癒スキルで傷をすべて完治させている。

その影響で魔力は底を尽き掛けていた。


「僕はヴァンパイアだ。君の血を貰って 、魔力を回復することにするよ」


ルシアンは屈み、静の首元に口を近づける。


「光栄だと思え、僕の魔力となることに……」


砂埃が舞い上がる。

――その時だった。


「おい」


ルシアンは聞き覚えのある声に、無意識に振り返った。


「カイ!」


ルシアンは喜ばしい表情と、イラつきの表情を浮かべている。

するとルシアンはニコがいないことに気が付く。


後ろを振り返ると、静もいない。


「玄道…!あの野郎!!」


「よそ見してる場合か?」


俺は手に魔力を集中させ、魔剣を出した。

精々使える時間は1分。

無駄には出来ない。


俺はルシアンに向けて剣を振るい、ルシアンは咄嗟に躱す。

刃は木を焼き斬り、木は燃えながら倒れていった。


「そんな物持っていたのか?やはり凄いな」


ルシアンは両手を合わせ、姿勢を低くする。


血界支配(ブラッドドミニオン)


小さな小さな血の領域が出現する。


「なにしてんだ」


「見てたら分かるさ」


ルシアンは自分の血液を動かし、心肺機能を底上げして身体能力を上げる。

そして、ヴァンパイアの特性を活かし、自分の肉体の形を変えていく。


筋肉が膨張し、牙は剥き出しに。

その姿は、正に悪魔であった。


目の前に拳が迫る。


速いッ!!


咄嗟に剣でガードして受け止めるが、難なく吹き飛ばされる。


魔法帝の力を失ったが、ルシアンのスキルまでは失ってはいない。

それに、この腕力……一筋縄じゃ行かなそうだ。


ルシアンは木を引きちぎり、砲丸のように投げ始める。


「死ねぇ!カイ!!」


飛んでくる木を避けながら俺はルシアンに近づく。

剣を握り締め、跳び上がり、振り下ろす。


「知ってたか」


ルシアンは呟く。


「魔剣はな、魔力総量で所有者を選ぶ」


ルシアンは手を開くと、俺の魔剣は手から離れ、ルシアンの手の中に収まり、魔剣を収納した。


「それがなんだ」


ルシアンは剣を振り下ろし、俺は短剣を生成してルシアンの目に向けて投げ飛ばす。


「うっ!!」


ルシアンの目に突き刺さり、剣は軌道をズレて俺の真横を通過した。

そのまま俺はルシアンの頭を着地し、突き刺さった短剣を掴んで引き抜き、顔をめった刺しにした。


流れに乗って短剣を首に突き刺そうとするが、全く通らず短剣は折れてしまう。


「もう治せないだろ!その魔力量じゃあな!」


顔しか通らねぇ!!

ならッ!!!


俺はルシアンに乗ったまま、首に腕を回し、絞め始めた。


「そんな不細工な真似で死ぬとでも!?」


ルシアンは俺に向けて殴り続ける。

岩石を殴るような轟音が鳴り響く。


「そんなんで離すと思ってんのかよ……」


腕の絞め付けを更に強くして、首を圧迫し始める。


「が、ガハッ……」


ルシアンは倒れ、上体を起こして何度も背中を地面に振り落とす。


離すな……!離すな……!!


体が痛む度に力を強め、ルシアンは暴走した牛のように木に突撃する。

そのまま何百本と衝突を繰り返すが、一向に離そうとしないカイにルシアンは焦りを感じ始める。


俺は逆に打撃によって頭や体に切り傷ができ、段々と傷が広がり裂け始めて行く。


そしてルシアンは魔剣を出現させ、自分の首に向ける。


「おいおい!斬るつもりか!?息も出来ないんじゃ、剣も振れねぇだろ!」


次第に魔剣を持っていた剣を離し、地面に倒れる。

ルシアンの悪魔のような姿はやがて、元の姿となり、俺の締める力は強くなる。


この僕が……死ぬ…?


「苦しいだろ?ヴァンパイアは人と比べて死ににくいらしいからな」


ルシアンは爪で俺の腕を抉る。

俺はルシアンの首を締めたまま立ち上がり、ルシアンを地面に叩きつけ、馬乗りになって両手で首を絞める。


ルシアンは底力を見せ、俺の腹を殴りに殴る。


「ごばっ!!」


血を吹き出し、ルシアンの顔に掛かる。

肋が折れ、胸から飛び出す。


それでも、俺はルシアンの首を絞め続ける。


そしてルシアンの腕は俺の腹を貫いた。


臓物をかきむしられ、抉られる。

視界の暗転が繰り返され、血も勢いを知らないように容赦なく流血する。


呼吸しようとしても、目の前のショックと激痛、道中の打撲で息が吸えない。


やがて呼吸もできなくなった―――


それでも、首を絞め続ける。


ルシアンの力は弱まり、ついに止まった。


「……終わ、った…のか」


ルシアンの動きは止まり、俺は力尽きてルシアンに馬乗りになったまま、意識を失った。

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