# 第三話 ## 「泣き虫だった僕が、初めて誰かを守る日」
# 第三話
## 「泣き虫だった僕が、初めて誰かを守る日」
黒い煙が夜空へ立ち上る。
「急ごう!」
フレアが空へ飛び上がる。
セレスは水の魔法で道を作り、湊の背中を押した。
「湊、走って!」
「う、うん!」
三人は森を駆け抜ける。
やがて見えてきたのは、小さな村だった。
家々は燃え、村人たちは悲鳴を上げながら逃げ惑っている。
「助けて!」
「魔物だ!」
「誰かぁ!」
その中央には――
身長五メートルを超える巨大な魔物が立っていた。
全身を黒い岩で覆い、真っ赤な目を光らせる巨人。
「ロックオーガ……。」
セレスが険しい顔になる。
「普通の冒険者では勝てないわ。」
ロックオーガは大木を引き抜き、逃げる少女へ振り下ろした。
「きゃあああ!」
湊の足が止まる。
(怖い……。)
(逃げたい……。)
学校でいじめられた日々が頭をよぎる。
「どうせ僕なんか……。」
そのとき、小さな女の子が泣きながら叫んだ。
「お兄ちゃん……助けて!」
その声は、まるで自分に向けられたもののようだった。
湊は拳を強く握る。
(また……。)
(また誰かが傷つくのを見てるだけなのか?)
フレアが叫ぶ。
「湊!」
セレスも叫ぶ。
「あなたならできる!」
湊は大きく息を吸った。
「僕は……。」
「もう逃げない!」
右手の赤い紋章が光る。
ゴォォォッ!!
炎が拳を包んだ。
「えっ?」
湊自身が一番驚いていた。
「炎が……。」
フレアが笑う。
「そのまま殴れ!」
「えぇぇ!?」
「魔法って殴るものなの!?」
「細かいこと気にしない!」
「いや、気にするよ!」
思わずツッコミながらも、湊は走った。
「うおおおお!」
ロックオーガが振り向く。
巨大な拳が湊へ迫る。
「危ない!」
村人が叫ぶ。
だが――
ドンッ!!
湊は炎をまとった拳を思い切り振り抜いた。
次の瞬間。
ドゴォォォォン!!
炎が爆発した。
ロックオーガの巨体が十メートル以上吹き飛び、地面を転がる。
村中が静まり返った。
「え……?」
「一撃?」
「うそだろ……。」
湊も目を丸くする。
「ぼ、僕が?」
フレアは大笑いした。
「やったじゃん!」
セレスも驚きを隠せない。
「契約したばかりとは思えない力……。」
しかし――
ロックオーガは立ち上がる。
「グオオオオオ!」
「まだ動けるの!?」
今度は両腕を振り上げる。
地面が揺れる。
「湊!」
セレスが手を差し出した。
「今度は水を使って!」
「水?」
左手の青い紋章が光り始める。
(守りたい。)
(みんなを。)
その気持ちだけを思い浮かべる。
すると――
ザァァァァァッ!!
巨大な水の壁が村の前に現れた。
ロックオーガの拳は、水の壁に受け止められる。
「すごい……。」
少女は目を輝かせた。
「お兄ちゃん、かっこいい!」
その一言で、湊の胸が熱くなる。
学校では一度も言われたことのない言葉だった。
フレアが笑顔で叫ぶ。
「今だよ!」
「火と水!」
「一緒に!」
湊は両手を前へ突き出した。
「お願い!」
「力を貸して!」
赤い炎。
青い水。
二つの力が一つに溶け合う。
そして――
白い蒸気が竜の姿となって天へ昇った。
「これは……!」
セレスが息をのむ。
「火と水の融合魔法……!」
「伝説の『蒸気竜』!」
蒸気の竜はロックオーガへ一直線に突撃する。
ドォォォォォン!!
大地を揺るがす轟音。
煙が晴れると、ロックオーガは完全に倒れていた。
村人たちはしばらく呆然と立ち尽くし――
やがて、大きな歓声が響いた。
「助かった!」
「ありがとう!」
「英雄様だ!」
小さな少女が湊に花を差し出す。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
湊は花を受け取り、目に涙を浮かべた。
「ありがとうって……。」
その言葉が、こんなにも温かいなんて。
フレアは腕を組み、得意げに笑う。
「だから言ったでしょ?」
「湊は最強になるって!」
セレスも優しく微笑む。
「でも、本当の試練はこれからよ。」
その瞬間、遠くの空が黒く染まり始めた。
巨大な黒い翼が、月を覆い隠す。
世界を震わせる咆哮が夜空に響く。
**グオオオオオオオオォォォッ!!**
フレアの表情が凍りつく。
「まさか……。」
セレスは静かにつぶやく。
「闇の皇竜が……目を覚まし始めた。」
湊は空を見上げる。
自分が救ったのは、まだ一つの村だけ。
しかし、これから待つ戦いは、世界の運命を左右するものだった。
**少年と二人の竜の本当の冒険が、いよいよ始まる――。**
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### 次回予告 第四話
**「王都へ!竜の契約者を狙う謎の少女剣士」**
村を救った湊たちは、王都へ向かうことに。しかし、その道中で「二体の竜と契約した少年」を狙う謎の美少女剣士が現れる。彼女は敵か、それとも新たな仲間なのか――。




