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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第67話切り捨てられた騎士

ガリカルに怯まず、素早く距離を詰める。


この女は対した事はない!さっさと片付けて、メリウスを助けないと……!


ガリカルのスキル、衝撃圧縮(インパクトコア)


触れた瞬間、内部に衝撃を圧縮して爆ぜさせる。

見た目は普通の拳、だからこそ、誰も警戒しない。


そして距離を縮められたニコは再び、腹に鉄拳を食らった。


「ぐっ……!」


コイツ…!すっげぇ拳が重い!

だけど……!


ニコは内功で肉体を補強しており、ダメージはそれほど多くはない。

ニコは衝撃で廊下を滑りながらも、倒れず立っていた。


「今の食らって立ってるとは……相当内功が上手いみたいだね」


「やっぱそう思うか?だけどな、俺こう見えて……」


ニコはニヤりと笑った。


「武闘派じゃねぇんだわ」


散り散りになっていた札が、ガリカルの背後を襲い、切り裂く。

一発の斬撃は弱く、指を紙で切ってしまった程度。

だが、それを何十発をも背中に食らい、あっという間にズタボロになっていた。


「あんま消費したくねぇからさっさと倒れろよ?」


「ほざくな、女ァ!」


ガリカルは足と床の間に衝撃を与え、爆音と共に勢いに乗ってニコに抱き付く。


「ぶっ飛べ!」


ガリカルはニコの顔に向けて手をかざし、衝撃を放った。


「ッ……!!」


ニコは屋敷の屋根を貫通し、屋敷外の雑木林に落ちた。

脳震盪で立てず、視界は二重に、内功は一瞬途切れてしまっていた。


それと同時に、内功がなければどうなっていただろうと実感し、高揚していた。


欠陥刻印(シール)


上空から迫るガリカルに、一枚の札が向かい、横胸を切りつけた。

大したことはない。

欠陥刻印を食らった者は、誰しもがそう思う。


その瞬間、耳に響く高音と共に切りつけられた箇所に、赤く光る刻印が浮かび上がった。


「な、なんだ!これは!?」


ガリカルの頭には、爆発や抉られるといった攻撃が浮かぶが、着地するまでの間何も起こらない。


「び、ビビらせやがって」


ガリカルはもうすぐ目の前にいるニコに視点を合わせると、ニコは大量の札をガリカルの顔に放つ。


咄嗟にガリカルはガードするが、札は羽根のように優しい。


これは……目眩ましか!


ガリカルは衝撃を放ち、札を吹き飛ばした。

ニコは背後から殴り掛かってきていて、ガリカルは内功で肉体を強化する。


だが、それが間違いだった。


ニコの拳は、ガリカルの横胸の傷口に赤く光る刻印に、深くめり込む。


「アアァァ!!!」


欠陥刻印は1人に付き1つまでの強制的な弱点付与。

ここ、東の地にて、初めての効果を発揮する。


――内功を無視した攻撃。


ガリカルは強烈な打撃に加え、魔力の乱れが起きる。


ここは一度退かなくては……!


距離を取ろうと衝撃を発生させようとするが、魔力が上手く使えないせいでスキルが暴発する。


「マズい……!」


ガリカルは無理やり衝撃を練り上げる。

だが圧縮は歪み、自らの横胸を内側から軋ませた。

衝撃はガリカルの内側に発生し、肋が折れ、肉を突き出して骨が露出する。


ガリカルは立ったまま失神し、ゆっくり寝かせ、ニコはしかめっ面をしながら欠陥刻印がある傷口に札を貼り、地道ながらも治癒をしてあげる。


「……肺には奇跡的に刺さってない、よかったよかった」


一向、玄道とメリウスは魔法帝の命令の元、屋敷から撤退し、静の追撃を避けながら港町を出ていた。


後に静やニコ達は屋敷に合流し、俺が着いた頃には血の匂いだけが残っていた。


屋敷の奥の一室。

縄と札で拘束されたガリカルは、まだ意識を取り戻していない。


横胸の刻印は淡く赤く脈打っている。

俺はそれを見下ろした。


「……殺さないのか?」


俺の問いに、ニコは肩をすくめる。


「殺したら情報が消えるだろ」


静が冷静に続ける。


「魔法帝直属の守護騎士団副格。何かしらの核心は握っているはずだ」


しばらくして、ガリカルが咳き込み、目を開けた。

状況を理解した瞬間、歯を食いしばる。


「……俺を生かしたのが間違いだ」


俺は椅子を引き、正面に座る。


「それはどうかな」


沈黙が続き重い空気になる。

だがガリカルは笑った。


「どうせ聞きたいのは魔法帝の居場所だろ?」


ニコが札を一枚、刻印の上に押し当てると、赤い光が強まる。

ガリカルの額に汗が滲む。


「勘違いするな。俺は拷問で口を割るほど安くない」


俺は静かに言う。


「取引をしよう」


一瞬、目が揺れる。


「魔法帝はお前を助けに来ない」


「……」


「むしろ、お前が捕まることも計算の内だ」


空気が変わる。

ガリカルの表情が、ほんのわずかに硬直した。


「知ってるさ、そんなの。魔法帝は俺を見捨てるが、守護騎士団のみんなは違う」


「俺を、絶対助けてくれる」


「それはないな」


否定をすると、ガリカルは痛みを我慢しながら怒りの表情を向けた。


「俺達騎士団の何が分かる!」


「助けに来ると言ったな」


「ああ!」


「天見時雨、そいつは俺が殺した。お前という幹部が捕まってる以上、守護騎士団は下手に出れないだろう」


ガリカルは徐々に自信を失くし、床をうつむき始めた。


「あの人が死ぬはずない……一度も攻撃を食らったことなんかないんだ――」


「嘘をつくな!!」


部屋は静まり返り怒号が部屋を震わせる。

縄が軋み、札がわずかに揺れ、俺は目を逸らさない。


「事実だ」


「ヤツは死んだ。俺の前でな」


ガリカルの呼吸が荒くなる。


「……証拠は」


「ない」


「だが、お前の反応が証明している」


するとニコが小さく舌打ちする。


「なあガリカル。直属なら知ってるはずだ」


それに静が続ける。


「魔法帝は“感情で動く者”を嫌う」


その言葉に、ガリカルの肩がわずかに震え、俺は畳み掛けた。


「お前は感情で動き、仲間を信じた」


「だが命令を優先しなかった」


ガリカルの視線が揺れる。


「……違う」


「違わない、魔法帝は駒を使う」


「だが、お前は“仲間”を守ろうとした」


「だから切られた」


長い、長い沈黙。

やがてガリカルは低く笑った。


「……はは」


「なるほどな」


顔を上げる。

その目から怒りは消えていた。

代わりにあったのは、理解だ。


「魔法帝は東の本土、天暁(てんぎょう)にいる」


部屋の空気が張り詰め、ガリカルは続ける。


「だが忠告してやる」


ガリカルは俺を真っ直ぐ見る。


「助けに来る奴はいない」


「なぜなら」


わずかに息を吐く。


「魔法帝は今、“守護騎士団を切り捨てる儀式”を始めている」


ニコの目が細くなる。


「何の儀式だ」


ガリカルは薄く笑った。


「次の器を探してんだよ。守護騎士団の中の誰かが器になる」


その言葉に、俺は父の顔が思い浮かんだ。


「器になれば…その器の自我はどうなる」


「さあな、消えるんだろ」


ガリカルは俺の表情を読み取り、口角を上げて言った。


「お前、試されてんだな」


「魔法帝様に」

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