嫌いじゃないよ、好きでもないけど
「あっ、優じゃん」
近くのアウトレットモールについて、優は宣言通りにブラブラとウィンドショッピングをしていると不意に優が呼び止められた。
優が足を止めたのに釣られて緋那も足を止める。同い年ぐらいの少女2人のうち1人が優に抱きつく。
「ひさびさー。卒業式以来?」
「うん」
そしてそのまま2人で盛り上がる。
緋那ともう1人の少女は取り残されたようにそのやり取りを遠目に見ている。
「はぁ…」
緋那の口から無意識にため息が漏れる。
「幸せが逃げちゃうよ?ため息ついてると」
緋那の隣にいつの間にか移動していた優の友人の友人らしいおとなしそうな少女が長い黒髪を耳に掛け直しながらクスクスと笑う。
優と盛り上がってる茶髪のショートカットの少女は顔馴染みの同級生だが、黒髪ロングの少女は初対面な為、どう反応するのが正解かはかりかねる。
「そーだな」
その顔を見て少女は何故か申し訳なさそうな顔をして、口を開いた。
「…その、邪魔しちゃってごめんね?優花も悪気はないんだろうけど」
「は?」
少女の発言に緋那は意味がわからず間抜けな声を出した。
その反応に「…あれ?」と少女は首を傾げた。
「えっ、付き合ってるんじゃないんですか?」
「はぁ!?誰と誰が!?」
「えっ、君と彼女」
緋那の大声にびくっと肩をびくつかせながらも、少女は緋那と優を順番に指差す。
「……!?ありえない、マジでありえないから!!」
叫ぶように否定する緋那に少女は少し首を傾げて考えた後、「あっ」と何かに気づいたように声をもらす。
「なら兄妹なんですね。あんまり似てないのでわかりませんでした」
「は?」
少女はさらに変な勘違いをしてしまったらしい。予想外の少女の発言に緋那の思考は停止した。
すると甲高い笑い声がぼんやりと緋那のの耳に響いた。
「あはは、ちは最高!!まさか優と望月の関係を知らないとわっ」
優の友人である茶髪の少女ーー安東優花は優の肩に頭を預けて大爆笑しながら、黒髪の少女ーー橘千春に説明する為に口を開いた。
「結構有名だけど、この2人はただの、幼馴染だよ。それに望月なんかに優はやらん」
そう言って、ぎゅっと優花は優を抱きしめる。
「望月なんて、どーせいい人止まりで一生恋人なんか出来ないんだよ、ざまーみろ!!」
「相変わらずムカつくな、安東」
2人の間に火花が散る。
「うー」
慣れたように2人のやり取りに(主に優花によって)巻き込まれた優は「あーまたはじまったー」と気軽に状況を見ることにした。
だが、優花の腕にかなり力が入っていて地味に痛い。
ぼーと周りを眺めると、千春が困ったようにオロオロしているのが目に入った。
優と千春の目が合った。
千春の助けを求めるような目に、優はにゃはっと笑った。
(こうなると2人とも人の話聞かないからなー)
基本的に人の話を聞いてない事は棚に上げて、優はうーんと考えた。
「本当の事言われたからってキレないでくださる?」
わざと勘に触るように言う優花に緋那のこめかみがひくっと動く。
「お前…俺の事本当に嫌いだよな」
「別に嫌いじゃないよ?好きでもないけど」
「……」
優花の言葉にどこか呆れたような視線を送り、緋那は黙り込んだ。
だったら何で突っかかってくんだよ。と喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
ここで言い返してしまっては、優の買い物に付き合わされる以上に無駄な時間を過ごす事になる。
緋那が黙ると優花は少し勝ち誇ったような顔をしていた。
その顔に少しイラっときたがグッと堪えた。
2人の低いレベルの口喧嘩がとりあえず落ち着くと、優花の腕の中から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「え?どうしたの優」
目をパチパチと瞬かせながら優花が驚いたように優を見る。笑いながらも優花の問いに答えようと口を開いた。
「いや、2人とも仲良いなーって思ってさ」
「「よくない!!」」
「わー、ハモった」
優の問題発言に緋那と優花が素早く、しかもほぼ同時に否定した。それに対して優はまた笑い出す。
その様子をどこか蚊帳の外で見ていた千春は「あっ」と呟いた。
「喧嘩するほど仲が良いって言うもんね」
「そう!!やっぱり仲良く見えるよね!?」
「言われてみると見えるかも」
「ちょっ、ちはまで何言い出してんの!?やめてよキモイ。望月と仲良いなんて……」
「……やっぱり安東って俺の事嫌いだよな」
「どうだろうね?まっ、望月には関係ない話でしょ」
「いや、俺に1番関係ある話だろ!!」
第2ラウンド突入。




