表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/51

43話

「さあ、始めましょうか。私のために最高の『刺激』を見せてちょうだい、クロエ」


 カトリーヌが期待を込めて告げました。


「任せてください」


 真剣な面持ちで、クロエは市販のデザートワインの入ったワイングラスに口を付けました。


 パリストンの片隅で、歴史を揺るがす「最高の一滴」を作るための実験が始まりました。


 まずクロエは、見本となる市販のデザートワインを一口だけ口に含みました。味の記憶を呼び覚ますための儀式です。そして、水の入ったデカンタを手に取りました。


「……いきますよ」


 クロエの体から魔力が発せられ、デカンタの中の水がゆっくりと回転を始めました。


 透明な渦は淡く色づき始めます。渦の回転がおさまった時には、見本と同じく琥珀色に変わっていました。


「おぉ……!」


 三人の感嘆が重なりました。カトリーヌとラピエルが実際にクロエの魔法を見るのは初めてです。二度目の目撃となるディアヌも、少し驚いています。


「楽しみね。それでは早速頂くわ」


「もちろん」


 ディアヌがそれぞれのワイングラスにワインを注いでいきます。


「……? 前の時より、香りがいいわ」


 最初に気づいたのはディアヌでした。グラスを回し、鼻先で香りを確かめた彼女は、驚いたようにクロエを見ます。


「ねえクロエ、何か変えた?」


「前回と同じように作ったつもりだけど……」


 首を傾げるクロエに対し、ディアヌは自身の分析を口にします。


「そうだとしたら多分、クロエがデザートワインの味に慣れてきたんじゃないかしら。ほら、クロエはワインが得意じゃないでしょ? それが魔法に影響を与えたのかもしれない」


「言われてみれば……口に含んだ時に、前よりは嫌な匂いじゃないなって感じた気がする」


 ふたりのやり取りを聞いているのかどうかも分からないほど真剣な表情で、グラスの中のワインを見つめていた執事のラピエルが、優雅な手つきでグラスを傾けました。


「……美味しい。素晴らしいです。やはりアルコール度数は、通常のデザートワインを遥かに凌駕する高さです。しかしながら、これこそがこの『酒』の個性。薄めて殺すべきではない、このまま突き進むべきです」


「私もそう思うわ」と、優雅な貴婦人カトリーヌが頬を上気させて同意しました。


「むしろ、こちらの方がより『物語』を感じるわ。洗練されていながら、どこか狂気的なまでの力強さがある……。ええ、最高よ。私はこれ、大好きだわ」


 大人たちが魔法の酒の魔力に当てられ、熱っぽく感想を言い合う中――


「……美味い」


 当の製作者であるクロエは、議論に加わる様子もなく、ディアヌが用意した『鴨肉のロースト』を幸せそうに頬張っていました。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ