表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生スキル『貪食』  作者: とまてるの
第四章贄の儀式
65/66

第64話罪を喰らう者

屋敷敷居の稽古場。

そこで静と俺は実践訓練をしていた。


刃が風を切り裂きながら顔に迫り、俺は間一髪で避ける。

静に隙ができ、俺は静の横腹に重い拳の一撃を与えた。


「グッ…!!」


訓練というより、ほぼ殺し合いに近い戦いだった。

殴られた静は地面に倒れ、即座に体勢を立て直し、攻めてくる俺に刀を振るう。


刃を左手で掴み、攻撃の手段を封じられた静の顔に拳を振るい、殴り飛ばした。

静は地面を転がり、距離は十数メートル。


「ッ……」


俺の首から血が吹き出し、俺は慌てて手の平で傷口を塞いで、治癒スキルで治す。


「凄いな、今のどうやった」


舞い上がる土埃から静は姿を現した。


「ん、カイに殴られた瞬間に素早く刀を振った」


刀を鞘に納めた静は俺の前に立ち止まり、俺は静の頬に手を当てた。

そして治癒スキルを使い、口内の傷と他の外傷を癒した。


「もう魔力ねぇし、これで最後な」


「付き合い、感謝する」


「気にすんな」


俺と静は訓練場から抜け、屋敷の縁側に座り、静はヤカンに入った茶をコップに注ぎ込む。

静は日向に当たりながら茶を飲み、俺に向かって微笑んだ。


「それにしてもカイ。今回の実践練習でわかったが、君はまだまだ伸び代があるな」


「そりゃどうも」


ここに来てから1ヶ月少し。

静は最初と比べ、会話をかなりするぐらい親しくなった。


ここは本当に俺に馴染んでくれる、故郷みたいなものだ。

今度は失くしたくない。


「ところでニコの調子はどうだ?最近見ねぇけど」


静は視線を下げ、顎に手を当てて考える素振りをする。


「ニコなら……そうだな、ルシアンやアルヴェリウスと訓練している」


「……ニコから事情は聞いてるか?」


「ああ、勿論聞いている。ヴァンパイアに親しい者達を殺されたのだろう?」


ニコ、大丈夫なのか?俺ならきっと、殺そうとするかもしれない。


静は俺の表情を感じ取ったのか、人差し指を立てて言った。


「心配なら見に行けばいい。正門から見て西の屋敷内で訓練しているはずだ」


「ありがとう」


俺は暖かい茶を飲み干し、立ち上がろうとすると、静が俺の手を引っ張った。


「どうした」


「ニコはああ見てて心情を表に出さない」


「話を聞いてやれ。それが終われば、私から話がある」


「……ああ」


俺は縁側から立ち去り、屋敷の西側にある訓練場へと向かう。

そこは道場のようで、木の扉を横に開けると、ルシアンとニコは手合わせをしていた。


スキルを使わないただの接近戦。

だが、ニコは圧倒的な経験不足により、ルシアンに殴り倒され、畳に投げ倒された。


「うっ……!」


ルシアンは苦しむニコを見て、すぐアルヴェリウスが連戦へと出てくる。

ニコは邪魔にならないように無理して立ち上がり、道場の端へと移動し、腰を下ろした。


「ニコ」


「わっ!ビックリした…」


ニコは目を見開きながら布で汗を拭き、道場着を掴みパタパタと扇ぐ。


「内攻…だったか。順調か?」


「物凄くな、静が褒めるぐらいに」


「そりゃ驚いた」


俺はニコの隣に座る。


「カイは何しに?見に来ただけか?」


「そうだ。と言いたいが、本当はお前の心配をしに来た」


「え?」


ニコはあからさまに驚き、頬を赤らめた。


「ニコがヴァンパイアと手合わせしてると聞いてな、そこの点で心配になって来た」


「あー、そういう……安心しろよ。俺、そこまで弱くねぇからさ」


「それが強がりじゃないなら、感心する」


「それで?他に聞きたい顔してるけど」


そろそろ俺のスキルを言いたいが、まだ準備がいる。

そうだな……適当に聞くとすれば――


「どうでもいい話だが、一体なんの訓練をしてるんだ」


「え?今は肉弾戦で……慣れたら、俺の"札"を使って実践練習だ」


"札"

ニコが用いる魔道具だが、ここ1ヶ月で一回も使用を見たことがない。

確かに、ここ最近の戦闘と言えば、俺の親父との戦闘だけ。


「気になっていたが、どんな魔道具なんだ?」


「うーん……事前準備があったら、超強い魔道具って覚えとけ」


「事前準備?」


「そう、札を使うために1から作るんだ。それで自分の魔力を流せば、まるで体の一部みたいに操れる」


「俺の欠陥刻印(シール)と相性がいいんだ。例えば、札で攻撃した場所に弱点を露出、そこを正確に当てれば、相手を怯ませることができる」


「まあ大抵はそれを使う前に、札で切り刻んで殺せるんだけどな」


「……そうしてヴァンパイアを狩っていたのか」


「うん……そういうことになるね」


しばらく沈黙が続き、アルヴェリウスが畳に振り落とされた衝撃音で、2人はハッと集中が戻った。


「あー、疲れた。ちょっと休憩しよう」


「そうだな」


ルシアンは体を伸ばしながら道場の隅に置いてあった水を手に取った。


「なあカイ」


その声は冷たく、ニコらしくないトーンだった。


「なんだ」


「カイってさ、親しい人。殺したことある?」


俺はその問いに沈黙を返し、ニコの話を聞く。


「小さい時よく遊んでくれてた女の子がいたんだ。幼馴染ってやつ」


その目は怒りや憎しみというより、ただ悲しみだけが伝わってくる。


「ヴァンパイアに血を与えられた人間は、ヴァンパイア――ってより、肉人形みたいになるんだ」


「俺はただ、人じゃないと思ってその肉人形を殺してたんだ。でも、人形なった幼馴染を殺した時」


ニコは大きく深呼吸し、涙を堪えながら言う。


「彼女、苦しんでたんだ」


「ずっと…意識のある、"その人"をただ人形だと決めつけて殺し続けてたんだ」


ニコから涙が溢れ、袖で目を擦り続ける。


「ご、ごめんな。こんな話して…気にしなくて――」


「ある」


ニコはもう他人じゃない。仲間だ。

彼女は俺を知る必要があるだろう。


「俺は尊い人を殺した」


「……どうして?」


「彼女は呪いに侵されていた。俺の力で喰らえば呪いを取り除ける、だが、その呪いは彼女と一体化していた」


「俺は奇跡を信じた。その結果、俺は彼女を殺した」


そう言った瞬間、ニコは血相を変えて言い出した。


「それ、カイ悪くないだろ!」


「悪い良い以前の問題じゃない。復讐の道を選んだんだ」


「解呪を諦め、彼女と付き添っていれば、彼女は死なずにすんだ」


「これだけは理解しろ」


「ニコ、お前は悪くはない。俺だって、誰だってその選択を選んだはずだ」


「……慰めてくれてありがとな」


「キツく言えば、雑念は捨てた方がいい。俺には無理だったが、ニコなら出来るはずだ」


俺は畳から立ち上がり、ニコに背を向けた。


「静に呼び出されてる。じゃあな」


「おう。おかげで、なんだかスッキリした」


「そうか」


俺は道場から出て、再び静がいるあの縁側へと戻った。


「どうだ。ニコは」


「肉弾戦は悪くない、よくやってる方だ」


「ニコの悩みは晴らせたか?」


「多少はな」


静は湯呑みを持ったまま、しばらく黙っていた。

視線は俺の背中に向けられている。


「……カイ」


「なんだ」


「君は、自分の力をどう思っている?」


「どう、って?」


「誇れるものか。呪いか。それとも――ただの道具か」


俺は答えず、茶を一口飲んだ。

静は小さく息を吐く。


「……やはりな」


湯呑みを置き、静は遠くを見るように目を細めた。


「少し、昔話をしてもいいか」



----



遥か昔。

東の地の本土にて、皇族の血を引く男児が産まれた。


その赤子は成人より魔力量が多く、なにより体格が大きい。


正に、"鬼"であった。


その赤子は、他者の力を奪い、自分の力とする怪奇な力を持っていた。


やがて赤子は成長し、一国の将軍へと成る。

雷で人を破壊し、炎で焼き払い、その無双の英雄はやがて恐れられ、迫害の対象となる。


そう。

彼の力が初めて、"禁忌"スキルと正式に決められた者だった。


鬼は世界を支配し、一人で何ヵ国をも制覇。

自然の力を司る"賢者"と呼ばれる者は、数々の猛者を連れて鬼に対抗しようと、鬼に対して攻撃を仕掛けた。


しかし、歴戦の猛者達は激闘の末、敗北。

生き残った賢者は、鬼に見下されながらこう言われた。


「弱い」


賢者はその日、初めて恐怖を感じ、生涯忘れない本当の死を見せつけられた。


そして鬼の死因は老衰。


"貪食者"


彼は永興、そう呼ばれるようになった。



----



なぜ静がこの話を俺にしたのか分からない。


「カイ、私が言いたいのはな」


「"魔法帝"にとって、君はトラウマの相手且つ、代わりの復讐相手なんだ」


「つまり、魔法帝は君に対して絶対容赦はしない。それだけはわかってていてくれ」


「ああ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ