# 第二話 ## 「火竜と水竜、契約!」
# 第二話
## 「火竜と水竜、契約!」
赤い光。
青い光。
二つの光は渦を巻きながら、湊の体へと吸い込まれていく。
――ドクン。
心臓が強く鼓動した。
「うわっ!」
湊の右手には炎を象った赤い紋章。
左手には水滴のような青い紋章が浮かび上がる。
その瞬間――
ゴォォォォォッ!!
炎と水が同時に空へ噴き上がった。
森中の鳥たちが一斉に飛び立つ。
「成功だ!」
フレアが飛び跳ねる。
「やったー!」
セレスも珍しく微笑んだ。
「やっぱり……あなたが『運命の契約者』だったのね。」
湊は自分の両手を見つめた。
「僕が……?」
「こんな僕が?」
フレアは思いきり湊の肩を叩いた。
「こんな僕じゃない!」
「これからは私たちの契約者!」
「もっと胸張りなさい!」
「い、いたたた……。」
そこへセレスが割って入る。
「フレア、力が強すぎる。」
「え?」
「湊の肩、赤くなってる。」
「ええっ!?」
フレアは慌てて湊の肩をさする。
「ご、ごめん!」
「つい嬉しくて!」
湊は思わず笑ってしまった。
「ふふっ。」
その笑顔を見た二人は顔を見合わせる。
「また笑った!」
「少しずつ、本当の笑顔になってきたわ。」
その時だった。
グゥゥゥゥ……。
静かな森に妙な音が響く。
三人は固まる。
「……。」
「……。」
「……。」
もう一度。
グゥゥゥゥゥ……。
フレアが首をかしげる。
「何の音?」
湊は真っ赤になった。
「あ……。」
「お、お腹です……。」
一瞬の静寂。
そして――
「ぷっ!」
「アハハハハ!」
フレアは大笑いした。
「緊張感ゼロじゃん!」
セレスも口元を押さえて笑う。
「朝から何も食べてないのね。」
「学校でも、お昼……食べられなくて。」
湊は俯いた。
弁当を隠されたこと。
牛乳を捨てられたこと。
全部を話した。
フレアの拳が震える。
「最低。」
「そんな奴ら、私が焼き……」
「ダメ。」
セレスが即座に止める。
「異世界まで燃やしに行っちゃダメ。」
「冗談だよ!」
「半分は本気でしょ。」
「えへへ。」
湊はまた笑った。
こんなに笑ったのは、いつ以来だろう。
---
「じゃあ、ご飯にしよう!」
フレアは森へ走っていく。
五分後。
「見て見て!」
ドーン!!
巨大なイノシシを引きずって戻ってきた。
「獲れた!」
「……大きすぎる。」
セレスが呆れる。
「三人で食べる量じゃないわ。」
「余ったら明日!」
「保存できないでしょう。」
「そうだった!」
またケンカが始まる。
湊は笑いながら火を起こそうとする。
しかし――
「どうやるんだろう。」
フレアはニヤリと笑う。
「契約者!」
「炎をイメージして!」
「え?」
「熱く!」
「燃えるぞー!って感じ!」
「そんな適当で……。」
湊は目を閉じる。
(暖かい。)
(誰かを守る炎。)
そう思った瞬間。
ポッ。
小さな炎が指先に灯った。
「できた!」
フレアは大喜びする。
「すごーい!」
「初めてで成功!」
セレスも驚く。
「普通なら何週間もかかるのに……。」
その炎で肉を焼く。
香ばしい匂いが森中に広がる。
湊は一口食べた。
「おいしい……。」
涙がこぼれた。
「こんなに、おいしいご飯……初めてかも。」
フレアは少し照れながら言う。
「これから毎日食べられるよ。」
セレスも優しく頷いた。
「あなたは、もう一人じゃない。」
その言葉が胸に染みる。
湊は空を見上げた。
二つの月が静かに輝いていた。
(この世界でなら……。)
(僕は変われるかもしれない。)
だが、その平和な時間を裂くように、遠くの山から黒い煙が立ち上った。
「……あれは!」
セレスの表情が一変する。
フレアは炎をまとい、空をにらんだ。
「村が襲われてる!」
黒煙の向こうから、悲鳴が風に乗って聞こえてくる。
湊は拳を握りしめた。
怖い。
だけど――。
「行こう。」
その一言に、フレアとセレスは力強くうなずいた。
少年が初めて、自分の意志で誰かを助けようと走り出した瞬間だった。
---
### 次回予告 第三話
**「初めての戦い!泣き虫だった僕が村を守る!」**
魔物に襲われる村。
逃げ惑う人々。
まだ魔法も満足に使えない湊は、二人の竜とともに初めて命を懸けた戦いに挑む。そこで彼は、自分の中に眠る驚くべき力の片鱗を目撃する――。




