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48話

「……というストーリーを仕立ててみたのだけど、いかがかしら?」


 今日も艶やかなドレスに身を包んだ貴婦人カトリーヌが、扇子の端から優雅な微笑を覗かせます。


「良いと思います。……これで、僕たちのデザートワインの価値がさらに上がるんですよね?」


「私を信用してちょうだい。物というのは、ただ質が高ければ売れるというわけではないの。法外な値段を正当化するための『物語エッセンス』が必要なのよ」


「それが、カトリーヌさんが創作してくれた、あの『公爵の悲恋』という誕生秘話……」


「ええ。有名なゴシップ紙に寄付をして、この記事を載せてもらうわ。今、パリストンの食通たちは、あのワインの正体に飢えている。彼らは知りたくてたまらないのよ、突如として現れた新星の正体を。真実が秘められていると知れば、彼らは喜んで飛びつき、それを他人に吹聴して回るわ。そして、特別な情報を知る自分に酔いしれるの」


 カトリーヌはそこで一度言葉を切ると、瞳に鋭い光を宿してクロエを見つめました。


「人はね、真実を求めているようでいて、実は自分たちが信じたい『美しい嘘』を求めているだけなのよ。私たちはそれを提供してあげるだけ……」


「それがワインの宣伝になるわけですね?」


「その通りよ」


「最初に話を聞いた時は、正直半信半疑だったんですけど、なんだか上手くいくような気がしてきました」


「でしょう? そしてもう一つ大事なこと。このワインは、決して『量産』してはいけないわ。販売数は極限まで絞りなさい。いい? 無いものの値段が上がるのは、この世界の自然な摂理なのよ。喉から手が出るほど欲しがっている人間が百人いても、売るのは一人だけ。そうすることで、手に入らなかった九十九人の欲望が、次のボトルの価格を吊り上げてくれるわ」


「希少価値というやつですね?」


 クロエが確認するように言うと、カトリーヌは指を一本立てて制しました。


「その通り。そしてこれは、あなた自身を守ることにもつながるの。教会にあなたの居場所を突き止められるわけにはいかないし、ましてや魔法でワインを生成しているなんて知られたら、それこそ一大事だわ。だからこそ、商売は『静かに、かつ高額に』行うべきなのよ」


「計算しつくされていますね」


「味、情報、そして希少性。この三つが揃えば、一滴のワインは金塊よりも重くなる。惑わされることなく、淡々と計画を実行していきましょう」


 カトリーヌは勝利を確信した笑みを浮かべ、向日葵の絵が印刷されたワインボトルを傾けました。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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