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信仰値カンストの神官、我が道を行く  作者: 栗木下
4章:クレセート

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216/284

216:巻物中のモンスター-4

「グロ……グオッ……」

「はぁはぁ……くそっ……」

「『ミラビリス・スチル・ワン=ネクス=スペル・バフ=リフレク=ペネトレ・ドライ』」

 マミラセンシシとゴトスたちの戦いは長引いている。

 戦いの流れがマミラセンシシの側に傾く事は無いが、ゴトス含めて肩を動かして息をしている者がだいぶ増えていて、疲労が溜まっているようだった。


「どうなってんのよコイツ!レベル70のPT向けでしょ!」

「い、幾ら何でもタフ過ぎませんか!?」

「こっちの火力が低めとは言えこれは……」

「分かってる!分かってるから手は休めるな!」

 何故倒れないのか、その理由は単純。

 私たちの前に居るマミラセンシシは見た目こそ通常のマミラセンシシと同じだが、中身は全くの別物。

 恐らくだが、マミラセンシシをスクロールに封印した者が、ヤルダバオトの力を利用して強化を施していたのだ。

 では、具体的にどんな強化が施されているかだが……


「グルオオォ!」

「ぐっ……コイツはヤルダバオトの力でHPが数倍に……と言うかボス並みに増やされてる!つまりは元の数倍から数十倍だ!」

 マミラセンシシの攻撃を防ぎつつ叫ぶゴトスの言うとおり、HPは確実に増やされている。

 ボスを名乗れる程度には。


「っつ!?ゴトスさん!微妙にですけど相手の傷が!?」

「くそっ、吸収能力だ!間違っても低レベル組は前に出るな!!」

 加えて爪と牙の攻撃に与ダメージの一部を吸い取って、自分のHPにする吸収能力も持っているようだ。

 うん、もしも混乱の最中でこの二つの能力を以って暴れられたら、被害はさらに増していただろう。


「いいか!こっちはレイドを組んでいるんだ!つまり数はこっちの方が圧倒的に上!そして『エオナガルド』なら死んでもゲーム時代と変わらない!落ち着いて対処していけ!」

「「「はいっ!」」」

「グ、グルオオォォ!」

 だが、この場にただ食われて、血肉にされるだけの雑兵、民衆は居ない。

 居るのは自らの意志で戦う事を選んだ戦士たちであり、彼らは全員自分の力や立ち位置と言うものを理解していて、ゴトスの指揮の下でそれぞれにやれる事をやっている。

 そんな相手では吸収能力を持っていても誤差の範疇と言うものだろう。


「グ……ゴ……」

 そうして戦い続けている間にマミラセンシシは傷ついていき、息も絶え絶えになっていく。

 さて、そろそろか。


「トドメだ!」

「ガ……」

 ゴトスの剣がマミラセンシシの額に突き刺さる。

 完全にトドメの一撃である。

 現実化の影響も含めて、これでマミラセンシシの命は尽きただろう。

 本来ならば。


「やっ……」

 ゴトスたちが喜びの声を上げようとする。

 だが、私はマミラセンシシに強化を施した上で封印して贈り物に仕込むという行為をした者の悪意がそんなに甘いものだとは思っていなかった。

 だから私は……事前に受けていたシュピー=ミナモツキの魔法によって反射貫通を得たワンオバトーの能力をマミラセンシシに発動する。

 そして、私の判断は正しかった。


「グルオオオオオォォォ!!」

「「「!?」」」

 マミラセンシシの全身が紫色に光輝き、全方向に向けて大量のエネルギーが放出される。

 それは見た目通りの破壊能力を有しており、面会区全体を大きく震わせていく。

 破壊力は……私ならば問題は無いが、直撃を受ければゴトスでも死にかねない威力か。


LA(ラストアタック)か!?」

「グ……グルオオオォォ!」

「復活してる!?」

「LAでの吸収だ!!クソッタレ!!」

 光が止んだ後、確かにトドメが刺されたはずのマミラセンシシは虫の息ではあったが、しっかりと立っていた。

 うん、やはり他にも強化は施されていた。

 レベル90のプレイヤー相手でも致命傷になる威力の全方位ラストアタック。

 そして、LAと吸収能力を組み合わせることで、HPも回復してきている。

 まあ、今回は私に妨害されて、大した量は吸えなかったようだが。


「一応言っておくわよ。たぶん、何度でもLAは使ってくるわ」

「「「!?」」」

「グゴ……ゲゴッ……」

 だが、恐らくは何度でもHP吸収付きLAは行える。

 つまり、このマミラセンシシはマトモに戦っていたら絶対に倒せないモンスターと化しているわけだ。

 本当に恐ろしい話だ。

 『フィーデイ』で出現していたら、どれほどの被害を出していた事か……そして、ゲーム時代には絶対にあり得ないと言うか、あってはいけない組み合わせである。

 このバランスを一切無視した自分の都合を第一優先にしたような強化は……きっとそう言う事なのだろう。

 流石に確証を持つほどではないが。


「心配しなくても何とかはなるわよ。LAを使わせない方法は幾らでもあるし、吸収を防ぐ方法だってあるわ」

「お、おう、そうだな……」

 まあ、その辺りは後回しでいい。

 今はマミラセンシシだ。

 そして吸収付き無限LAだが……対処法なんて幾らでもある。

 だから、種が割れてしまえばどうと言うことは無い。


「じゃ、頑張りなさい。失敗してもLA自体は私が受けるから安心して戦うといいわ」

「や、やるぞお前ら!!」

「お、おおぉぉぉ!!」

「グ……グルオ……」

 それからまもなく、病気と言うHP回復の阻害と最大HP低下の効果がある状態異常を利用することによって、何者かによって改造されたマミラセンシシは討伐された。

 ただ、LAは私が受けると発言した時のゴトスたちの微妙に怯えた表情。

 あれはいったいどう言う事だったのだろうか……まあ別にいいか。

 まずはマミラセンシシの改造を解除する事と、反省会である。

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