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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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263/284

263:一時撤退-1

「kふぇjhxs……」

「全く以ってキツイわね……」

「同意。HPとMPもじわじわと削られているし……」

 ラス・イコメクとの戦闘が始まってから数時間。

 状況はかなり悪い。

 ラス・イコメクのHPは最大値の99%を維持している状態で、スパルトイはゴトスたちだけでは手が足らず、私とエオナ=ライブラリの二人も対処しないといけない事になっている。


「第三チーム崩壊!第四チーム準備を!!」

「負傷者多数!復帰急げ!!」

 これまでにラス・イコメクとスパルトイたちの攻撃によってチームが丸ごと壊滅したのは一度や二度ではないし、私たち……エオナ以外は全員一度は死に戻りしているだろう。

 当然それに伴って大量のアイテムや装備の損耗も発生している。


「第四チームは間に合わない!」

「急造第五チーム突入します!!」

 それどころか当初の四つのチームだけではメンバーが足りず、シュピー=ミナモツキが率いる急造第五チームによる死に戻りを前提とした特攻、本来はもっと後に投入する予定だったアイブリド・ロージスや金毛の羊の補助を始めることになっている。

 特に死に戻り前提の特攻は……それ以外に手が無いとは言え、サクルメンテ神官として、見ていてかなりキツい物がある。


「攻撃の手を緩めるな!どんなに小さな攻撃でもいいからとにかく当て続けろ!!」

「スパルトイを全て倒すことは諦めて!とにかくドレインのレベルを抑えなさい!!」

 だがそれでも私たちが攻撃の手を緩められない理由は単純。

 ラス・イコメクがこの数時間で新たに二つの能力を得てしまったからだ。

 能力の一つは私が張っている茨の絨毯による継続ダメージの無効化、こちらについては大したことは無い、精々が今この場にある戦力だけではラス・イコメクを倒すことが不可能になっただけだ。

 問題はもう一つの能力。


「khcdygj……」

「まずい!」

「誰か攻撃を……」

「『スィルローゼ・プラト・ワン・ベノム=ソンボル・フュンフ』!」

「sbj!?」

 私の剣から茨の棘が放たれ、大きく息を吸い込むような動作を見せ始めていたラス・イコメクの動きが止まる。

 どうやら間に合ったようだ。

 それを確認した私は、既に総数が30体近いスパルトイの処理を再開する。


「「『スィルローゼ・ウド・フロト・ソンウォル・アハト』」」

「「「ーーーーー!?」」」

 そう、ラス・イコメクは厄介な能力を得てしまっている。

 10秒以上攻撃を受けていないと、ドレインフィールドの効果が大幅に上昇すると言う厄介な能力を。

 その強化幅は凄まじく、通常状態ならばこちらの自然回復魔法で釣り合いが取れるのだが、能力が発動すればすぐさま回復に専念しなければ拙い程。

 能力取得直後にはその時の戦闘メンバーの半数が吸い尽くされて死に戻り、私たちも対処が遅れれば危うい所だった。

 だから私たちなどは範囲攻撃魔法によってスパルトイごとダメージを与える手も打っている。


「壁をこじ開けろ!さっきのような狙撃がそう何度も命中すると思うな!!」

「言われなくても分かってる!!」

 打っているのだが……新たな能力取得によるラス・イコメク自身の学習によってスパルトイたちの動きが変わり、敵対者を直接屠りに行くのではなく、こちら側の攻撃を防いで、とにかく近づけさせない事を優先する動きになっている。

 おかげで一瞬だけ発動される事が何度かあり、その一瞬のせいで急造第五チームは死に戻りを玉砕覚悟の動きをする羽目になっている。

 おまけにアイブリド・ロージスの空間潜航からの奇襲も既に通じなくなっているし、封印もかなり解けかかっていて、後は左足の足首から先をこちらに引き摺り出せば完全復活と言う状況である。

 はっきり言ってかなり拙い。

 三日もたせるどころか、一日耐えきれるかも怪しくなってきている。


「エオナ!何か一発逆転が狙えるような魔法の類は無いのか!?」

「無いわ!スィルローゼ様、ルナリド様、サクルメンテ様、いずれもそう言う魔法とは無縁だし!」

「だよなっ!だったらスヴェダは……」

「あっちはあっちで戦闘中!スヴェダが戦力として勘定に入っているから、今抜いたらあっちが壊滅して、最終的にはこっちも共倒れよ!」

 此処まで来ると打てる手はどんな手であろうと打つしかない状況である。

 とにかく延命を第一にして、救援が来るまで攻撃を仕掛け続けるしかない。

 しかし、スヴェダから救援がこっちに向かって来ていると言う連絡は聞いているが、それの到着はどんなに早くても後2時間か3時間はかかる。

 このままでは……確実に救援が来る前に私たちの方が倒れる。


「スパルトイの処理を任せるわ!スリサズ!」

「ガウッ」

「何を……」

 私はスリサズを呼び出すと、直ぐにその背に跨る。


「一度仕切り直すわ!」

 そしてスパルトイたちの上を飛び越える形で跳び、突き出された武器によって全身を貫かれつつもラス・イコメクに無理やり接敵する。


「『スィルローゼ・ウド・エリア・アルテ=スィル=エタナ=アブソ=バリア・ツェーン』」

「うsdvじぇ!?」

 発動したのはスィルローゼ様の究極封印魔法。

 その効果によってラス・イコメクは茨の檻に閉じ込められ、同時にドレインフィールドも停止する。

 だが、この魔法の効果対象になっている間は外部からの攻撃は不可能であり、おまけに自然回復の類を止められるわけでもない。

 つまり……


「スパルトイを殲滅!その後に作戦会議を含めた状況の立て直しをするわよ!!」

「「「うおおおおおっ!!」」」

「「「ーーーーー!!」」」

 一時しのぎでしかない。

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