確信の法則
練習場。的を前に、レンは壁にもたれていた。
——なぜ消した。
焚書。言霊に触れたページだけが、刃物で切り取られていた。強すぎたから消した? だが現代の言霊使いは弱い。俺の急造だって大したことない。強すぎる技術を封じたなら矛盾する。
じゃあ強さじゃない理由で消された。誰かにとって都合が悪かった。権力か、思想か——
答えは出ない。考えても出ない。
レンはノートを開いた。本に頼れないなら、自分の手元にあるもので考えるしかない。
実験結果のメモを指でなぞる。名前のカッコよさ、文字数、ポーズ、声の出し方。どれも確かに効果があった。だが——バラバラだ。四つの変数がバラバラに存在している。
ポーズをキメると威力が上がる。声を腹から出すと威力が上がる。名前がカッコいいほど威力が上がる。
なぜ。
全部、別の理由か? それとも——
レンの指が止まった。
「全部、同じじゃないか」
ポーズも声も名前も、やっていることは同じだ。カッコいいことをやっている。カッコよく構えて、カッコよく叫んで、カッコいい名前を撃つ。全部の根っこは——カッコよさだ。
◇
立ち上がった。的の前に歩く。
仮説を試す。ずっと頭の片隅にあった、いつか見た場面。あのキャラの構え。片手を突き出し、もう片方の手で手首を掴む。腰を落とす。
構えた。息を止めて、全身に力を溜める。あの場面の、あの叫び方。手を三角に合わせ、腹の底から絞り上げて、喉を全開にして——
「『気功砲』ッ!!」
光の柱が的を貫いた。砂が弾け、壁に亀裂が走る。並みの威力じゃない。
手が震えた。
噛み合ったのだ。ポーズと声と、カッコいいことをやっている全身の感覚が、一点に収束した。名前の質じゃない。撃つ瞬間に全部が揃っているかどうかだ。
——これだ。
心臓がうるさい。興奮が身体の芯から沸き上がって止まらない。
次。もう一発。
「『怒々鈍波』——ッ!」
勢いのまま叫んだ。テンションが高い。信じている。自分がやっていることが正しいと確信している。
光が走った。的が砕けた。また強い。テンションが高い=信じている=威力が出る。
法則だ。
急造が弱かったのは名前のせいじゃなかった。信じられていなかったんだ。ダサいと思って撃てば弱くなる。カッコいいと確信して撃てば——どんな名前でも、跳ねる。
砕けた的の破片が砂に散らばっている。レンは荒い息のまま笑った。
「——見つけた」
「……何をしているの」
振り返った。入口にシオンが立っている。
「法則を見つけた」
「……法則?」
「最強になれる法則」
次回「心の問題」
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