## 第一話 ### 「君は、一人じゃない」
# 『火竜と水竜に選ばれた僕は、いじめられっ子から世界最強の英雄になる』
## 第一話
### 「君は、一人じゃない」
「おい、湊!」
バンッ!!
机が大きな音を立てた。
教室中に笑い声が響く。
「また本読んでるよ。」
「陰キャって感じ。」
「キモい。」
誰も止めない。
先生も見て見ぬふりだった。
僕――**天野湊**は、ただ黙って本を拾う。
(……慣れた。)
毎日同じ。
悪口。
笑い声。
無視。
「学校って、こんなにつらい場所なんだ。」
帰り道、空を見上げる。
雨が降り始めていた。
「……消えたいな。」
その言葉が口からこぼれた瞬間――
ゴォォォォン!!
空が真っ赤に染まる。
雷ではない。
空そのものが割れた。
「え……?」
眩しい光が湊を包む。
「うわあああああ!!」
世界が回る。
風が叫ぶ。
体が宙に浮く。
そして――
ドサッ!
「いったた……。」
目を開けると、そこは見たこともない森だった。
巨大な木々。
青く光る花。
空には二つの月。
「ここ……どこ?」
その時だった。
ガサガサッ!!
茂みが揺れる。
「グルルル……。」
現れたのは、体長三メートルはある黒い狼。
真っ赤な目。
鋭い牙。
「ま、魔物……?」
狼が飛びかかる。
「ひっ!」
逃げられない。
終わった――。
そう思った瞬間。
ドォォォォン!!
炎が空から降ってきた。
黒狼は一瞬で吹き飛ぶ。
「へ?」
空から降り立ったのは――
真っ赤な髪の少女だった。
腰まで伸びた炎のような髪。
金色の瞳。
笑顔がまぶしい。
「間に合ったー!」
彼女は胸を張る。
「私は火竜フレア!」
「最強だから安心して!」
「……え?」
次の瞬間。
ザァァァァッ!!
優しい雨が降る。
空気が静まり返る。
湖のように澄んだ青い髪。
青い瞳。
白いローブをまとった少女が、静かに歩いてきた。
「もう、フレア。」
「森を燃やさないで。」
「細かいこと気にしないの!」
「気にするわ。」
二人は顔を見合わせる。
そして――
「あなたが悪い!」
「そっちでしょ!」
いきなり口げんかを始めた。
「え、えぇ……。」
さっきまで命の危機だったのに、その光景があまりにもおかしくて、湊は思わず笑ってしまった。
「ふふっ……。」
その笑い声に、二人はぴたりと動きを止める。
「笑った!」
「この子、笑えたのね。」
湊は慌てて口を押さえた。
「ご、ごめんなさい!」
「どうして謝るの?」
青い髪の少女が優しく尋ねる。
「え……?」
「笑うことは悪いことじゃないわ。」
その言葉を聞いた瞬間。
湊の胸が熱くなった。
学校では、笑うことさえ忘れていた。
「私は水竜セレス。」
彼女はそっと手を差し伸べる。
「あなたの名前は?」
「……天野、湊。」
「湊。」
フレアがにっと笑った。
「いい名前!」
「ねえ、湊。」
「私たちの契約者にならない?」
「えっ?」
セレスが静かにうなずく。
「普通は、一人につき一体の竜しか契約できない。」
「でも……。」
二人は同時に湊を見つめた。
「あなたなら、私たち二人と契約できる。」
その瞬間――
森全体が震えた。
ゴゴゴゴゴ……。
空が黒く染まる。
遠くの山の向こうから、巨大な黒い翼が姿を現した。
その翼は、一度羽ばたくだけで雲を引き裂くほど大きい。
フレアの笑顔が消える。
「……来た。」
セレスの声も震えていた。
「闇の皇竜。」
湊は息をのむ。
「あれが……?」
黒い竜は、まるで世界そのものを見下ろすように咆哮した。
**グオオオオオオオオオォォッ!!**
その一声で、森の木々が大きく揺れる。
フレアは湊の前に立ち、炎をまとった。
セレスは静かに杖を構え、水の壁を生み出す。
「湊。」
「あなたの人生は、今日から変わる。」
「もう、誰にも『弱い』なんて言わせない。」
湊は二人の手を見つめる。
学校では誰も差し伸べてくれなかった手。
今、その手が自分を必要としている。
ゆっくりと、湊は手を伸ばした。
「……僕。」
「強くなりたい。」
その瞬間、赤と青、二つの光が湊の体を包み込む。
伝説が、静かに始まった。
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### 次回予告 第二話
**「火竜と水竜、まさかの大ゲンカ!?」**
契約した直後から始まるフレアとセレスの大騒ぎ!
さらに、湊の体に眠る「二竜に選ばれた理由」が少しずつ明らかになっていく。
笑いあり、バトルあり、そして心温まる異世界冒険が本格的に幕を開ける!




