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転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
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第65話五秒間の未来

東の本土、天暁(てんぎょう)

大きな城があり、高い壁で守られ、城下町が盛んである。


外交もこの場で行われており、他の地を繋ぐ唯一の場所――

鎖国をしていたこの東の地だが、外交的になったのには理由がある


その城にいる魔法帝は、カイ達を監視していた。


老けた東洋人の顔に、長い黒髪。

水晶玉を覗く魔法帝は、静の隣に座っているカイを見つめる。


「鬼の残穢……」


日の光を遮断したその部屋にいる魔法帝は、端から見れば妖怪のようだった。


襖を叩き、守護騎士団の副団長が魔法帝に顔を出した。


「魔法帝様、我々にご用とは?」


「来たか、"鷹宮玄道"」


「鬼退治と聞きましたが……それはナルさんに任せたのでは?」


魔法帝は鷹宮を睨み付け、鷹宮は自然と冷や汗が出てくる。


「昇格の機会を逃すとはな、鷹宮玄道」


魔法帝は手に青い電撃を纏わせ、暗黒のこの部屋を眩しく照らした。


「も、申し訳ございません!その任務、申し受けます!」


魔法帝は鼻で笑い、再び水晶玉でカイを見つめる。


「あの力は…また歴史を繰り返す」


「……鬼は東雲静(しののめしずか)という、女の屋敷にいる」


「あの東特殊警備隊隊長か…仲間を皆殺しにしたのに、まだ懲りていないのか」


魔法帝は水晶玉に人差し指を当て、魔力を流しルシアンを見つけた。


「吸血鬼は殺すなよ、必ず私の元に連れてこい」


「承知しました。では、守護騎士団を連れて向かいます」


魔法帝は振り向きもしないまま、副団長に向けて手を払い、風を発生させて襖を閉めた。


俺が出世したいからって無茶振りさせやがって……


「やっぱ苦手……アイツ」


真っ黒な鳴らない笛を吹き、玄道は階段を降りる。

魔法帝の場所から離れると、数百人の兵士が稽古している大広場を横切る。


常に緊張が走り、広場の石畳には血抜き用の溝がある。

失敗即ち死を意味する。


「お前ら!腰が入ってないぞ!」


『はいッ!!』


玄道が向かう先は、守護騎士団達が集まる武殿。

そこは、武を崇め己を強くする場――として使われているが、実際には意味はなく、守護騎士団の隠れ基地として使われている。


「アイツら集まってっかな…」


祀られている仏像の足元には、乾いた血が黒くこびりついている。

参拝者などいない。ここは祈る場所ではない。

“処理する”場所だ。


像の手を捻ると隠し道を開き、先にある道は松明のような簡易魔道具で照らされている。


その先は小部屋では、1個のランタンだけが頼りだった。


「副団長。新しい任務ってなに?」


下駄を履いた戦装束を着ている青年が、副団長に言う。


「肩の力抜け。死ぬときはどうせ一瞬だ」


「今回の相手は鬼だ。しかも――魔法帝が恐れた鬼だ」



----



「静、どうかしたか」


静は晴天を見ている。

その静の表情は何か動じているような顔をしていた。


「何かあったか」


「カイ!衝撃に備えろ――!」


静が刀に手をそえた瞬間、爆風と凄まじい音と共に何かが降り注いだ。


視界を塞ぐ砂埃はやがて消え去り、降りてきた者が姿を現す。


「久しぶりやな、静」


そこに現れたのは、静と同じような戦装束に下駄を履いた青年。

若いといえど、その立ち姿からどれ程"異質"な存在か分かる。


「気を付けろ、カイ。彼のスキルは――」


静はコイツと知り合いなのか?


そんな疑問も言い出せず、割り込んで男が話す。


「待て待て、それ俺に不利過ぎん?」


ニヤりと男は笑い、俺を見つめた。


「……つまり、俺のスキルを明かせと」


「そうそう、静のスキルは対したことないん知ってるし、なんなら君が一番強いんやから」


俺…いや、俺達や静を知っているという事は、コイツ魔法帝関係か。

ということはコイツは守護騎士団の一員……

魔法帝は貪食を恐れていて、俺を憎んでいる。


「お前、俺のスキル知ってるだろ」


この男は魔法帝から、俺のスキルを聞いてないはずがない。

絶対に。


「え?よう分かったな?まさか、魔法帝が貪食怖いん知ってんの?」


「ああ」


男は納得した表情をし、小声で呟く。


「ってか魔法帝…あの話ほんまやったんや……てっきりボケてんのかと……」


「あっ、勘違いせんといてな。俺、ただ単に魔法帝信じてないから、条件出して本当か聞きたかってん」


男は口元を手で隠すが、笑いを隠しきれてはいない。


「でもほんまに貪食者やとは、驚いたで、ほんまに」


「それで?お前は一体何しに来た」


「そんなん当たり前やん」


男はゆっくりと歩き出し、距離を縮めてくる。


「君を殺しに来たんや」


男は一瞬で消え、俺は咄嗟に防御を構える。


――来ない?

いや、狙いは……!


静の方を見た瞬間、視界の端に男が現れた。


フェイント……!?


男がいた場所に拳を振り下ろすが、男はいない。


「グッ…!!?」


隣にいた静が男に蹴り飛ばされ、静は間一髪で刀で防いでいた。

俺が攻撃する前に男は一瞬で距離を取る。


「邪魔なもんから殺そ思ったのに……へー、見ない間にやるようになったんやな」


静は構えを取り、男は距離を置いた。


「そういえば自己紹介がまだやったな」


天見時雨(あまみしぐれ)、スキルは静に聞いてみ」


静の方を見ると、静は警戒しながら言った。


「あの男のスキルは未来予知、5秒間を読める」


「カイ、ここは2対1で戦うぞ。私に合わせてくれ」


「ああ」


構えを取ると天見は俺達の後ろ、遠くの方を見つめる。


「2対1ね、別にええけど他の仲間の心配せえへんくてええんか?」


「副団長さん、団員やらがおるはずや。前みたいに仲間を"死なせたい"んやったら別やけど」


「貴様ッ!!」


天見はニヤニヤとしながら、静を挑発し続ける。


「静、ニコ達に加勢しろ。俺は一人の方がやりやすい」


「わかった……任せたぞ」


静は屋敷の屋根に飛び上がり、颯爽と消えていった。


「やろか、貪食者」


天見は構えを取り、待ち続ける。


ヤツのスキルは未来予知、何かしら弱点やデメリットがあるはずだ。

その二つはまだ分からない。


もし俺がこのスキルを持っているなら、攻めか守りのどっちかに傾く。


未来……先読みしている。

ならヤツは、選択肢が広い守りを選ぶはずだ。


俺は地面を蹴り、一気に距離を縮める。

着地と同時に拳を振ろうとした瞬間。

天見は俺の懐に潜っていた。


「その真ん中、カウンターや」


天見の拳が腹にめり込み、筋肉や臓器が悲鳴を上げる。

純粋な内功で鍛えられたその攻撃は、必殺級といっても過言ではなかった。


「うっ…!!」


衝撃で体は後退し、地面を引き摺るが、倒れる程ではない。


「えっらい硬ったいな、貪食者」


天見は自分の右拳を撫でる。


「もっと見せてくれや、禁忌の力」


……やばいな。

自分のどんな手札も見られているという緊張。

これほどまでに精神に来るとは……


「受けたるからさっさと来いや」


俺は槍を生成した。

その技を見た天見は興味津々で、顎に手を当て観察している。


「本物みたいやな、他に奪った力は?見せてくれへん?」


「使わないと決心した」


「なんで」


「使わない」


「は?しょうもな」


強者を見ていた目は、一瞬でガラクタを見るような目付きに変わる。

それはまるで、静を見ていた時の目と同じだった。


俺は走り出し、天見に向けて槍を突く。

頭や胸、腹に向けて突くが、軽々とそれを避ける。


「はあっ!!」


俺は体を回転させ、槍を薙ぎ払う。

それも堂々と躱され、すかさず槍を突いても、持ち手の部分を掴まれた。


「見えてんねん」


槍を素早く手離し、両手に剣を生成し、振るうが、それもまた避けられた。

天見はトコトコ後ろ歩きしながら言う。


「凄いの見せてくれるかと思ったんやけどな、ただしょうもないだけ」


とりあえず様子見はした。

この未来予知、恐らくデメリットはない。

スキルは常時発動している。


"ただし"、攻撃が当たる当たらないは、天見の対応力で変わる。


……このスキルの攻略は難しく考えなくていい。

至って単純、至って簡単。


身体が動かなければ意味がない。

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