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【言霊】ハズレスキルと笑われたけど技名を叫ぶたびに規格外の威力が出るんだが  作者: お寿司


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16/40

心の問題

「名前にどれだけ心を込められるかで、威力が変わる」


シオンが瞬きをした。レンは砕けた的の破片を踏みながら歩き回っている。興奮が足に出ていた。


「ポーズも声も文字数も、全部手段なんだ。根っこは——自分がカッコいいと信じられるかどうか」

「……非科学的」

「魔法が科学的だったことある?」

「……」


反論が来ない。勝った。


レンはノートを広げた。「仮説なんだけど。同じ名前でも、テンション低い時に撃ったら弱くなると思う。心の底から信じて撃てば——格が上がる」

「……根拠は」

「さっき試した」指が走り書きをなぞる。「前の記憶にある技名を全力で撃った。急造とは比較にならなかった」


シオンの視線がノートに落ちた。「確信→威力」。矢印の横に殴り書きの感嘆符。


「……つまり、心の問題だと」

「そう。心の問題」


レンは笑った。シオンは表情を変えない。ただ、視線がノートから離れなかった。


    ◇


ノートの白紙ページを開いた。シオンは入口の壁にもたれたまま、こちらを見ている。気にせず作業に入る。


B級のページをめくった。ストックを見返す。


蒼穹裂破(そうきゅうれっぱ)』——使用済み。横線が走っている。

天穹雷断(てんきゅうらいだん)』——同じく。


未使用のB級が並んでいる。語感はいい。だが、新しい基準で見ると——


「……悪くない。けど」


信じられるかと聞かれたら、グラつく。カッコいいとは思う。でも、腹の底から「これだ」と叫べるかというと、少し足りない。語感で作った名前と、確信で作った名前は違う。


ペンを取って、白紙に文字を置いていく。


漢字の並び。音の響き。意味の重さ。そして——自分がこの名前を叫ぶ瞬間を想像して、心臓が鳴るかどうか。


書いては消し、消しては書いた。


手が止まった。ノートの上に漢字が並んでいる。声に出さなくても、腹の底が熱い。


——これだ。


    ◇


的の前に立った。シオンがまだ壁にもたれている。


息を吸う。砂の匂いが肺に落ちる。足を踏み込み、腰を落とし——右の拳を天に突き上げた。指先が天井を突き刺すように伸びる。今まで何度もやった動作とは違う。体の芯から湧き上がるものに従っただけだ。


「——『煌天の刃(こうてんのやいば)』ッ!」


光が走った——のではなかった。


空間が歪んだ。放たれた衝撃は光にすらならず、的に触れた瞬間に的そのものが消えた。砂地に円形の窪みだけが残る。音が遅れて轟き、練習場の天井から砂が降った。


レンの手が下がった。


「……今までのB級と、全然違う」


自分で言って、自分で驚いている。同じB級で、同じ四字構成。なのに、出力が別物だった。


    ◇


教師室。実技記録の数値を追っていた手が止まった。


アシュフォードの欄。入学時の数値と、直近の記録。折れ線グラフにすれば、途中から角度が変わっている。


教師は記録簿を閉じた。


「——成長速度が異常だ。ランキング戦に推薦する」


次回「焚書の痕跡」

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