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【言霊】ハズレスキルと笑われたけど技名を叫ぶたびに規格外の威力が出るんだが  作者: お寿司


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22/40

格上

 『砕光(さいこう)』。


 光弾が飛ぶ。相手の正面——薄い膜のようなものが浮かんでいた。光弾が触れた瞬間、砕けて散った。弾かれたのではなく、吸い込まれるように消えた。


 角度を変える。『鋼破(こうは)』。同じだ。障壁に触れた瞬間、光が呑まれていく。密度が違う。こいつの障壁は、厚さではなく質で止めている。


 カウンターが来た。重い魔力弾が一発、真っ直ぐ飛んでくる。レンは横に跳んだ。足を動かして避けたのは、ランキング戦で初めてだった。


 ——こいつは、舐めてない。


    ◇


 立ち位置を変えながら、相手を見る。寡黙な男だった。煽りも、見下しもない。ただ障壁を張って、こちらを見ている。


 ——C級は通らない。


 切り替える。旧基準のB級。腹に力を入れて、叫んだ。


 「『蒼炎烈衝(そうえんれっしょう)』ッ!」


 炎を帯びた衝撃が障壁に叩きつけられる。障壁が——揺れた。揺れただけだった。表面に走りかけた亀裂が、すぐに塞がっていく。


 硬い。こいつの壁は、旧基準では届かないほど硬い。カウンターが飛んでくる。とっさに口が開いた。


 「——壁ッ!」


 即興だ。名前にすらなっていない一語。薄い膜がレンの前に浮かんだものの、相手の魔力弾は膜ごとレンの胸を叩いた。体が後ろに押され、片膝をつく。肋骨の奥が軋んだ。


 距離を取り直す。足で間合いを切りながら、頭が回り続けている。


 新基準のB級なら——割れるかもしれない。


 ここで使えば残りが減る。準決勝。決勝。あと何発必要か、計算が追いつかない。ノートの余白が、頭の中でちらつく。


 またカウンターが飛んできた。横に動いて躱すが、足が重い。さっきの被弾がじわじわと効いている。


 ——出し惜しみしてる場合じゃない。


 でも、足りなくなったら。


    ◇


 障壁の向こうで、男がこちらを見ていた。待っている。消耗するのを、静かに待っている。


 ——出し惜しみする名前なんかない。


 右手を前に突き出した。足を踏み込む。息を吸って、腹の底に落とす。


 「『崩嶽の穿(ほうがくのせん)』ッ!」


 鋭い光が障壁を貫いた——いや、貫いていない。ヒビが入った。蜘蛛の巣のように亀裂が走っているが、それでもまだ繋がっていた。


 男の目が、初めて動いた。


 ——もう一発。迷わなかった。左足を踏み直して、確信を重ねた。


 「『断鋼の果て(だんこうのはて)』ッ!!」


 光が障壁を叩く。亀裂が広がる。軋む音が響いて——砕けた。


 破片が光になって散る。その向こうにいた男の足が、初めて崩れた。膝をつく音がリングに落ちる。


 「勝者、アシュフォード」


 息が荒い。胸の奥がまだ軋んでいる。勝った。それなのに、拳を上げる気にはなれなかった。


 通路に戻って、ノートを開く。使用済みの技名に、細い線が走っていた。指で残りを数えると、B級五発、C級三発。余白がまた狭くなっている。


 ——準決勝が、ある。


 ノートを閉じた。指先が震えていたのは、疲労のせいだと思うことにした。


次回「空の弾倉 ―シオン―」

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