27話 夜の尾行と、隠された狂信の館
作戦決行の時が来た。
私たちは家で装備を整え、予定よりも少し早めに出発した。貧民街までは距離があり、まだ周囲が明るい時間帯だったため、怪しまれないようフードは買い物袋の中に隠し、ただの通行人を装って街を進んだ。
目的地に近づくと、人通りのない路地を選んで深くフードを被り、父娘の家へと滑り込んだ。
「……ああ、君たちか」
突然の訪問に少し驚いた表情を見せた父親だったが、すぐに私たちを歓迎してくれた。私たちは五人で集まり、これから始まる連れ去りと尾行の作戦を最終確認した。
夕闇が迫る中、私は買っておいた食事を二人に手渡した。
「今のうちにしっかり食べておいて」
彼らが感謝の言葉を口にするのを背に、私たちは一旦、家から離れて潜伏ポイントへと移動した。
夜になる頃、ついに『取り立て人』が姿を現した。
打ち合わせ通り、父親は抵抗せずに娘を渡し、娘もまた素直にそれに応じた。
娘が暴れないためか特に縛ることもなく、闇金の男は彼女の歩調に合わせて進んでいく。それが優しさなのか、単に目立つのを避けているだけなのかは分からない。少女にはあらかじめフード付きの服を着せ、周囲に違和感を与えないよう配慮しているようだった。
予定通り、ブランは父親の元へ合流し、クロラメの二人が影のように後を追う。
十分ほど歩いたところで、男たちはどこにでもある平凡な民家へと入っていった。
同じような構造の家が、まるで印刷したかのように並ぶ区画だ。中から話し声が聞こえてくるが、どうやら二階にいるらしい。
音は分かるがなんと話しているが聞き取れなかったが、ラメの鋭い耳は逃さなかった。
「……ラメ、なんて言ってる?」
「……『これから、あの胡散臭い教会に売っぱらってくる』って」
人身売買にはもっと猶予があると思っていたが、すぐに売り払うつもりらしい。これは想定外のスピードだ。
闇金の男は、再び娘を連れてアジトから出てきた。
私たちは慎重に距離を保ちながら、彼らの後をつける。向かった先は、山の地形に紛れるように隠された山奥の、ぱっと見は大きめの家だった。数ヶ月前にヒーラーを捕食したあの洞窟ぐらい、ヒント無しでは分かるわけが無いレベルだ。
今度は、私にもなんとなく中の声が聞こえた。距離はこっちの方が遠いはずなのだが。
念のためラメと共有して勘違いがないか確認したが、問題なかった。
家の中に入ってわずか二分。男は金を手に入れ、満足そうな顔で一人で戻ってきた。取引はあっという間に完了したらしい。
(……思ったよりも面倒なことになっているね)
闇金の男は後回しでもいいだろう。今優先すべきは、『悪徳教団』と思われる拠点に消えた娘の扱いだ。
ラメに闇金の男の尾行を任せるか一瞬迷ったが、目の前の事態を優先することにした。
足跡を残さないよう、奴らが通った道から少し離れた場所を通り、私たちは静かにその異様な建物へと接近した。




