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47/51

47話

 最近、食通たちの間で最高傑作と評されるデザートワインがあります。そのワインの名は『向日葵』です。


 そのワインの「出自」には、胸が締め付けられるような純愛の物語が隠されていると言います――。


 とある国に、最愛の妻を亡くした一人の公爵がおりました。絶望の淵に沈んでいた彼が、旅の途中で偶然立ち寄った小さな葡萄園。


 そこで出会ったのは、亡き妻の面影をそのまま写し取ったかのような、若く清らかな一人の農娘でした。


 立ち去るべきだったのでしょう。実際、一度はそうしました。けれど愛しき姿の面影は、寝ても覚めても彼の心を焦がし続けました。


 身分という厚い壁。そして、亡き妻への不変の愛。公爵は、彼女を傍に置くことも、その想いを告げることも、自らに禁じました。


 やがて彼は、その農場が破産寸前であることを知りました。

 そこで公爵は、一つの「嘘」をつきました。


「私は無類のワイン好きでね。自分専用の至高の一滴を造りたいのだ」


 本当は酒を一滴も嗜めない体質であったにもかかわらず、彼は莫大な出資を行い、その農場の守護者となりました。


 彼は足繁く農場へ通い、葡萄の出来を検分するふりをして、ただ彼女が健やかに働く姿を眺めていたのです。


 公爵のために特別に醸造されたその酒は、彼が唯一わずかに口にできる「甘美なデザートワイン」でした。

 公爵の屋敷の地下室には、愛の証として、一度も開けられることのないボトルが山のように積み上がっていきました。


 やがて時が経ち、農娘が幸せな家庭を築いたのを見届けた公爵は、たった一人で息を引き取りました。相続人は、彼女に悟られぬよう、少しずつその満杯の在庫を世に放出しているといいます。


 亡き妻が好きだった花の名を冠したデザートワイン『向日葵』は、公爵の秘めた想いによって作られたのです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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