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暴力反対!!

 それからいろいろな店を優に引っ張られるようにして周ったが、特に気に入ったものがなかったのか何も買わずに次の店に移動する。

 荷物持ちをしなくて良いのは楽だが、良い加減歩き疲れていた。


「あっ、あそこ前優花が美味しいって言ってたところだ」


 終わりのわからない優の買い物に心身共に疲れ果てていた緋那は今度はなんだと顔を上げて、優がキラキラした目で見ている場所を確認し、ギョッとした。


 可愛らしい外装の喫茶店のチェーン店がそこにあった。とても女子が好みそうな感じがする。


(ってか、この外装で店名がブラックキャットって……)


 店の前に出ている看板には"BLACK CAT"と書かれていて、黒猫の絵も描かれていた。

 店を見て固まっている緋那を不思議そうに見ながら優は緋那の脇腹をつついた。


「どうしたの、ひなた?お腹空いてきたし入ろうよ」

「いや、待て。お前1人で入ってこい。俺にはあの店に入る勇気が……」

「えー、私が1人で入ったら、ひなたに奢らせられないよ」

「おい、こら。なに俺が奢ること決定してんだよ」


 腕を引っ張りながらトンデモ発言をした優にとりあえず文句を言う。


「えっ、じゃぁ、今だけ私が払うって言ったら一緒に入ってくれるんだね!?」

「は!?入んないに決まってんだろ!?ってか今だけってなんだ、今だけって!!」

「……ケチ」


 緋那の反論に優は小さく呟く。

 それに間髪入れずに優の頭に拳が降ってきた。優は小さく呻いて頭を抑える。


「うー、最近ひなた凶暴だよ。暴力反対!!」

「はぁ、手加減してるっての。お前も最近頭の中がさらにおめでたい事になってきているな」

「頭がおめでたいって、ひどっ。ひなたが頭ばっかり叩くから脳細胞が死んじゃったんだよ」

「叩きやすい場所にちょうど頭があるからな。それに生憎、脳細胞は死んでも倍出来るから大丈夫らしいぞ」

「何、そのどうでもいい雑学は」


 呆れたよに言う優に緋那は大きくため息をついた。

 そんなやり取りを道の真ん中でやっているものだから、道行く人々は2人を邪魔そうに避けながら自らの道を進んで行く。

 しかし、幸か不幸か2人は全くそんな周りの様子に気づいていない、


「ひなた、じゃんけん」

「はぁ?」


 不意に優は右手を握ってグーを作ると言った。

 そして緋那が意味がわからず混乱しながらも反射的に左手でグーの形を作ったのを見て優はまるで小さな子供のように無邪気に笑った。


「じゃんけん、ぽん」


 そう言って優はパーを出した。

 頭がついていっていない緋那の左手の形は最初はグーのままだ。


(待って、何でいきなりじゃんけん!?)


「わーい、私の勝ちって事で行くよ」


 嬉しそうに喜びながら、緋那の腕をぐいぐいと引っ張る。負けたから仕方がないと一瞬流されかけた緋那だが、はっと正気に戻った。


「おい、待て。なしだろそれは!!」


「別に良いじゃん、ほら腹が減っては戦はできんって言うしさ」

「いや、戦はできぬな。言うけど、別に俺らは戦に行かねぇーよ!?」

「男が細かい事気にしないの」

「いや、本当に待てって。俺の意見は無視なのか!?」

「黙秘権施行中ー。よってひなたの意見は聞く必要なし!」

「色々ちげぇーよ。そもそも使い方も間違ってるぞ!」

「ねぇ。ところでひなた」


 優の発言にツッコミを入れるのが疲れてきた時、不意に優の声音が先ほどの3歳児並のものから不意に変わった。

 それにどこか違和感を覚えながら優を見ると、今までの無邪気さが影を薄めていた。


「なんだ……?」


 不思議に思いながらそう尋ねると、優はいたずらっ子のようにニコッと笑った。そして言葉を紡ぐ。


「私達すっごい邪険に見られているよ?こんな邪魔になるところで立ち往生?してるから」

「気づいてたんなら早く言えーー!!」


 優の言った事実に周りを確認した事により緋那の顔色がサッと悪くなっていく。

 それを見て優は、あははといつも通り笑った。


「ひなた顔が真っ赤になったり、真っ青になったりしてる。おもしろーい」

「ーーっ、とにかくここから移動するぞ」

「うん。だからあそこ入ろっ」


 そう言って優は喫茶店を指差す。


「……まさかお前わざとか?」

「ん?何が?」


 顔をさらに青くしながら尋ねる緋那に対して、優は笑いながら首を傾げていた。

 その笑顔がとてもうっさんくさい。


(忘れてた……。こいつバカだけど悪知恵だけはよく働く奴だった)


 さらに周りの反応は全く気にしないというタチの悪いオマケ付き。

 無意識にため息をつき、腹を括った。


 俺様で天邪鬼な上にズル賢い人間の発言に逆らえるわけないかと半ば諦める。

 一生この幼馴染に振り回されるんだろうなと、やけになりながら考える。

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