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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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259/284

259:ラス・イコメク-4

「ふ……ぬ……」

「kjrhf……jssfく……」

 私はラス・イコメクを正面から抑え込み続けている。

 抑え込み続けているが……そう長くは抑えられないだろう。

 膂力に差がありすぎて、まだ数十秒しか経っていないのに、腕の茨がきしみを上げ、地面に張った根は剥がれそうになり、今にも押し負けそうになっている。


「攻撃開始っ!」

「攻めろ!攻めろっ!」

「最初が肝心だよ!!」

 だが、私に対応しているラス・イコメクの姿は隙だらけでもあった。

 だから、ゴトスたちはラス・イコメクの周囲から攻撃を行う、色とりどりに輝く武器を叩きつけ、自分たちの持つ最大火力の魔法を叩き込み、盾役は次に備えてヘイトを稼いでいく。

 勿論、そうやって隙だらけのラス・イコメクに攻撃を叩き込んでいくだけでも、時折発生させてくる影の刃による攻撃は飛んでくるし、エリア全域に展開されているドレインフィールドの影響で少しずつHPは削られていくし、与えたダメージも回復されていく。


「よしっ!この程度なら十分回復は間に合うね!!」

「流石は代行者の自然回復魔法、効果量が桁違いだ!」

「ダメージも通ってる!これなら削れるよ!!」

 しかし、エオナ=ライブラリの張った自然回復魔法のおかげでドレインフィールドの影響はゴトスたちでも対応可能な範囲に収まっている。

 相手の回復もこちらの攻撃を相殺しきれるほどでは無い。

 接近された相手に使う影の刃も想定通りだ。

 故に、このまま戦闘が続くならば、ラス・イコメクの討伐は可能となる。

 そんな事はあり得ないが。


「2%削ったぞ!!」

「くffh……zsyss……」

 ラス・イコメクのHPを見ていた誰かの声が響くと同時に、ラス・イコメクが二度、歯を打ち鳴らすように噛み合わせる。


「っつ!?」

 その動作は私は押し切られる直前だった茨の巨体から、元の体の分の茨を取り除いて意識を移すと、素早く茨の巨体から飛び退く。


「ブレス!サモン!パターンBに移行!!」

 ゴトスも大声で指示を出し、他の面々も直ぐにラス・イコメクから距離を取りつつ、陣形を整えていく。


オリクテオム(燃え尽きろ)!」

 直後。

 聞き取れる言葉の形でラス・イコメクから特殊な攻撃の名前を示すような思念波が放たれると共に、ラス・イコメクの口から蘇芳色の炎が勢いよく放たれて、先程まで私が体にしていた茨の巨体を炎で包み込んで消し炭に変えていく。

 オリクテオム……陰属性の超高火力範囲攻撃であり、備えなしに直撃すればレベル90の防御特化プレイヤーでも消し炭になる攻撃。

 使用条件は一定量のダメージを与える度に使ってくるだったが……『Full Faith ONLine』の頃は最大HPの5%は削る必要があったはず。

 対してこちらは回復された分を合わせて考えても3%削ったかどうかだったはず。

 つまり、今のラス・イコメクは『Full Faith ONLine』の時の倍近いHPを持っているとみるべきか。


オレラワラ(現れろ)

 だが、幸いと言うべきか、不幸にもと言うべきか、行動パターンそのものに変化は無いらしい。

 ラス・イコメクは自分の肋骨の一本を握り潰すと、肋骨を再生させつつ骨を周囲の地面に撒く。

 すると地面に着くと同時に骨は周囲の土を吸収して、完全武装の骸骨兵……スパルトイが生じる。

 数は6、ただし、一体一体が推奨レベル70台のPTボス並のスペックを保有している厄介な取り巻きである。


「スパルトイは任せるぞ!キャッサバ!リナマリン!!」

「「了解!!」」

 キャッサバ率いる第二チームが3体のスパルトイを、残り3体をリナマリン率いる第三チームが担当するべく攻撃を始める。

 そして、その間にゴトスたち第一チームがラス・イコメクに向かって突撃していく。


「『スィルローゼ・プラト・ワン・グロウ・ツェーン』、『スィルローゼ・プラト・クラフト・ソンタワ・アハト」

「『サクルメンテ・ウォタ・サクル・エクステ・フュンフ』、『スィルローゼ・プラト・ミ・スメル=サニティ・アハト』」

 その間に私は自分が複数人居る事を生かすように、私とエオナ=ライブラリの二人で協力して場を整えていく。

 茨の絨毯をエリア全域に広げていき、その領域に強化を重ねていくことで、戦い全体が有利になるようにしていく。

 茨の塔を何本も立てていき、戦線を崩壊させやすい精神系状態異常を即時に回復出来る態勢も整えていく。

 領域保護は当然かけるし、味方が茨のダメージを受けないようにもしておく。

 茨の領域が広がった事で相手のドレインによる回復量は増すが、増えた分は茨の効果による継続ダメージで削れるので問題ない。


「前に戻るわ!」

「分かった。後ろは任せて」

 そうして態勢が整ったところで私は前線に戻る。

 ラス・イコメク自身に攻撃できる人間が減った影響でダメージと吸収による回復が釣り合ってしまっているから、急いで手を貸さなければいけない。


「『スィルローゼ・プラト・エクイプ・ソンウェプ・ツェーン』」

「「「……!?」」」

 だから私は問題がない程度にスパルトイたちを殴りつつ前進。

 そしてラス・イコメクを攻撃の射程に収める。


「kふぇcdj!」

「ぬおっ!」

 直後、ラス・イコメクの大ぶりの攻撃を盾で防ごうとしたゴトスが私の近くにまで飛ばされてくる。

 視線を交わすのは一瞬。

 だが、やるべき事は分かっている。


「『スィルローゼ・プラト・ワン・グロウ・ツェーン』!」

「sblhfg!?」

 ニグロム・ローザを植物化した上で巨大化させ、その状態でラス・イコメクの側頭部に巨木のような鞭を叩き込んで、ヘイトを奪い取ると、そのままラス・イコメクの横を通り抜けて、誰も仲間が居ない方向を向かせる。


「『スィルローゼ・サンダ・ソン・コントロ・フュンフ』」

 そして、ラス・イコメクが振り向くと同時に私は再び茨の巨体を出現させ、今度はラス・イコメクの右肩と顔面を抑え込む。

 それに合わせてゴトスたちとスパルトイを始末したキャッサバたちが合流して、隙だらけのラス・イコメクに攻撃を仕掛けていく。


「kscghss……」

「煩わしそうで結構」

 これが今の私たちの戦術。

 私が抑え込む時に一気に削り、それ以外は相手のHP維持を目標とした、長期戦を前提とした戦術である。

 地味で結構、地道で結構、苛立ってくれて結構。

 これが私たちの目的を達する事が出来る可能性が最も高い戦術なのだから。

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