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【言霊】ハズレスキルと笑われたけど技名を叫ぶたびに規格外の威力が出るんだが  作者: お寿司


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21/40

舐め→圧倒

 審判がレンの名前を呼ぶ前に、観客席のざわめきが先に来た。


「言霊に負けるわけないだろ。初戦はたまたまだ」

「いや、見てたけど——」

「相手が油断してただけだって」


 声が分かれている。初戦を見た者と、見ていない者で。レンはリングの中央に立ったまま、対戦相手を見た。でかい。がたいのいい男が腕を組んでこちらを睨んでいる。事前に「言霊属性に負けるわけがない」と公言していたらしい。


 ——ああ、こういうやつか。


 気にならない。初戦で吹っ切れた体が、もう勝手に構えを作っている。


「始め」


    ◇


 男が前に出る。踏み込みは悪くない。だが初戦の相手ほどの速さはない。


 レンは指先を振った。


「『刃閃(じんせん)』」

「『裂光(れっこう)』」


 C級。立て続けに放った光弾が、男の右肩と左脇腹を叩く。威力は低い。だが止まらない。レンは足を止めずに角度を変え、指先を振り続けた。光弾が散る。散る。


「チッ——」


 男の舌打ちが聞こえた。防御が間に合わない。腕で弾いても次が来る。足を止めて構えを作ろうとしても、その隙に横から叩かれる。


 ——小さい魔法が、多すぎる。


 男の足が止まった。防御に意識が偏って、攻めに転じるタイミングを失っている。右腕の防壁が雑になった。


 ——今だ。


 レンは息を止め、両手を前に突き出した。腹の芯に、確信を落とす。


「『轟天の崩(ごうてんのほう)』ッ!」


 衝撃波が空気ごと押し出された。リングの床が軋む。男の防壁が紙のように潰れ、体ごと後方に吹き飛ばされた。リングの縁に背中から叩きつけられ、そのまま動かない。


 ——手数で崩して、本命を差し込む。


 これだ。


 審判が手を上げる。


「勝者、アシュフォード」


 観客席が騒いだ。だが、初戦のような沈黙はなかった。驚きではなく、困惑に近い。強いのか弱いのか、判断がつかない顔をしている。弱い魔法を連発して、最後だけ強い——何をやっているのか分からないのだろう。


 それでいい。分からないほうが、やりやすい。


    ◇


 通路に戻ったレンが、懐からノートを引き抜いた。


 細い線。使用済みの技名の上を、刃物で紙を撫でたような跡が走っている。『刃閃』と『裂光』にそれぞれ一本。『轟天の崩』にも線が入っていた。余白が、朝より狭い。


 指先で技名を辿りながら、残りを数える。B級が八発。C級は五発。ノートの右半分がもう埋まっている。


 ——トーナメントは、あと何戦ある?


 指先でページをめくる。白い余白と、線の入った文字が交互に並んでいる。勝つたびに弾が減る。補充は、新しい名前を書くしかない。


 ノートを閉じかけたとき、通路の壁に貼られたトーナメント表が目に入った。次の枠——準々決勝。対戦相手の名前の横に、小さく肩書きが添えてある。


 学年三位。


 二回戦までとは格が違う。ノートの余白を見る。白い部分が、もう半分しかない。


 ——足りるか?


 ノートを閉じた。指先が、少しだけ冷たかった。


次回「格上」

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