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この世界の悪は、吸血鬼の小銭稼ぎにすぎない 〜無慈悲な治癒魔法と血の刃で、獲物を捕食する〜  作者: アム


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20話 生かされる拷問と、無言の道連れ

太陽が真上にある昼の時間帯。私とラメは深くフードを被り、貧民街スラムを歩いて回っていた。

流石にこの時間帯には悪い奴も釣れないだろう、あくまで下調べには十分かと思っていたのだが……太陽の光が当たらない薄暗い裏路地、その行き止まりに偶然足を踏み入れた時、二人の男性が道を塞ぐように現れた。

明らかにボロい服装で、薄汚い剣をこちらに向けている。


私がため息をつきながらどうするか迷い、様子見しようとした矢先、隣のラメが動いた。

素人相手なので正面勝負でも楽勝だったのだろう。手早く後ろに回ったラメは、お腹が空いていたのか、片方の男の首から肩にかけて一口がぶっと喰らいついた。痛みで声が出なくなった男を、そのまま近くの壁に強打させて一瞬で気絶させる。

そしてもう片方の男の剣を持っていた腕を斬り飛ばし、激痛で思わず大きな悲鳴を上げようとした男の口内に、奪った剣を深々と、焦ったように突き刺して黙らせた。


「うえ……まず……」

「不味さはまあ……うまくやったね、よかったよ」


一瞬の出来事だった。後者の男は一応致命傷は避けて刺されたはずだが、想像以上に早く即死したようだ。それでも、ラメはうまくやってくれたと思う。肉が不味い理由は、明らかに栄養も運動も足りていないからだろう。

私はラメの返り血や、気絶した男の傷口を回復魔法でなんとかしておく。

まあ、わざわざここでこの男を殺す必要もないし、せっかく釣れたのだ。私は気絶している男を連れて行き止まりの奥、もう少し隠れた場所へ移動してから、無理矢理起こして拷問することにした。


「お前は何者?」


縛るものを持ち合わせていなかったので、とりあえず人気のない廃屋の裏へと引きずり込み、目を覚ました男に尋ねた。しかし男は答えるよりも早く、横へ逃げ出そうとした。

仕方がないので、宙に浮かせたナイフで素早く男の四肢を斬り飛ばす。失血死されると困るので、すぐさま回復魔法をかけて出血だけを止めた。

また大声を出されると周囲に勘付かれる場所なので、追加で口から喉にかけてをナイフで刺しながら警告をする。


「大声を出すな。言われたことだけ教えろ、じゃなきゃ殺す」


念の為に追加で目をちょっとだけ刺しながら脅す。喉のナイフは抜いて回復させたが、痛みだけはしっかりと残っている状態だ。

冷たく見下ろして、意識が少し戻るのを待つ。この状態ではまともに話せないからだ。

痛みにのたうち回っていた男が落ち着いたところで、彼はすぐに「こ、このスラムに住んでいる!」と吐いた。


「襲った理由は何?」

「あ、えーと、脅されて……! 金と生活のために!」


まあ嘘ではないのだろう、震え声でそう言った。だが、大声を出したのでもう一回喉を刺す。


「大声は出さない。わかった?」


そう脅すと、男は泣いて鼻水垂らしているが、そんなことは関係ない。

次に、ギルドで受けた四枚の指名手配犯の依頼書を取り出し、「こいつらについて何か知っているか」と聞く。

すると、内一枚の顔を見た瞬間に、男の様子が明らかにおかしくなった。目が泳ぎ、明らかに誤魔化そうとしている。


「え……と……。その……」


もう、知っているのは確定だ。いちいち言葉で聞き出すのも時間がかかって面倒なので、いい加減早く吐かせることにした。

私は一番痛いであろう『心臓』にナイフを深く刺し込み、少し待って絶命する直前に回復魔法で治癒する、という工程を一度だけやった。


「ああぁ!! ァ……ああ………ッ」

「早くして」


たった一回やっただけで、男の精神は完全に崩壊した。大声対策で、少しだけ遅れて喉も刺しておく。

恐怖のあまり全身から変な汗を吹き出し、下を濡らし、涙や鼻水が抑えきれなくなっている。強くて悪い奴なら五回から十回ぐらいは意外と耐えるのに、脆いものだ。


「む、娘がいるんだ……っ! あの手配犯の幹部に脅されてる! た、助けてください……っ!」

「家に案内して。娘も」


少し思考する。面倒だが、折角だから目の前の男と娘を利用してみるか、と考えた結果だ。

十分に脅しをかけてから、四肢を完全に元通りに修復し、彼の家まで案内させることにした。

ふと横を見ると、男が、腕を斬られ口に剣を刺されて絶命した『もう一人の男』の凄惨な死体を目の当たりにし、恐怖でまた気絶してしまったので、叩き起こして案内をさせる。


それで思い出したかのように、もう一人の男との関係性を聞いてみたが、「顔見知りなだけで誰だか分からないが、同じ手配犯の関係かもしれない」という曖昧な回答だった。二人の初遭遇時の身なりやあの時の剣、目や表情からして、嘘ではないだろう。


ちなみに、この拷問の様子を少しだけ離れた場所からラメも静かに見ていた。

前の街の時からそうだったが、「悪い奴は全部やっつける」と意気込んでしまっているので、目の前の光景も全く疑わないどころか、たまに過熱して野次馬になる時がある。今回は静かに心躍らせていたようだが、一体なぜなのだろうか。


ここで一つ問題があった。ブランとの待ち合わせ時間だ。もうそろそろ約束の時間になる。


「ラメ、先に集合場所に行って、ブランと家に戻っていて」


そう頼むと、ラメは素直に頷き、路地を駆け出していった。


ブランは、約束の時間よりも少し早く、指定された店の近くで待機していた。

すると、制御はしているのだろうが、そこそこ早く走ってくるラメの姿が遠くから見えた。周囲を警戒しながらも、小さい子にしては確実に獣人の規格から外れた異常な身体能力だ。クロ抜きの二人で合流する形となった。


「クロが、先に家に戻っててだって」


少しまだ警戒しているラメからそう伝えられ、私は少し考える様子を見せた。

クロがいない。何かトラブルがあったのか、それとも標的(獲物)を見つけたのか。どちらにせよ、私がここで待っていても仕方がない。


「……分かりました。家に向かいましょう」


私たちは二人で家路についた。お互いに警戒しているが、特にラメからの強い警戒心を感じる。

ラメは早歩きで家へ向かっていく。私も普通に歩いているが、とても追いつかない。

彼女は所々で止まっては進み、私が近づくのを待つが、なんともいえない不自然な距離感のまま家へと向かう。

私が後ろで、ラメが前を歩いている形だ。家に着くまでの間、私たち二人の口数が増えることはなかった。


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