↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界の悪は、吸血鬼の小銭稼ぎにすぎない 〜無慈悲な治癒魔法と血の刃で、獲物を捕食する〜  作者: アム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/57

52話 青い瞳の白猫

奥の部屋で一人、新しい自分を堪能して興奮を落ち着かせた後、私はクロとラメが待つ部屋へと戻った。

「あの……出来ました」


私の姿を見たクロは、少しだけ感心したように目を細めた。

「回復魔法でどうやったのか、正直想像もつかないけど、凄い事をしたね。体調は、やる前と比べて問題ない?」

「大丈夫そうです」

私がそう答えた瞬間だった。


「わあー! なにこれ、すごい!」

ラメがいきなり私の背後に回り込み、生えたばかりの尻尾を無遠慮にガシッと掴んできたのだ。


「っぎにゃああ!!!」


自分でも出したことのないような奇声を上げながら、私は無意識のうちに身体を捻り、全力の回し蹴りをラメの腹に叩き込んでいた。

ドゴォッ! という鈍い音と共に、ラメの身体がイスごと部屋の端まで吹き飛ぶ。


「ぐへぇ……」

流石のラメも結構痛かったらしく、壁際で苦笑いを浮かべていた。

クロは呆れたようにため息をつきながら頭を抱え、「尻尾をいきなり触られたら嫌だと思うよ」とラメに言いつつ、軽く回復魔法をかけた。


(えっ……私、あんな威力でラメを蹴り飛ばせるの……?)

自身の足から放たれた信じられない力に、私自身が一番驚いていた。

ただの『耳』と『尻尾』を繋いだだけだ。蹴りの威力に直接関係するはずがない。だが、未知の神経を強引に繋ぎ合わせたことで、肉体の『反射神経』や『筋力のリミッター』までが、獣特有の本能に引っ張られて底上げされているのかもしれない。

良い意味での想定外な副産物に、私は思わずニヤリと口角を上げた。


気を取り直して、私はクロから貰った『ヒーラーの法衣と杖』を身に付け、再び鏡の前に立った。

羽織った純白のローブに、私の白いロングヘア、そして真新しい白い猫耳と尻尾が違和感なく溶け込んでいる。全身が白一色に染まる中で、水色寄りの青い瞳だけが、唯一の鮮やかな色彩として際立っていた。

手に握るのは、汚れのない白い布が隙間なく巻かれた無骨な杖。先端に据えられた冷たく透明に近い魔石だけが、私の青い瞳と同じように、どこか無機質に周囲の光を反射している。


(うん。誰がどう見ても、ブランに似ているだけの『猫の獣人のヒーラー』ね。完璧な変装だわ)

ただ、やはり尻尾は私の感情と連動して勝手に動き、猫耳も「あっちの方向が気になるな」と意識しただけで、音を拾うように勝手にそちらへ向いてしまう。獣の器官を完全に制御するには少しコツが要りそうだ。


私は鏡の前で、思いつく限り『可愛らしい猫のヒーラー』のポーズをいくつか決めてみる。

(にゃ〜ん!!)

(シャアー!!)

(ゴロゴロ……)

(よしっ。完璧)


外は、もうすぐ夜の帳が下りる頃だ。

私は『仕方なく』変装のために完成させたこの姿で、噂の猫好きの悪党を釣り上げるべく、クロたちと共に夜のスラムへと出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。