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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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274:ラス・イコメク-3-5

「くそっ……」

 殺した者の魂を支配下に置き、自分の吐瀉物から作った人形の核にする攻撃。

 万産界・皆産みの魔鬼王ラス・イコメクと言う周囲の生命を吸い上げ、自分の意のままに動く死者として動くするようにすると言う攻撃。

 それはとても、らしくあると同時に、元の力に近しい為に習得も容易な力だったのだろう。

 そして、習得が容易である同時に、死に戻りが出来なくなると言う点は、こちらにとって極めて厄介な点だった。

 何せ、私たちが組み立てていた戦略は『エオナガルド』特有の死に戻り機能を前提としたものだったからだ。

 故に、一刻も早く対処する必要があった。


「相手の学習速度と対応するための力の取捨選択の力の高さが恨めしいわね」

 私はラス・イコメクの吐瀉物が人の形を取るのと同時に、ラス・イコメクに向かって駆け出していた。

 他の私たちも考えていることは同じなのだろう。

 既にそれぞれの持ち場を飛び出して、この状況に対応するための動きを始めてる。


「ーーーーー!」

「止めろ!俺はな……ぎゃああぁぁっ!?」

「ゲ□人形の攻撃も受けるな!そっちも即死攻撃にな……あがっ!?」

 吐瀉物人形の攻撃もラス・イコメクが吐き出した物が直撃した場合と同じで、触れた場所から瞬く間に全身が溶け腐って命を奪っていく。

 そして、命を奪われた者は新たな人形の核として魂を奪われ、次の犠牲者を求めて動き出す。

 この時点で最初のラス・イコメク自身の攻撃で30人近く、人形の攻撃で10人が死んでいる。

 プレイヤーも複製体も関係無しにだ。


「『スィルローゼ・プラト・ラウド・ソンカペト・ツェーン』!」

「『スィルローゼ・ウド・フロトエリア・ソンウェイブ・ズィーベン』!」

「『スィルローゼ・プラト・クラフト・ソンタワ・アハト』!」

「全員、高い所へ!茨の足場を組み上げるわ!!『スィルローゼ・プラト・ワン・グロウ・ツェーン』!」

「わ、分かった!!」

「ふむ、流石に対応が早いな」

 他の私たちがスィルローゼ様の魔法によって茨の足場を作り上げ、吐瀉物人形たちの直接攻撃や地面に溜まった吐瀉物に触れないようにしていく。

 また、根を張り、栄養として分解する事で、吐瀉物そのものも消し去り始める。


「だが、これならばもう一度吐けば……」

 ラス・イコメクが息を吸い込み始める。

 同時に私は手近な茨に手をかける。


「『スィルローゼ・サンダ・ソン・コントロ・フュンフ』」

 私は足場として生み出された大量の茨を自分の肉体として認識、同化。

 そして……


「吐かせないわよ!」

「オ……ボゴオッ!?」

 ラス・イコメクの口の中に向けて茨の腕を突っ込んで、そのまま地面に叩きつける。


「フィーデイ!」

「分かってる!」

 エオナ=フェイスから植物化していると共に巨大化しているニグロム・ローザが渡される。

 いや、装填される。

 先端がラス・イコメクの口の中にあり、巨大な塔のようになった私の右腕の肘部分に。

 私は茨の腕を筒のようにした上で、腕を構築する全ての茨を使ってニグロム・ローザを杭打機に装填された杭のように撃ち込む。


「ゴ……ガ……」

 ラス・イコメクの頭にある全ての穴から脳漿と体液が飛び散る。


「や……」

「やってない!全員警戒を解かないで!!」

「「「っつ!?」」」

 だが殺してない。

 殺せていない。

 アンデッドにしてレギオンボスであり、強化を重ねた万産界・皆産みの魔鬼王ラス・イコメクがこの程度で死ぬはずはなく、その証拠にラス・イコメクに奪われた魂はまだ奪われたままである。


「ありったけのバフを注ぎなさい!私はこのままラス・イコメクの拘束を……ぐっ!?」

「ほがふぁふぁふぁ……」

 ラス・イコメクの目が開かれ、体の動かしやすさと言う点から茨の巨人のようになっている私へと視線が向けられる。

 そこに諦めの意志はなく、怒りや悲しみと言う意思もない。

 あるのは喜び、こうでなくては面白くないと言わんばかりの笑み。


「こ……の……」

 私は暴れ、拘束から逃れようとするラス・イコメクの体を抑えるべく腕を増やし、人体の構造上、力を出したくても出せない状態へと持っていく。

 だがそれでも力を拮抗に持っていくのが限度であり、かくはずのない脂汗をかいているような感覚を覚える。


「もう一発!」

「ブゴオッ!?」

 それでもニグロム・ローザを腕の中で少しずつ引き上げ、再び突き刺す事には成功。

 ラス・イコメクの肉体が飛び散るのと同時に、ほんの少しだけだが抵抗の力が弱まる。


「う、うわあああぁぁ!?」

「大物が湧いてきたぞ!?」

 引き換えに、飛び散ったラス・イコメクの肉片から巨大なムカデのようなモンスターが生成されて、他のメンバーたちに襲い掛かり始める。


「ゲ□ゾンビたちも上がって来てるぞ!」

「ぶっ倒せ!俺たちが生き残るためにはそれしかない!」

 吐瀉物人形たちも茨に体を吸収されつつも、足場の上に登ってきている。


「くっ……この状況は……」

 状況はかなり拙い。

 混迷を極めつつあると言ってもいい。

 私は私以外の私も含めて、ラス・イコメクを抑え込むのと『エオナガルド』特別面会区と茨の足場の維持をするので精一杯だった。


「全員に通達!此処が踏ん張りどころよ!」

「ラス・イコメクを抑え込むのはエオナに任せろ!」

「俺たちは周囲の雑魚共とこれから沸く大物の処理だ!」

 そんな中でサロメ、ビッケン、ゴトスの三人が声を張り上げ、その三人に誘導される形で周りも動き始めた。


「有利な状況が崩されたなら、また組み上げればいい。そう言う事ね。ええ、やってやるとも!ラビトリワク様の代行者として、ここは絶対に引けないわ!」

 イナバノカグヤさんが何かを投じ、この場に居る吐瀉物人形の動きが目に見えて遅くなる。


「マクラも本気を出すよー」

 そして、マクラの言葉と共に空の色が変わり、星空が広がった。

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