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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第75話その一歩が命取り

ザイトライヒは拘束され、ハイビスは獣の拳でザイトライヒを殴り飛ばした。

吹き飛ばされたザイトライヒは建物に激突し、瓦礫に埋もれる。

それと同時に拘束も解かれ、ザイトライヒは瓦礫を退かして外に出た。


「アアア!!!!」


ゼルアークスは跳び上がって剣を振り下ろし、ザイトライヒはギリギリで躱した。

そして距離を取ろうと爆発を発生させようとした瞬間。


ゼルアークスは爆発が起きる寸前、その爆発ごとザイトライヒを斬った。

ザイトライヒの動きが止まる。

腹から溢れた血が地面を染めた。

腹が切り裂かれ、動けば内蔵が出る。


内功の硬度も無視できるこの魔剣は、ザイトライヒにとって弱点になっていた。


「ザイトライヒ!今すぐ支援を……!」


ザイトライヒは腹の傷口に手を突っ込み、爆破させた。

そうして蝕む何かを破壊し、そのまま治癒スキルで治す。


「……やっぱイカれてる」


「そりゃイカれてなかったら英雄になってねぇだろ!!」


「ガアァァァ!!!!」


ザイトライヒはゼルアークスの剣を躱し、爆発を起こしてゼルアークスを吹き飛ばす。

空中で何度も何度も爆破させ、地上じゃないからか爆発は容赦がない。


「き、キサマ……コロシテ――」


地面に落ちて残ったのは肉の塊。


「これが、エイユウか……」


肉塊の中で、かろうじて残った目がザイトライヒを捉える。

そう言葉を残して動きもせず、液体が流れているだけだった。


「そうだそうだ、忘れてた」


「殺すんだったな、お前ら」


ハイビスとダルヌスは構えを取り、瞬きもせずザイトライヒを見つめた。


「……まだやるか?」


ザイトライヒは両手を合わせ、手の内に太陽のように燃え盛る炎を生み出した。

空気が歪み、熱さで周りが焼け近くにある鉄やガラスは溶け始める。


「俺は妨害をする!ハイビスは出来るだけザイトライヒを叩け!」


「わかりました!」


呼吸しただけでも肺が焼けそうな激痛。

それでも――引けるわけがない。


ハイビスは獣のスキルを使い、肉体を巨大な狼へと変身させた。

それと同時にダルヌスは水スキルで自分とハイビスを熱から守り、そして水を使った飛行も可能にした。


「ハアァァ!!!」


ハイビスはザイトライヒに向けて拳を振り下ろし、地面に大穴が空いた。

そして隙なく左拳を薙ぎ払い、ザイトライヒの頬を掠めた。


何故反撃してこない!?


ザイトライヒは構えを止めず、段々と威力が高めていく。


「流転せし水よ、重きを宿し、全てを圧し潰せ――水牢鉄球(アクアアイアンオーブ)!」


ダルヌスは両手を突き出し、全身を大きく飲み込む程の水の球を発射させた。

ザイトライヒは脚で食い止め、蹴りを繰り出し水の球を破壊した。


そしてザイトライヒは地面を踏ん張り空高く飛行し始めた。


「追いかけるぞ!」


「はい!」


高度な水スキルでの飛行で水飛沫を周りに帯びながら、空中でハイビスは狼の拳でザイトライヒを殴ろうと拳を振るう――が、避けられる。


ハイビスが何度も接近して拳を振ろうとも、ダルヌスが何度も速い水スキルを放っても、本領を発揮したザイトライヒには当たらない。


あの炎の塊…!拳サイズに収められているが、高密度な魔力を感じる!


「喰らえッ!!」


ダルヌスは光速のように速い水を発射し、大技の炎ごとザイトライヒを貫こうとしたが、水は炎に飲まれ消えていった。


「マズいッ……!!」


その隙にハイビスの拳がザイトライヒに迫る。


届くッ!!


するとさっきまで避け続けていたザイトライヒは、急に距離を詰め、接近していたハイビスはテンポがズレてしまい腹に一撃を喰らってしまった。


「ごはっ!!!」


ハイビスの内臓はダメージを負い、殴られた腹は紫色に変色していた。

そのままハイビスは落下していき王国へ、そして気付かぬ間にダルヌスの目の前には脚を振り下ろしていたザイトライヒがいた。


「しまっ――!!」


脚はダルヌスの胸にめり込み、肺を押し潰す。

肋骨にヒビが入り、ダルヌスの同様王国へ落下していった。


「天地は砕け、星は墜ち、全ては我が手に帰す」


「抗う者よ、跪け」


終焉(エクスプローション)


光が、全てを呑み込んだ。

音は――なかった。

一瞬遅れて、世界が砕ける。

王国は跡形もなく消え、砂は熱で溶け、ガラスの大地へと変わっていた。


「やっぱりな」


「"最悪の作戦だ"」



----



「最悪の作戦だな」


静の屋敷。

空いていた和室で作戦会議をしており、玄道が提案した作戦より優れているのが出てこない。


「マジでこれでいくのか?」


「どうやらこれしかないみたいだ」


静は溜め息を吐き、ニコはただ笑う。


「まあ、ほぼ運試しだがやるしかねぇよ」


沈黙が落ちた。

誰も軽口を叩かない。

さっきまでの戦いの光景が、頭から離れなかった。


「……あれ、真正面からやり合うのは無理だな」


玄道がぼそりと呟く。


「当たらねぇし、防げねぇ。しかも一発が致命傷だ」


「分かってる」


短く返す。

分かっているからこそ――この作戦しかない。


「なあカイ」


ニコが笑いながら言う。

だが、その目は一切笑っていない。」


「……外したら、全員死ぬよな?」


「お前は外さねぇよ」


考えるまでもない。

外す未来なんて――最初から考えていない。


「へぇ」


ニコは少しだけ目を細める。


「んじゃ、負けても死んでも俺のせいにすんなよ?」


軽く言ったその一言が、妙に重く響いた。

静は黙ったまま座っている。

膝の上で組んだ手に、わずかに力が入っていた。


「……時間は?」


「もう近い」


玄道が窓の外を見る。


「来るぞ」


その一言で、空気が変わった。

全員が立ち上がる。

逃げ場はない。


やることはただ一つ。


「行くぞ」


誰に言うでもなく、俺はそう言った。

――勝つためじゃない。


――殺すために。

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