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この世界の悪は、吸血鬼の小銭稼ぎにすぎない 〜無慈悲な治癒魔法と血の刃で、獲物を捕食する〜  作者: アム


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48話 スラムの噂話と、新たな猫の骸

ギルドでの重い引き継ぎを終えた私は、足早に家へと戻った。

合流するなり、私はクロとラメを前に、受け取った要点の書類を見せながら、頭の中でつぎはぎ状態の情報をかき集め、口頭でざっと伝えた。

情報が多すぎたため、飲み込むまでにしばらく沈黙が発生するかと思ったが、意外にもクロはすぐに口を開いた。


「とりあえず、『猫の獣人事件』の追求を最優先に動く。他の異形の魔物とかは出たら対応すればいいし、魔王やヒーラーの件なんかはどうでもいい。頭の片隅に置いておく程度でいい」


クロは、自分たちの両親が関わっているかもしれない件ですら「どうでもいい」と切り捨て、即座に方針を定めた。

「それに、報酬の高い指名手配犯がどうも見つからない今、普通じゃない方法で探りを入れた方が効率が良いだろうしね」

その言葉を聞いて、ラメがすぐに反応した。

「あ! そういえば、スラムのリュエとチチが何か知ってるかもしれないね!」


確かにその通りだ。情報量が少ない今、探索がてらスラムへ行くのも有効な手だ。私たちは三人揃って、再びスラムの父娘の元を訪ねることにした。


◆ ◆ ◆


クロは、スラムへ向かう道中で初めて知ったのだが、ラメが以前あの一家に金を渡し、「情報屋」のような取引をしていたらしい。

私なら、初対面で襲ってきた相手など信用できないから使わなかった手だが、まさかラメが勝手にそんなことをしていたとは。最初の街にいたあの商人のような取引相手になってくれれば楽だが、あの父親は裏の経験も浅い一般人だ。無茶振りもいいところだ。

だが、この状況なら利用価値は十分にある。


明るい時間の家に到着すると、リュエは不在だったがチチがいた。

チチは突然現れた私たち(特にラメ)を見て分かりやすく恐怖に顔を引きつらせていたが、そんなことはどうでもいい。私は挨拶もそこそこに、「情報や噂、聞いたもの全て教えて」と一言だけ要求した。


チチから聞き出した話の多くは、私たちがすでにギルドや野良の残党狩りで把握している情報や噂、あるいはどうでもいいことばかりだった。

だが、二つだけ知らない情報があった。


一つ目。

「どこかの悪党のボスが、強烈な病か毒に侵されているらしい。表立って助けを呼べないため非常に困っている。さらに、そのボスは異常なまでに『猫の獣人』が好きらしい」

スラムのごく一部で、そんな噂が流れているという。


もしそれが事実なら、弱ったボスを排除して組織を乗っ取ろうとする者が現れそうなものだが、なぜそうならないのか? もし仮に、都合よく例のヒーラーが徘徊して治してくれれば、その組織にとっては万々歳なのだろうが。

切羽詰まっているからこそ流れてきた噂なのか、ただの間違った情報なのか。だが、猫の獣人事件と明らかに繋がりがありそうだ。


そして二つ目は、指名手配犯『ロワ』についてだ。

チチは意を決して話す前に、「他の人には言わないでくれ、私が言ったことも内緒にしてほしい。そして、その人には何もしないでくれ」と必死に懇願してきた。

結論から言えば、納得できる理由だった。


ロワはスラムやその周辺で活動しているとのことだが、目撃情報など一切出てこないのは、スラムの住人たちが贅沢よりも彼女に「一生の恩」を感じ、隠蔽しているからだという。

スラムの人間特有の「今を凌ぐためだけに長期的な利益から目を背ける」という行為が多いはずの中で、これは非常に珍しい。だが、それだけでは偶然スラムに来たよそ者に見つかるのも時間の問題な気がするが。


その恩とは何か。ロワは「子供やスラムの守護神」なのだという。リュエも実は何度も助けられたことがあり、手早く悪い奴らを殺して回ってくれていたらしい。

ただ、「最近は見ない。捕まったとも聞かないからいるはずなんだけど」とのことだった。


じゃあなんで守護神と呼ばれる人が指名手配犯で、しかも高額な報酬が懸けられているのかと問いただすと、答えは単純だった。「とにかく殺しまくっていたから」だ。

悪い奴はもちろんだが、後になって無実だと判明した人も沢山手に掛けているらしい。総数で数百は余裕で超えるという。その中の悪党と無実の人の割合がどれくらいかは分からないとのことだったが。


私がその情報を整理し考え込んでいると、ラメが一歩前に出て、チチにお金の袋を渡していた。

「今後もお願いね!」

ラメの無邪気な言葉に対し、チチは分かりやすい作り笑いを浮かべて頷いていた。


◆ ◆ ◆


その後、私たちは適当に挨拶をして家を出て、噂の遺棄現場の探索に向かうことにした。指名手配犯ロワは現地の人ですら見かけないというなら期待はできない。ついでに見つかればいい、という感覚でいいだろう。

全員が並大抵の相手には負けない実力を持っているため、効率を重視して各自バラバラに探索を行い、遅くとも夕方から夜には家へ戻るという方針で別れた。


結果として、クロとラメはすぐに現場を見つけた。

そこは、街の端にあるゴミ置き場のさらに奥、探そうと思わなければ絶対に見つからないような行き止まりだった。クロが匂いで辿り着いた時には、すでに気づいていたラメが先に現場に到達しており――そこには新たに『二人の猫の獣人の遺体』が捨てられていた。


ただ、今回の遺体は耳や尻尾が切り取られてはいなかった。

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