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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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224:密会-4

「と言う訳でゴトス。貴方には『フィーデイ』に行って、私に代わって調査をしてほしいの」

「よし、寝言は寝て言え」

 私は夜と言う事で寝ていたゴトスを叩き起こすと、現在のクレセート周りの情報を一通り教えた上で、イナバノカグヤさんが世話になった人々がいるらしいセキセズ枢機卿管理下の村を調査して欲しいと頼んだ。

 が、見るからに不機嫌そうな表情のゴトスから返ってきたのはつれない返事としか言いようのない言葉だった。


「あら、駄目なのかしら」

「駄目じゃなくて無理だろ。そもそも俺がどうして『エオナガルド』に居るのかを忘れたのか」

「ああ、その事」

 どうやらゴトスはミナモツキの封印によって、ミナモツキの一部と認識されている自分では外に出れないことから、私の依頼を受けるのは無理だと判断しているらしい。

 なるほど、駄目ではなく無理、か。

 それならばゴトス本人の心情としては私の依頼を受けたがっていると言う事、ならば何も問題は無い。


「だったら問題は無いと思うわよ。ゴトス……いえ、GtS。貴方はミナモツキの力によってプレイヤーのGtHをオリジナルとする複製体としてこの世に生まれ落ちた。だからミナモツキの封印に巻き込まれる形で『エオナガルド』にやってきた。それは明確な事実ではあるわ」

「ああ、だから……」

 私は手を伸ばして、ゴトスの言葉を遮る。


「でもねゴトス。貴方が『フィーデイ』に生まれ落ちてから、どれだけの時間が経ったと思う?どれだけの経験を積んだと思う?」

「それは……」

「貴方は元よりオリジナルとは違う名前を自らに与えている。レベル90のプレイヤーとして相応しい立ち振る舞いを自分に課して、『エオナガルド』の住民から多大な信頼を得ている。貴方の周囲は貴方をGtHの複製体ではなく、ゴトスと言う個人として見ている」

「……」

 私は慎重に言葉を紡いでいき、ゴトスが周囲からどう見られているかを告げていく。


「分かるかしらゴトス。時間も、経験も、名前も、交友も、信仰すらも既に貴方は貴方以外の何者でもない。ミナモツキの封印による束縛は『エオナガルド』による誰よりも薄いのよ。それこそ、必要な体さえ準備すれば、『フィーデイ』で活動しても何の問題も無いほどにね」

「そう……なのか」

 そして、ゴトスがゴトスとして積み上げたものによって、ミナモツキの封印に巻き込まれない立ち位置になりつつあることも。


「そういう訳で、茨で編んだ肉体は私が用意するから、調査に行ってくれるかしら」

「……」

 私は自分の隣に茨の人形を用意する。

 後はゴトスが頷いてくれれば、この体にゴトスの意識を入れて、活動を開始してもらうだけなのだが……。


「分かった。依頼は受ける。が、『フィーデイ』に出る前に幾つか準備をしてもらいたい物があるな」

「聞くわ」

 よし、依頼は受けてくれることになった。

 ならば後はゴトスの望むものを準備するだけである。


「第一に騎馬の類が欲しい。話を聞く限り、俺が調査をする村はクレセートから歩いていくと一週間はかかる。調査に時間をかけられない状況である以上、これは必須だ」

「分かったわ。そうね……金毛(アウルム)の羊(・オビウム)を乗騎として貸すわ。戦闘能力も低くないし、足の速さも悪くはないと思うわ」

「羊か……まあ、乗れない事はないか」

 一つ目は足。

 これはまあ、言われるまでもなく準備するつもりではあった。

 無いとゴトスの言うとおり無理がある。


「次に装備品に回復アイテムの類だな。場合によっては必要な展開も有り得るだろう」

「まあ、場合によっては単独で解放してもらう展開はあるでしょうね。出来る?」

「相手次第としか言えないな。レベル50以下のプレイヤーやモンスターなら幾らでも問題は無いが……アイブリド・ロージスクラスが一体でも居たら、引く他ないだろう」

「まあ、その時は素直に引くしかないでしょうね」

 二つ目は装備とアイテム。

 装備については『エオナガルド』ないで生産できる装備品の中でも、特に品質がいい物をゴトスに渡せばいいだろう。

 アイテムについては……必要なものをゴトスに挙げてもらうしかないか。

 何が必要なのかはゴトス自身にしか分からない。


「最後に『フィーデイ』でこの人形が破壊された場合、俺はどうなる?」

「『エオナガルド』に戻ってくるわ。と言うより、本体は『エオナガルド』にあって、意識だけ『フィーデイ』の人形に移しているような状態だから、基本的には何があっても『エオナガルド』に帰って来れるわ。私との通信も常時できると思ってくれていいわ」

「基本的には……か」

「基本的には、よ。メンシオスの黒い霧のように精神や魂を直接蝕む方法が無いわけでも無いから。油断は禁物よ」

「なら、自爆機能の類でも搭載しておいてくれ。万が一の時に欲しい」

「分かったわ」

 自爆機能は……必須だろう。

 相手がどんな能力を持っているかは誰にも分かっていないのだから。

 うん、搭載しておくべきだろう。


「必要な物はこんなところかしら?」

「一先ずはな。ただ、追加で必要になるものもあるかもしれないから、その時は頼む。後、報酬の方も何かしら考えておいてくれると嬉しくはあるな」

「分かったわ」

 そうしてゴトスは茨人形を使って『エオナガルド』から『フィーデイ』へと移動した。

 移動したが……私の部屋に唐突に私以外の人影が出ては怪しまれるので、まずは種子の状態で出現させ、窓の外にさりげなく落とす事で私から離れた場所に現れてもらった。

 そして、私以外の誰にも気づかれる事なくゴトスはクレセートの外に出て行った。

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