31話 表と裏の顔、揺るがない地位
翌朝。私は少しだけ眠気を引きずりながらも、三人で集まり、昨日得た情報の整理と今後の方針について話し合った。
「邪教の拠点と闇金のアジトは、幹部やボスが消えたことで自然に壊滅する。残党は見つけたら狩るぐらいの感覚でいい」
私は淡々と状況をまとめる。問題は、さらにその上に二つを支配している『悪党の巨大な上位団体』が存在しているという事実だ。
今後の方針としては、指名手配犯に繋がる残り三枚の依頼書を含め、情報収集を継続すること。しばらくはこの巨大都市に滞在していても、獲物が尽きることはなさそうだ。
つまり、表の動き(ギルドでのやり取り)はブランがメインで動き、それ以外の裏の動き(獲物が掛かった時の拷問や暗殺)は私たちが担当するという役割分担だ。
私はその話を聞きながら、一つの疑問を抱いていた。
(……裏で獲物を狩るってことは、この人たち、たぶん人間を食べるんだよね?)
背筋が粟立ったが、絶対に口に出してはいけないと感じ、私はただ黙って頷いた。
方針が決まり、私はギルドへ指名手配犯の報酬を受け取りに向かった。
受付に行くと、顔パスの要領で深い感謝の意と共に、ずっしりとした報酬を手渡された。ギルド内は、凶悪な指名手配犯を一人で捕まえた『エリートのブラン』の話題で持ちきりだった。……ん?なんか今『エリートのブランさん』って聞こえた気がする。
周囲を見渡すと、飲食スペースにいた英雄たちとバッチリ目が合った。彼らも私を認めるように軽く頷いてくれる。この巨大都市のギルドは規模が大きく、珍しく食堂や店も併設されているのだ。
「もう、ブランさんが欠けたギルドなんて考えられませんね!」
ギルドの受付嬢が、冗談半分にそんなことを言いながら笑いかけてきた。私も愛想笑いを浮かべて、カウンターを離れる。
ロビーの隅には、私についてきたクロとラメが待機していた。もうフードは被っていないようだ。
だが彼女たちは特に何をするわけでもなく、ただギルドの様子を眺めているだけだ。周囲の冒険者たちも、「ブランが面倒を見ている身寄りのない子供たち」として完全に認識しており、不用意に近づく者はいない。
憧れの英雄からの称賛。ギルドでの確固たる地位。
そして、その後ろに控える、誰も知り得ない理不尽な化け物たち。
(……私の『表の顔』は、これで完全に出来上がってしまったな)
私は、もはや後戻りできない場所まで来てしまったことを、確かな実感と共に噛み締めていた。




