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とあるOLの謹賀新年

皆様明けましておめでとうございます。

本年は更新頑張っていきますのでよろしくお付き合いください。(シライ土下座)

ここ数日、シャンプーもコンディショナーもできていないせいで、ぺっとりしているのにボサボサな髪が、ひどく不快だ。

時計を見れば、現地時間で1月1日午前4時。

新年を迎えたというのに、台所の、存在自体が不快な衛生害虫よろしく、頸動脈を軽くキュッと絞め落とした追っ手を捕縛するため使わせてもらった、裏路地に渡された洗濯ロープに偶々ついていたタオルを濡らし、体や髪を拭うくらいしかできていないことが、市川鷹を尚更苛立たせる。

これがコカ繁りケシ咲き乱れる山の中なら諦めもつく。

だが、後進国ゆえ前触れなく止まることはあるものの、目の前に使用可能な電気ガス水道があるのに使用不可とか何なのそれ、である。背に腹は変えられないと、洗濯ロープにぶら下がる、誰のものとも分からないアンダーウェアを着用するに及び、登山用ロープか出雲の注連縄かと評される市川鷹のキレてはいけないナニカは、割りとギリギリだった。

それでも、耐え難きを耐え忍び難きを忍んでいたというのに。


「臭ぇんだよ女の癖によォ!」


頸動脈を軽くキュッとした追っ手が吐き捨てた、その一言に。

市川鷹の頭の中で、プッツーンという音が響き、どこかの三部のゲロ以下(一部表現でお送りします)のように、顔面が黒ベタで塗り潰される。

市川鷹の同僚であり、また数少ない同性の親友でもある、かなり濃い味のオタ(幼稚園児にしてクリスマスプレゼントに石○面と抜かした猛者)であるところの越谷つぐみがこの現場を目撃していたなら、こう言ったことだろう――オワタ、と。


「……ら、の」


固く引き結ばれた荒れた唇から、物質の分子運動すら停止しかねない超低温の、低音だった。

ギガントマキアでオリンポスの神に破れたティターンの恨み言が小鳥の囀りに感じられるほどの音であり、響きであり――。


「てめえらのせいでこのザマなんだろーがざけんじゃねーぞゴルァ!」


ウネウネと半ば実体化した怨念背負い、貞○も伽○子も出会わぬうちから裸足で逃げ出し、▲様もちょっとこれムリですわーと避けて通り、○辰子が出会い頭にミンチよりひでぇことになりそうな、荒ぶる一柱の祟り神が、顕現した。

多分、ひょっとして、もしかしたらだけど、今なら大いなる使者とか百万の愛でられしものの父とか月に吠ゆるものとか古ぶるしきものとか呼ばれてるナニカと、クトグァさんやノーデンスさん抜きでいい勝負できるかもしれない。

ハイライトが消え瞳孔のかっ開いたいい感じにヤバい目と、いびつに歪んで両端のつり上がった唇が、顔から禍々しいナニカをざばざば放出させている。

半径十メートル圏内に赤ん坊がいたらしく、火がついたように泣き叫ぶ声がするが、トラウマにならないことを切に願うものである。SANチェック成功で1D10、失敗で1D20のSAN値減少を00で失敗かつ20減少で(SAN値が)やったね夢の二十台かーらーのーアイデアロール01で発狂待ったなしとか、どうやったって神話生物さんじゃないですかやだー、であるが、だからどうしたと開き直って祟り神は粛々と歩く。

赤ん坊の泣き叫ぶ声と、失神してぼたぼた落ちる鳥、ふぎゃっと叫んでじょばっと失禁し四肢を硬直させ白目を剥く犬猫を、幼い兄妹が森に落としたパンくずのように道なりに落としながら、ヌシヌシと。




その日、とある国で、とある自営業者が、廃業を余儀なくされた。

シアワセな気分にはなれるけど、法的に許されていないお薬の製造販売を手掛けており、袖の下貰っているクソ警官やクソ軍人がいるせいで、海外資本の民間軍事会社に協力を仰ぎ、近々営業停止(物理)となるところだったのだから、特に問題はない。

法的に許されていないお薬をどこでどうやって作ってどこにどれだけ卸していたかも含め、資金の流れがよくわかる帳簿その他の証拠品が病的な几帳面さで揃えて並べて晒されていたが、問題はそこではない。

問題は、捕縛され転がされている自営業者の皆さんである。

彼らはみな、ザビエル、落武者、その他バリエーションに富んだデザインに長〜〜〜い友と書いて髪をむしられ、鼻フック(知らないよい子は知らないまま、清く正しく美しく生きていこうね!)をかまされ、なぜかジャストサイズかつ日常的に使われていると推測できるユーズド感溢れたど派手な各種エロ下着(女性用)を着用に及び、匠の技が冴え渡る、もはやアートとも言うべき見事なテクニックで緊縛されていた。

貧乳美人ならまだしもムサくて小汚い野郎の緊縛とかぶっちゃけアリエナイと言うか、発見者が要SANチェックな代物である。

ちなみに作者はナイスバディの巨乳美人より、スレンダーな貧乳美人の方が緊縛はエロくていいと思っている派である。

それはともかく、死者重症者はないが、精神的死者重症者は出た。

しかも、SNSに記念写真を上げられ、スマホの全アドレスに写メ付きで一斉送信されるとか、視覚的テロ以外の何者でもない。

後に、ファーストクラスでの帰国を勝ち取ることで鎮まった荒ぶる祟り神、またの名を市川鷹は、しょっぱい顔した上司の問いにない胸を張り、


『かっとなってやった。反省も後悔もしていない』


と供述したそうである。

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