26話 共鳴する過去と、神の誕生
いつか来るだろうと予想していた質問だった。思ったよりも随分と早いタイミングだったが、私は正直に、心の中で考えていたことを口にした。
「最初は……命の恐怖しかありませんでした。でも、あなたたち双子は悪党を狩る『良い奴』なのかもしれないと。まだ完全に信用するのは怖いですが、少なくとも……今はあなたたちについて行きたいと思っています」
そこまで深く考えていたわけではなかったはずなのに、口に出すとつい夢中になって熱く語ってしまった。
クロは私の言葉を黙って聞いてくれていた。やがて、淡々とした口調で返す。
「まあ……、結果的にそうなってるね。わかった」
私がホッと一息ついたところで、クロから一つ訂正が加わった。
彼女が言うには、二人は双子でも姉妹でもなく、ラメは『拾ったペット』のようなものだという。
「えっ……? 姿形も髪の色もあんなに似ているのに、そんな偶然があるんですか?」
思わず聞き返すと、クロも「私自身かと思って思わず立ち止まってしまった」と言い、ラメと出会った時のことを少しだけ教えてくれた。
私は、念のため吸血鬼に関する事情は伏せておいた。
単純に「成り行きで一緒に暮らすようになった」という自然な流れになるよう話を省略する。途中、ブランから「ただの獣人にしては戦闘能力が異常すぎませんか?」と突っ込まれたが、「獣人は犯罪率が低くて戦ったことがないから、比較対象がいなくて分からない」と適当に誤魔化しておいた。まあ実際、本当にわからないのだ。
話しながら、ふと思い出した。
そういえば以前、ブランが『親が殺されて……』と言いかけていたことがあったな。
世間話や情報収集において、相手と同じ立場に立ったり、同情を誘うような会話を振ったりすると、情報を引き出しやすくなる。言うつもりはなかったが、ブランをより深く知る(利用する)ためのテストとして、私は何気なく口にしてみた。
「そういえば、私も数ヶ月前に両親が殺されたんだよね」
言いながら、ブランの反応を窺う。
「え……?」
私は思わず息を呑んだ。まさか、クロも数ヶ月前に両親を殺されていたなんて。私の両親の事件と、数ヶ月の差しか違わない。
その瞬間、私の中に強烈な『仲間意識』が芽生えてしまった。
化け物への恐怖よりも、同じ痛みを共有する同志としての感情が勝り、私は溜め込んでいたことを全て吐き出すように色々語ってしまった。ギルドで危険な人狩りの依頼を受け始めたきっかけ。両親を殺害した憎き悪党への復讐心。心の奥底に閉じ込めていたドロドロとした感情を、全て曝け出してしまった。
(両親が殺されたら、普通はこんなに怒るものなのかな)
私はそんな疑問を抱きつつも、決して言葉には出さず心の中に留めておいた。
ただ、これだけ感情を曝け出すのなら、おそらく私たちのことを外部に口外する可能性は低そうだ。そう冷静に判断しつつ、私はブランにもっと色々なことを吐き出してもらうため、適当に同情しているような相槌を打ち、聞く役に徹した。
彼女が落ち着いたところで、巨大都市に潜む悪党たちの情報や、彼女が知っている裏の事情をたっぷりと教えてもらった。
気が付くと、随分と時間が経っていた。
夜の出発まではまだ時間があるが、当初の目的だった『回復魔法を教えてもらう』ような雰囲気ではすっかりなくなってしまっている。
ちょうどラメが昼寝から起きてきた。私は一気に自分の身の上話を語りすぎたことを恥じ入り、「すみません、話しすぎました」とクロに謝った。
だが、クロは「構わないよ」と静かに言ってくれた。
(……もはや、神様だ)
私の目には、彼女が恐ろしい化け物としてのかけらはなく、私を導き、理解してくれる神のように映っていた。




