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この世界の悪は、吸血鬼の小銭稼ぎにすぎない 〜無慈悲な治癒魔法と血の刃で、獲物を捕食する〜  作者: アム


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18話 空虚な家と、夜の洗礼

ギルドでの一件を終えたのは、まだ日が昇りきったばかりの朝だった。


私は姉妹に命じられるまま、まずは自分の家へと案内した。半年前、強盗殺人で両親を亡くしたこの家は、今の私には広すぎて冷たかった。そこに、得体の知れない化け物の姉妹が住み着いたのだ。……最悪の同居人である。


家に着いて軽く荷物整理を済ませると、クロは休む間もなく「街の案内をして」と要求してきた。

私は二人を連れて、巨大都市の表通りや市場を案内し、昼や夜のご飯を歩きながら立ち食いし、明日の朝までの食事の買い出しなどを済ませた。街の広さと人の多さにラメは目を輝かせていたが、私はいつ不機嫌になって首を刎ねられるか分からない恐怖で、一日中生きた心地がしなかった。


だが、街を見て歩いている時のクロは、明らかにその辺にいるような『普通の可愛い子供』だった。

私やラメとの会話では言葉数が少ないし、表情もあまり変わらない。だが、店員との会話では口数が増え、表情も豊かになる。裏の顔を知っているから「おそらく作っているのだろう」と分かるが、知らなければ作っているなんて到底思えないほどの完成度なのだ。

完全に、街によくいる無邪気な小さな子供として成立している。


しかも、お金を払う時に言葉巧みに色々な話を引き出している。

「ありがとー! お兄さん! あ、これもついでに買ってくよ! そういえば、英雄ってここではどんな存在なの?」

「この街で危ないから避けておいた方が良い所とか、意外と近くにある怖い所とかあったりするんですか? 一応知っときたくて!」


買い物をしながらお金を払い、後から追加で更に買い足すという姿勢を見せることで、相手の警戒心を二段階で緩めているのだ。

彼女の正体を知らなければ、私もあっさりと騙されていただろう。いや、これほど金払いが良く、愛想のいい小さな子供を見せられたら、警戒しない方が無理というものだ。


やがて日が落ち、夜が来る。家から出た時は朝だったが、都市が広すぎるせいだろう。

家に戻ると、彼女たちはまるで自分の家のように勝手にお風呂を借り、その直後、私はベッドへと強制連行された。


(……逆らったら、死ぬ)


本能がそう告げている。私は震えながら「はい……」と答え、彼女たちの間に横たわった。

すると、クロが私の隣に寄り添い、上着の肩部分を剥き出しにさせた。


「……っ!?」


反射的に身を強張らせた瞬間、首筋に鋭い牙が突き立てられる。

しかし、激痛を覚悟した私を襲ったのは、予想だにしない甘美な感覚だった。

痛みはなく、全身の力が抜けていくような、抗いがたい快楽。

意識が遠のき、私は恐怖も恥ずかしさも忘れ、無意識に身体ごと彼女に委ねてしまった。

視界の端で、もう一人のラメが欲求不満そうにどこかへ行くのが見えたが、それを気にする余裕もなく、極度の緊張と疲労も相まって私は泥のような眠りに落ちた。


翌朝。太陽が昇り始める頃、私は目を覚ました。

気絶するように寝たせいか、睡眠時間は十分だ。すぐに身体を起こそうとしたが……無理だと悟った。

後ろからクロが、私の身体をがっちりと抱き締めていたのだ。


(……動けない)


意図せぬ「拷問」の始まりだった。

意識がはっきりしているのに、一歩も動けない。私は静止したまま、今後のことを考えた。

吸血の途中で殺されなかったことに安堵し、昨夜、自分から身体を委ねてしまった自分を思い出して一人で顔が熱くなる。

(……私の目的は、復讐相手に彼女たちを導くこと。そのためには、死んではいけない。死ぬわけにはいかない)


恐怖と期待で心臓がうるさく鳴る中、外で鳥が鳴き、部屋が明るくなった頃、ようやくクロが目を覚まし、私は解放された。


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