268:ラス・イコメク-2-3
「数が多い!」
「「「ーーーーー!?」」」
私……エオナ=フィーデイは最前線で槍を振り回して、スパルトイたちを薙ぎ払う。
私の火力ならば強化されたスパルトイであっても数撃で倒す事が出来る。
だがそれでも、視界を埋め尽くすような数は圧巻と言う他ない。
「とは言え、想定していた中ではかなりマシな方ではあるわね」
「じrtp、じrtp……」
スパルトイたちの向こうではメンシオスの黒い霧に怒ったラス・イコメクが自分の肋骨を砕いては撒き、再生させては再び砕いている。
いや、此処まで執拗にスパルトイたちを生み出している事と、破片の数とスパルトイの数が合わない事を鑑みると、一種の解毒作業であるのかもしれない。
なんにせよ、今の状況はかなりマシな方だ。
「囲め囲め!数を使わせるな!!」
「『シビメタ・メタル・フロト・ウォル・フュンフ』!」
「うおらぁ!突け!突けええぇぇ!!」
「「「ーーーーー……」」」
既にスパルトイたちの数はこちらの数倍に達している。
だが、出現したスパルトイの大半の武装は剣や槍、斧と言った近接戦向きの武器であり、弓を使う者や射出系の魔法を扱う者は殆ど居ない。
おかげで出現地点を囲んだ上で、壁生成魔法を使って進行ルートを制限する事で数の利を生かせないようにする事で凌ぐ事が出来ている。
「んsづぺお……」
「『スィルローゼ・プラト・ワン・バイン・ツェーン』!」
当然、ラス・イコメクはこの状況を脱するために、その巨体を生かして逃げ出そうとはする。
だから、その度に私やエオナ=マネージ、それにファロファたち後衛組が妨害系の魔法を用いる事で、大きく動き回る事が出来ないようにしている。
「せいっ!」
「ひyし……!?」
加えて妨害だけではなく攻撃も仕掛けている。
エオナ=フェイスがスリサズに跨り、宙を駆ける事によってスパルトイたちの妨害を無視し、巨大化させたニグロム・ローザを叩きつける事によって、ほんの僅かずつではあるがダメージを与える事に成功している。
パーセンテージで表せば1%にも満たない様なレベルではあるが、収支は一応こちらに傾いている。
「フィーデイ!」
「ガウッ!」
と、ここで私に向かってエオナ=フェイスがやってくる。
見ればスリサズがだいぶ傷ついていて、疲労も激しいようだった。
「分かったわ」
「10分程お願い」
私は巨大化したニグロム・ローザを受け取り、エオナ=フェイスとスリサズはそのまま姿を消す。
一つ目の層か監獄区で、エオナ=ジェイルと協力して治療を行うのだろう。
ならば、スリサズが居ない間は私がラス・イコメクの削り役をしなければ。
「『スィルローゼ・ウド・ワン・ソンランス・ツェーン』」
私は自分の足元から勢いよく茨の槍を生やすと、それに乗る事でラス・イコメクに向かって自分を射出する。
「ふ……」
「msもえp……」
そして、勢いそのままにラス・イコメクの首へと剣を叩きつけるが……
「うわっ!?」
「どys?」
体重差と勢いからラス・イコメクの体を裂くのではなく、それどころかラス・イコメクの体と剣の接触点を支点として、私の体がラス・イコメクの周囲を回ると言う奇妙な現象が起きる。
その為に私は何も無い空中に放り出されることになる。
「いにtrtp」
宙に放り出された私に向けてラス・イコメクが手を振り下ろしてくる。
どうやら武器を交換した事と、別の私も私に変わりないと言う事で、ヘイト値はしっかり引き継がれているらしい。
まあ、今気にする事ではないか。
「あっぶな!」
「じちぃ……」
私は左手の手首から勢いよく茨を伸ばすと、手近な茨の塔に絡みつかせ、すぐさま縮める。
そうする事によってラス・イコメクの攻撃を回避する。
「かなり疲れそうだけど……ガンガン行きましょうか!」
回避直後に私は一度手首の茨を切る。
それから直ぐにもう一度茨を伸ばし、絡める。
今度はラス・イコメクの首の骨に向けて。
「ふんっ!せいっ!!」
私は手首の茨を巧みに操る事によって、宙を跳ね回る。
「「「ーーーーー!!」」」
「『スィルローゼ・ウド・ワン・ソンランス・ツェーン』」
高度が落ちて来れば、素早く茨の槍を地面から生やすことによって、スパルトイたちを始末しつつ再び宙に舞い上がる。
「『トウアラタナ・メタル・エクイプ=ソド・エハンス=キン・アインス』、『ブレドパワ・メタル・エクイプ=ソド・エハンス=キン・アインス』、『シビメタ・メタル・エクイプ=エジ・エハンス=キン・アインス』」
「いいわよライブラリ!」
「ちぃ!?」
エオナ=ライブラリから私が信仰していない神様の力を借りた魔法によるバフが飛んでくる。
そのおかげか剣の切れ味が大幅に増し、与えられるダメージの量が目に見えて増える。
『Full Faith ONLine』の同人物、同効果の魔法であっても、力の源となる神が違えば効果を重ねられる仕様を利用した支援だ。
「かなり無理をしてるから、急いでほしいわね……」
見ればエオナ=ライブラリは舞と交友の神ダスフレン様の魔法に見られるようなダンスに似たステップも踏んでいるようであるし、『エオナガルド魔法図書館』に収められたスキルブックによって自分だけが習得した魔法を使っているらしい。
とは言え、信仰していない、あるいは信仰したての神様の魔法は効果も燃費もあまりいい物ではない。
本人の言うとおり、無理をしているのは確かだろう。
「それこそ無理ってものよ!」
「pmptr……!」
だが、ラス・イコメクは急いだところで討伐できる相手でもない。
だから私は落ち着いて、相手の攻撃を躱す事を優先して立ち回り、安定的に攻撃をし続けた。




