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暴走娘は止まらない

 また言い争いを再開する2人、しかも低レベルの。


「ははは、こりゃしばらく続くかな?」


 いつの間にか優花の腕から脱出した優が千春の隣まで移動して独り言のように呟く。

 そして千春の方に向き直ってにゃはっと笑った。


「はじめましてだよね?私は文月優。優花とはうーん、中学3年間同じクラスという腐れ縁だったりね?でね、今言い争いをしてるのが望月緋那って言うんだ。よろしくね」

「あっ、橘千春です。よろしく」

「おー、君が噂の千春ちゃん!?」


 そう言いながら千春の手を掴みブンブンと振る。


「えっ!?噂って……」


 優の勢いに押されて若干後退しながらも、千春は自分の疑問を口にした。

 しかし優は全く聞いていない。千春がどうしようかと戸惑っていると不意に優の手が千春から離れた。


「初対面の人に迷惑を掛けるなっていつも言ってんだろ!?」

「ーーっ、だからっていきなり叩く事ないじゃん」


 頭を両手で押さえながら優は地面に小さく背を丸めてしゃがみ込んでいた。

 いつの間にか口喧嘩をやめていた緋那が優の頭をはたいて、暴走を止めたのだ。

 頭を押さえて痛がっている優の背中を優しくさする優花。


「……あの」


 なんだか意味がわからなくなってきた千春はとりあえず1番話の通じそうな緋那に声をかけた。しかし声が小さかったせいか、緋那はまったく気づく気配がない。


「あの……望月くん」


 今度は服の裾を引っ張りながら声をかけた。

 緋那は頭に疑問符を浮かべながらも千春の方を見る。


「俺、名乗ったっけ?」

「あっ、さっき文月さんが……」

「あー、あの暴走娘か。で、なんだ?」


 千春の口から優の名が出ると条件反射で頭が痛くなってきた。頭を抑えながら話の続きを視線で促す。


「あっ、とりあえずありがとうございました」


 そう言って千春は頭を下げた。


「お?……あぁ、優の件か。それなら気にしなくてもいいぞ。……いつもの事だから」


 ぼそっと小さく諦めたように付け加えて呟く。

 その様子から千春は「この人相当な苦労人なんだろうな」と内心思ったが、口には出さなかった。

 いや、出せなかった。


「ちは、望月なんかほっといて、行くよ」


 優と何かを話したのか機嫌が良い優花が千春の腕を引っ張った。


「……なんかって」

「男なら小さい事気にしない!!それより望月」


 いつの間にか緋那の隣にいた優が優花の言葉を呆然と復唱しているのを聞いて爆笑し出した。

 そんな様子を見ながら優花はビシッと効果音が聞こえそうな勢いで緋那を指さした。

 指をさされた緋那はその勢いにたじろぐ。


「忘れてるんじゃないよ。とっとと思い出しなさい!!」


 そう叫んでスッキリしたのか、バイバイと優に向かって手を振ると優花は千春を引っ張りながらその場を後にした。


「なんだったんだ…?」


 優花が残した謎の言葉に首を傾げながら緋那は小さく呟いた。

 優の目はその小さな呟きを拾ったけど、まるで聞こえなかったかのように言葉を返さなかった。

 代わりにいつも通りの笑みを浮かべて、緋那の腕を引く。「はやく、はやく」と全身を使って表現をしている。

 緋那は小さくため息をつくと、諦めたように楽しそうに自分の斜め前を歩く優の後に続いた。

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