クラス対抗戦・前哨
蝋の匂い。ろうそくの炎が揺れるたびに、ノートの文字が影に沈んだり浮かんだりする。
レンは指で技名を追った。
二字の名前、四字の名前、漢字にカタカナのルビを振った名前。それぞれの横に、発動した時の結果が走り書きで残っている。威力、消費、手応え。練習場で撃ち比べた記録が、ページの端にまで食い込んでいた。
——これ、ぜんぶ並べて見ると法則がある。
二字は軽い。威力は低いが連射が利く。四字は重い。一発の破壊力は段違いだが、体の奥から持っていかれる感触がある。そして——漢字にカタカナのルビを重ねたやつは別格だった。漢字の意味とカタカナの響きが噛み合った瞬間、確信が跳ね上がる。
レンはペンを取った。
「……装備のレアリティ分けだな、これ」
ページの上部に三つの記号を書き込む。A級は漢字+カタカナルビの切り札で、手持ちは二発。B級は四字の漢字で主力、九発。C級は二字の漢字の使い捨て、十七発。
書き終えて、ノートを少し離して眺めた。技名の頭にA、B、Cの文字がつくと、ノートの景色が変わる。ごちゃ混ぜだった弾薬庫が、棚に並んだ。
「——これで戦える」
ろうそくがぱちりと爆ぜた。
◇
翌朝。教室。
「対抗戦の代表五名を発表する。実技成績順だ」
教師が名前を読み上げていく。シオン・レイシア。ガルド・ヴェルシュタイン。三人目、四人目——五人目。
「レン・アシュフォード」
ざわめき。「【言霊】が?」「成績順だってさ」
教師は何も補足しなかった。紙を畳んで教壇を降りる。
放課後、作戦会議。ガルドが黒板の前に立った。出場順を書いていく。四人の名前が並んだ。レンの名前はない。
「レン。お前は出なくていい。ベンチで眺めてろ」
ガルドがチョークを置いた。
「一対一で声を出すのは、相手に発動のタイミングを教えるようなもんだ。四人で三勝すれば終わる」
声に感情はなかった。模擬戦を吹っかけてきた時とは違う。事実として言っている。
レンは頷いた。「了解」
教室の隅で、シオンが腕を組んで立っていた。何も言わなかった。
◇
試合当日。闘技場。
砂地の円形フィールドに旗が立っている。歓声が石の天井に反響して、どこから来ているのかわからない。
第一試合、シオンが出た。相手が構えた瞬間にはもう終わっていた。声も動作もなく、氷の槍が三本、相手の足元を縫い止めている。圧勝だった。
第二試合はガルドの雷が三組の前衛を沈めて二連勝。ベンチの空気が軽くなる。
だが第三試合で流れが変わる。三組も本気を出してきた。第四試合も落とした。
二勝二敗。四人で三勝するはずだった。出せる人間がいない。
ガルドがベンチを振り返った。そこにはレンしか座っていない。
レンは四試合を全部見ていた。三組の魔法は速いが重くない。ガルドの雷で沈む程度だ。C級で十分届く。
「——俺が出る」
立ち上がった。ガルドと目が合う。
「軽いやつで終わらせる」
ガルドの眉が動いた。軽いやつ。あの模擬戦で食らった威力を知っている。
「……行け」
レンはポケットからノートを取り出した。ページを開く。砂埃の中で、蝋の匂いが染みついた紙が揺れた。
口元が、上がった。
「待ってました」
次回「C級の雨」
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