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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第72話終わりにするための理由

城の頂上へ向かっている途中、父さんの言った言葉からずっと脳内を駆け巡っている。


"復讐なんか忘れろ"


その言葉がカビのようにしつこく頭に残る。

ザイトライヒにすべてを壊された父が、あんなことを言うなんて思いもしなかった。


「どうすりゃいいんだ……」


自分は復讐すれば、死んでいったみんなの為になると信じていた。

だが、それは壊された。


今、俺は何を信じればいい?


呟いた瞬間――

城の奥から、爆発のような轟音が響いた。

次の瞬間、熱風が廊下を駆け抜ける。


「ッ……!?」


壁に手をつき、体を支える。

ただの魔法じゃない。

“いるだけで殺される”ような、圧倒的な力。


この魔力……まるで――


「ルシアン…一体何考えてんだよ」



----



「なあ玄道」


ニコは空間に閉じ込められてから、五分近く経過していた。


「なんで俺がルシアンを倒すカギなんだ」


障子を背にして座る玄道にニコは言う。


「部下達が戦ってんのを見ながらお前のスキルを見ていた」


「どうやら、無条件で弱点を付与できるみたいだな」


「無条件っつっても、個人に一つで正確に当てなきゃ意味ねぇぞ」


「お前、その弱点って敵からしたらどんな感じなんだ?」


「どんな感じって……俺の欠陥刻印(シール)は当てれば魔力を乱してスキルを使えにくくするとかだな」


玄道は少しだけ目を細めた。


「それで十分だ」


「は?」


「魔法帝の魔力を完全に止めるのは無理だ」


「だが、一瞬でも“乱せる”なら話は別だ」


ニコは眉をひそめる。


「一瞬って……そんなもんでどうにかなるのかよ」


玄道は立ち上がり、障子に手を当てた。


「なるさ」


「強すぎる力ってのはな――」


「ほんの少し歪むだけで、崩れる」


その言葉に、ニコの表情が変わる。


「……つまり、俺が“隙”を作るってことか」


「そうだ」


「その一瞬で、カイが叩く」


空気が張り詰めたと思いきや、玄道は目を見開く。


「魔法帝が場所を移したみたいだ」


玄道は立ち上がり、腕を突き出して何処かに繋がる障子を出現させた。


「他の仲間と合流しよう」


「これ以上、誰も死なせたくない」


玄道は障子を開け、真っ白な光に包まれた。

その玄道の背を見て、ニコは呟く。


「ああ、やってやろうぜ」


「この戦いを終わらせに」


そうしてニコは障子を潜り、光に包まれた。


眩しッ……


目を開けると罠があった階段が目の前にあった。

敵の声でうるさかった城は不気味に静まり返っている。


「まずは君達のリーダーであるカイを見つけよう」


「なら、城の入り口まで戻ろう。父親と戦ってるはずだ」


ニコは来た道を戻ろうと歩き出す。


「待て、父親?」


「そうだ。お前らの騎士団の団長はカイの父親なんだよ。知らなかったのか?」


「初耳だ」


玄道は何か言いたそうな表情をしており、ニコはそれに気付いた。


「どうしたんだ?」


「……そのカイの父親。生きてはないぞ」


「なんで」


「魔法帝が立ち去るまで俺が籠ってた理由を忘れたか?今頃、カイの親父――団長さんは……」


「さっきの儀式で、完全に持ってかれた」


「そんなのカイに聞いてみなきゃわかんねぇだろ」


ニコは急いで城を降りて行き、入り口付近の廊下にカイはいた。


「カイ!」


カイが振り向いた瞬間、ニコは息が詰まった。

さきほどまでと違う。

――顔が、死んでいる。


「……お前、大丈夫かよ」


ニコはカイの側に駆けつけ、遅れて玄道が歩いてきた。


「ニコ、アルヴェリウスは何処だ。お前と一緒だったろ」


「それが……玄道に捕まってからはぐれちゃって」


ニコから目線を外すと、ニコの後ろに玄道がいた。

俺はニコを退かし、玄道に掴み拳を振り上げた。


「おいおいおい!俺は味方だ!」


「魔法帝の手下の言葉を信じろってか?」


「裏切ったに決まってんだろ!」


「証拠は?」


玄道の言葉に、一瞬詰まる。

静寂が落ちた。


「……魔法帝は」


玄道は、ゆっくりと口を開く。


「俺の妻と娘を殺した」


「……それで、裏切ったってか」


ニコは感じる。

怒りじゃなく、押し殺してる音だ。


「……時間がねぇ、とりあえず話は後だ」


「今は魔法帝を殺す」


その一言で、空気が変わった。


「それで、アルヴェリウスは何処だ?」


「多分ルシアンを探しに行ったから……」


「あっ、ルシアンが魔法帝を利用してるのも話さなくちゃいけないな」


「いやいい、大体予想はつく。アルヴェリウスを探しに一旦魔法帝がいた城の最上階に行こう」


三人は城の最上階へと向かう。

向かうにつれて禍々しい魔力は濃くなり、最上階に辿り着くと、その禍々しい魔力をすべて吸い取ったのか嫌な魔力の気配は一つもない。


「やはり魔法帝は場所を移したみたいだな」


玄道が呟く。


だが、最上階で何かがあったのはわかった。

辺り一面が焼き払われ、儀式が終わったのを皮肉に青空が綺麗に広がっている。


「いたぞ」


ニコが屈んで見ている先には、丸焦げで肉体がほとんど崩れているアルヴェリウスがいた。


ニコは焦げた腕に触れかけて――止めた。


「……チッ」


顔を歪める。

見なくても分かる。

もう、何も残っていない。


「ルシアン…同胞を殺してまで何がしたかったんだ?」


ニコはアルヴェリウスだと確認すると立ち上がり、上がってきた階段へ向かう。


「聞く価値もないだろ」


俺はそう言い、その場を後にした。

城を出ると門の側には静が立っていた。


表情は暗く、自責で押し潰されそうな顔だった。


静は民間人を集めていたはずだった。

だが――その姿は、どこにもない。


それが答えだろう。


「静、一旦戻るぞ。ルシアンを殺すために作戦を練る」


俺が静の通り際に言うと、静は感情を一気に露にさせた。


「私は何も出来なかった!!」


「何も…成し遂げられなかった……!」


「そりゃみんな同じだ」


一瞬だけ、間を置いて言う。


「……だからこそ、終わらせるしかねぇだろ」


「ルシアンを殺せば――終わりにできる」


静は俯いたまま、拳を握りしめる。

震えている。


「……強いな」


絞り出すように言った。

その目は、もう折れていなかった。


強い……か。

失いすぎて、俺には強いも何もない。


――ただ、終わらせるだけだ。

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